% どうすれば数学が好きになる?
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\markright{tmt's Math Page}
\renewcommand\baselinestretch{1.33}
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\begin{document}
\section*{▼どうすれば数学が好きになる?▼}
『どうすれば数学が好きになりますか?』という質問をする人がいる。その気持ちはよくわかる。本当は『どうすれば数学ができるようになりますか?』と聞きたいのだが、『好きこそ物の上手なれ』のことわざよろしく、好きになればすすんで勉強してできるようになるはずだ、との思いがあるのかもしれない。それとも、以前『どうすれば数学ができるようになりますか?』と聞いて、『我慢して勉強するのみ!』などと言われたために、それなら好きになるのが先決と思ったのかもしれない。いずれにせよ、質問者の頭の中には
\def\dislikecycle{%
\draw (0, 3) circle(0.5) node {\footnotesize 嫌い};
\draw[thick, ->] (0+1/2/2, {3-sqrt(3)/2/2}) -- ({sqrt(3)/2*3-1/2/2}, {-1/2*3+sqrt(3)/2/2});
\draw ({sqrt(3)/2*3}, -1/2*3) circle(0.5) node {\footnotesize 勉強しない};
\draw[thick, ->] ({sqrt(3)/2*3-1/2}, -1/2*3) -- ({-sqrt(3)/2*3+1/2}, -1/2*3);
\draw ({-sqrt(3)/2*3}, -1/2*3) circle(0.5) node {\footnotesize できない};
\draw[thick, ->] ({-sqrt(3)/2*3+1/2/2}, {-1/2*3+sqrt(3)/2/2}) -- (0-1/2/2, {3-sqrt(3)/2/2});
}
%
\begin{center}
\begin{tikzpicture}[scale=0.75]
\dislikecycle;
%
\draw (0, 1) circle(0.5) node {\footnotesize 好き};
\draw[thick, ->] (0+1/2/2, {1-sqrt(3)/2/2}) -- ({sqrt(3)/2-1/2/2}, {-1/2+sqrt(3)/2/2});
\draw ({sqrt(3)/2}, -1/2) circle(0.5) node {\footnotesize 勉強する};
\draw[thick, ->] ({sqrt(3)/2-1/2}, -1/2) -- ({-sqrt(3)/2+1/2}, -1/2);
\draw ({-sqrt(3)/2}, -1/2) circle(0.5) node {\footnotesize できる};
\draw[thick, ->] ({-sqrt(3)/2+1/2/2}, {-1/2+sqrt(3)/2/2}) -- (0-1/2/2, {1-sqrt(3)/2/2});
%
\draw[dashed] (0, 2.5) -- (0, 1.5);
\end{tikzpicture}
\end{center}
のようなイメージがあるのだろう。数学ができないのは
\begin{center}
\textbf{数学ができない $\to$ 数学は嫌い $\to$ 勉強をしない $\to$ ますます数学ができない $\to\dots$}
\end{center}
のサイクルにどっぷり浸かっているせいだ。だから、そこから``好きサイクル''へ移動したい。それなら``嫌い---好きの橋''を渡ればいいんじゃないか、と思うのだ。
たしかにこのイメージ図なら、うまくすれば嫌い$\to$好きへ移動できるかもしれないと思える。でも、残念ながらそうではない。そもそも、いままで嫌いだったものは、そう簡単に好きに転じることはない。昨日まで大嫌いだったゴキ○リが、朝起きたら突然好きになっていた、なんてことはあり得ないだろう。つまり、このイメージ図は間違っている。本当はこんな感じだ。
\begin{center}
\begin{tikzpicture}[scale=0.75]
\dislikecycle;
%
\draw (0, -3) circle(0.5) node {\footnotesize 好き};
\draw[thick, ->] (0+1/2/2, {-3+sqrt(3)/2/2}) -- ({sqrt(3)/2*3-1/2/2}, {1/2*3-sqrt(3)/2/2});
\draw ({-sqrt(3)/2*3}, 1/2*3) circle(0.5) node {\footnotesize 勉強する};
\draw[thick, ->] ({sqrt(3)/2*3-1/2}, 1/2*3) -- ({-sqrt(3)/2*3+1/2}, 1/2*3);
\draw ({sqrt(3)/2*3}, 1/2*3) circle(0.5) node {\footnotesize できる};
\draw[thick, ->] ({-sqrt(3)/2*3+1/2/2}, {1/2*3-sqrt(3)/2/2}) -- (0-1/2/2, {-3+sqrt(3)/2/2});
%
\foreach \r in {0.15, 0.3, ..., 1.35} { \draw[thick, dashed] circle(\r); }
\end{tikzpicture}
\end{center}
好き$\leftrightarrow$嫌い、できる$\leftrightarrow$できない、する$\leftrightarrow$しない、はそれぞれ対極の位置にある。ヒョイと飛び移れるものではない。ちなみに、嫌いサイクルと好きサイクルでは、回る方向が時計回りと反時計回りになっていることに注意してもらいたい。数学ができる人は、反時計回りが自然な回り方である、と身をもって知っているのである。
じゃあ、数学を好きになる、またはできるようになるにはどうすればよいのだろう? それは、嫌いサイクルから好きサイクルに乗り移ればよいだけだ。図では、乗り移ることができる``交差点''が$6$か所あることがわかるだろう。そのどこかで乗り移ればよいのだ。でも、一回乗り換えただけで好きサイクルにとどまることは難しい。何度か嫌いサイクルに引き戻されるかもしれない。それでも繰り返し乗り換えるのだ。気づいたときには、好きサイクルにどっぷり浸かっているはずだ。
え? 乗り換える方法? それは無理やりに、である。嫌いなまま勉強するのだ。できなくても勉強を続けるのだ。それじゃあ、いつ好きになるのかって? それはわからない。数学ができるようになってから数学が好きになるかもしれないし、もしかしたら、嫌いなままできるようになっているかもしれないのだ。
本当は、数学が嫌いならやらなければよいのだが、そうできないから冒頭の質問をしたのだろう。だったら選択肢は二つしかない。数学をスッパリやめるか、嫌いなままやるか、である。だいたい好き嫌いに理屈なんてないのである。数学が好きな人は、気づいたら好きになっていただけである。数学好きは『考えることが楽しい』とか『答えがはっきりしている』とか、いろいろな理由を言うかもしれないが、それらはみ〜んな``理由の後付け''なのだ。単に好きなのである。
だから、あなたが数学嫌いだとしたら、それは単に嫌いなのである。それでもやる必要があるなら、やるしかない。好きになれればよいけれど、嫌いなままやるかどうかは、あなたの``価値観''がすべてだと思うのである。身もふたもない結論でごめん。
\end{document}