% ,と.の正しい使い方

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\begin{document}

\section*{▼,と.の正しい使い方▼}

車を運転中、自動車販売のショールームに目がいった。ショールームのガラス面には大きな目立つ文字で、いくつかの車種名とその価格が張り付けてあった。その価格表示の例をここにあげよう。
\begin{center}
$194{,}3$万円より
\end{center}

なにか変だ。そう、これは
\begin{center}
$194.3$万円より
\end{center}
と書かなくてはならない。少なくともこの国においては。

「.」がどういうときに使われる記号か知っているだろうか。これは数値を表わすとき、$1$単位に満たない「端数」がでたときに使う。その端数は「.」の後ろに書かれるのである。

よく$278000$円とか$164000$人とかいう数を表わすのに、多くの$0$を書くことがわずらわしいと感じることがある。このようなときは紙面の節約もかねて、$278$(千円)や$164$(千人)と書いている。この書き方は「千」をひとまとめの単位と考えているからできることである。ところが$164700$人を、千人をひとまとめにして考えると$700$人が端数になってしまう。そこでこの場合は$164.7$(千人)と書く。

一方「,」はどういうときに使われるのか。これは数値を「区切る」ために使う。本来数値は区切る必要はないのだが、$331895$円や$11552380$人のように大きな数になってくるとどの単位の桁から読み始めていいか迷うものだ。でも$331{,}895$円や$11{,}552{,}380$人のように書けば読みやすい。これらは「$331$千$895$円」と「$11$百万$552$千$380$人」と読める。この国ではこれらの数値は「$33$万$1895$円」と「$1155$万$2380$人」と読むが、こう読む以上は$33{,}1895$円と$1155{,}2380$人と書く方が合理的というものだ。

さて、はじめの車の表示価格に戻ろう。この車の価格は$1943000$円である。日頃の慣習に従えばこれは$1{,}943{,}000$円である。最後の$3$桁分の$0$がわずらわしいので「万」をひとまとめの単位と考えると$3000$円が端数となる。だから
\begin{center}
$194.3$万円
\end{center}
が正しい。しかし$194{,}3$万円と書いたことには少々だが同情してもよいかもしれない。なぜって、$1943000$円をこの国の合理性に従って区切れば、$194{,}3000$円となって「$194$万$3$千円」と読めるからだ。

だけど、もしこの販売店が「冬用タイヤ$1$万$9430$円より」というのを、調子に乗って「冬用タイヤ$1{,}943$万円より」などと書こうものなら$\dots$。やっぱり , と . の使い分けは重要だ。

\end{document}