% 午強欲なゼロサム

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\section*{▼強欲なゼロサム▼}

ゼロサムは収支トントンになることは確かなことだが、`強欲な人間'が絡(から)むと必ずしもそうならないように見えることがある。強欲な人間というのは`強欲な(ある一部の)人間'ではなく、`強欲な(性(さが)を持っている)人間'を指す。要するにすべての人は強欲であると言っている。

ゼロサムに見えないものを$2$例挙げておこう。ひとつは`株'の話だ。株は売りたい人と買いたい人が売買をする。その際、売りたい値段と買いたい値段が一致すれば売買成立だ。たとえばAさんがある株を$100$万円で売りたくなり、Bさんが$100$万円で買うことになれば売買が成立する。この時点では互いに等価のものを交換したわけなので損得はない。つまりゼロサム状態である。

ところがBさんが買った株が値上がりして$120$万円になったのでCさんに売れば、Bさんは$20$万円のプラスとなる。その後、Cさんも株が$150$万円に値上がったときにDさんに売れば、Cさんは$30$万円のプラスとなる。Dさんは等価交換だから現状プラスもマイナスもない。

さて、このような状態を見れば全体でプラス$50$万円が生じているので、ゼロサムになっていないように見える。そしてこのようなことが広く行われれば、ほとんどの人が利益を得て大変嬉しいことに違いない。

でも、そうじゃない。ある閉じた世界では必ずゼロサムになるのだから。この場合は一見、Aさん、Bさん、Cさん、\dots、Zさんを閉じた世界と見ていて、それらのほとんどの人が利益を得たように見えるだけである。実際は閉じていない。`半閉じ'なのだ。

もしZさんが株を$300$万円で買ったあと株が値下がりして$100$万円になったとしたら、Dさんは$200$万の損失を被(かぶ)りAさんからYさんまでの利益と相殺される。かりに値下がりして$200$万円となったとき、Zさんが$\alpha$さんに売ったら、AさんからYさんまでの利益とは相殺されないが、それは$\alpha$さんが引き継ぐのである。だから半閉じと言ったのだ。

つまり株は、皆が強欲であるために値上がりを信じて買うから値上がりするのである。そして、それが続くほど将来の$\omega$さんが被る額は大きい。要するにゼロサムになるための損失を先送りしているに過ぎない。ゼロサムに見えないが実際はゼロサムなのである。

もうひとつは至極真っ当に思えることだ。世の中のほとんどの人は働いて収入を得ている。人によっては貯蓄もそれなりにあるだろう。一方で借金をしている人もいる。するとそれらの総計はゼロサムになっているような気がするが、実際は収益の方が多い。それどころか物価は上昇するものだから、現在の資産は何百年前より格段に多くなっている。

たとえば商売をしている場合、商品を仕入れて商品を売るのは当たり前だ。このとき、仕入れ値と売り値を同じにすればゼロサムになるのだろうが、利益を得るために売り値は少し高くして、その差を収益にするものだ。そして、どこでも似たようなことが行われているので、結果としてゼロサムにはならずプラス部分が大きくなるだけである。

それは人間がゼロサムでない方法を発明したからではない。単に人間が強欲なのだ。つまりマイナスの部分を押し付けているのである。どこにかって? 地球に、である。だからゼロサムでないように見えているだけなのだ。

たとえば漁師は漁船や網などを買うだろう。このとき漁師は漁船や網を製造する者に支払いをして装備を買うのだから、互いに等価の交換をしている。で、漁師は海から魚を取って客に売るのだから、客は支払いと魚を等価交換し漁師は支払いを受ける。このとき、一般に`$(客からの支払い)>(製造者への支払い)$'であるから、漁師は利益を得るのである。

`$(客からの支払い)-(製造者への支払い)$'の分だけゼロサムになってないよね。本来ならこの利益が海に支払われればゼロサムである。しかし人間はそうしない。海から魚だけを強奪しているのだ。おっと、漁師さんたちを批判しているわけじゃないよ。だいいち、海にお金を払っても意味ないから払う必要はない。でも、製造者や客の分を含めて海がマイナス分を被っているのだよ。

このことは魚に限らず、鉄鉱石やら食物やら地球から産するものすべてに言えることだ。地球全体を含めてゼロサムであるものを、人間が利益分を掠(かす)めているのである。自分は人を相手のサービス業だから地球から掠めてないとは言えないはずだ。誰もが鉄鉱石やら食物やらにたどり着くのだから。人はいずれ土に還(かえ)ると言うけれど、それで掠めたものがチャラになるわけではないだろう。おそらくそれ以上に掠め取っているのだから。

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