% どうしたら自分一人で解けるようになる?
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\markright{tmt's Math Page}
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\begin{document}
\section*{▼どうしたら自分一人で解けるようになる?▼}
『数学の問題が自分一人で解けるようになったらいいなあ』とは、多くの人が思うことかも知れない。自分一人の力で解けるようになるには、どうすればよいのだろうか? 実はこの話は、『あと一歩あればできたのに\ldots』と思っている人には厳しい話になるだろう。あと一歩って、たぶん勘違いだから。足りないのはあと一歩ではなく、\textgt{はじめの一歩}なのである。
ありがちな状況はこうだ。まず、問題を解こうとする。しかし、なんとなく解けそうなのだけど、なにから取りかかればよいか悩んでしまう。そこへ誰かが助け舟を出してくれたり、または自分で解答・解説の最初をチラ見したりして、『あ、そうか』と言って解答を書き始める。すると、計算やら何やらせっせと進めて正解に辿り着く。そしてこう思うのだ。『$9$割方分かってるのに、最初の$1$割が分からなかった』みたいな。こんな感じだろうか。
\begin{center}
\begin{tikzpicture}
\draw (0, 0) -- (10, 0) -- (10, 1) node[above]{\scriptsize $100$\%} -- (0, 1) node[above]{\scriptsize $0$\%} -- cycle;
\draw[dashed] (1, 0) -- (1, 1) node[above]{\scriptsize $10$\%};
\draw (0.5, 0.5) node{\scriptsize 助け舟}; \draw (5.5, 0.5) node{\scriptsize 自力で解いた};
\end{tikzpicture}
\end{center}
そして、どうすればこの$1$割を自分で見つけられるんだろう、と考える。それは、勘違いも甚(はなは)だしい。現実はこうだからだ。
\begin{center}
\begin{tikzpicture}
\draw (0, 0) -- (10, 0) -- (10, 1) node[above]{\scriptsize $100$\%} -- (0, 1) node[above]{\scriptsize $0$\%} -- cycle;
\draw[dashed] (9, 0) -- (9, 1) node[above]{\scriptsize $90$\%};
\draw (4.5, 0.5) node{\scriptsize 助け舟}; \draw (9.5, 0.5) node{\scriptsize 書いた};
\end{tikzpicture}
\end{center}
勘違いの原因は数学の『解答を書くこと』と数学の『問題を解くこと』が同じ行為であると考えているからだ。が、この二つはまったく異なる。解答を書いたり読んだりする行為は、当たり前だが\textgt{先頭から順に}処理されていく。
でも、問題を解く行為は、必ずしも先頭から順に処理しない。正統な手順とは、正解に辿り着くために逆から考えることであったり、また、とりあえず分かることだけ抜き出して、あとでそれらの関連を考えることである。つまり、思考が\textbf{あちこち巡っている}ものなのだ。
もし、最初の部分の助け舟のおかげで一気に解答が書けたとしたら、書いた部分は本当に考えた末のことか疑わしい。ただ、機械的に暗記していたと思われるのである。そして実際、単に暗記していたのだろう。暗記に頼っている限り自分一人で解けるようにはならない。
なぜなら、暗記とは海に点在する島々を覚える行為だからだ。暗記は島一つの様子を``丸ごと''知識として持つことである。したがって何かを解決するためには、どの島を選ぶかを決め、その島のすべてを利用することになる。あなたが自身で解決したように見えるが、実は島に依存しているに過ぎない。
\begin{center}
\begin{tikzpicture}
\draw[thick] (0, 0) circle (0.5) -- (4, 1) circle (0.4) -- (6, 2) circle (0.5);
\draw[dashed] (-2, 0) -- (0, 0) -- (-1, 3);
\draw[dashed] (4, 0) -- (4, 1) -- (3, 2);
\draw[dashed] (7, 0) -- (6, 2) -- (8, 3);
\end{tikzpicture}
\end{center}
一方、自力で問題を解くときは思考があちこち巡るものである。これは、海に点在する島々に架かる橋を渡って島を巡る行為に相当する。その場合は何かを解決するために、それぞれの島々から必要なものを集めて利用することになる。自身で移動する、これが自分一人で問題を解くことができるということなのである。
じゃあ、どうやって橋を架ければよいのだろう。それは『自分で橋を架ける』ことである。なに言ってんだと思うだろうが、冗談で言っているのではない。数学には公式やその使い方、または簡単な例題などが教科書や参考書に散在しているはずだ。これらが島々にあたり、それですべてである。あとは問題を解く際、公式や例題を参考にしながら、似たような使い方ができないか試行錯誤するのだ。そうすることで橋が架かるのである。他に楽して橋を架ける方法はない。
人に聞いたり、すぐに解答を見たり、動画などを視聴したりすれば、短時間で効率よく学習できる気がするものだ。しかし、それは島々を船で移動(まさに助け舟!)しているだけである。それでは自分の脚力が上がらないばかりか、一向に島々は橋で結ばれない。自ら自分の移動手段を無くしているだけなのである。
\end{document}