% 塵も積も「れば」山となる
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\section*{▼塵も積も「れば」山となる▼}
塵(ちり)も積もれば山となる、という諺(ことわざ)がある。どんなに小さなものでも、集まれば大きなものになることをいう。希望に満ちた言葉であるが、現実には塵はどれだけ集めても塵でしかない。そのことを示してみたい。
そもそも塵とは何だろう。埃(ほこり)には違いないが、埃では計算できないので、$1$円君には大変失礼だが、計算の都合上、$1$円玉を塵扱いさせてもらいたい。すると、ここで示したいのは、$1$円玉はどれだけ集めても塵の範疇(はんちゅう)から出ない、ということである。
早速、反論がきそうだ。$100$万枚集めたら$100$万円だよね。これのどこが塵なんだい? あなたは$100$万円を屁とも思わない金持ちなのか、と。
それなら、聞いてみたい。あなたなら、$100$万枚の$1$円玉を手に入れるために、どんな手を使うだろうか?
こんな作戦はどうだろう。買い物をしてお釣りに$1$円玉を受け取るというものだ。そのためには買い物をしなくてはならない。一日に何回買い物をするだろうか。そこで、朝はコンビニエンスストアで朝食を買ってお釣りを受け取る。昼は店屋物を注文してお釣りを受け取る。夜は食材を近くのスーパーマーケットで買ってお釣りを受け取る。買い物の合計は、常に$△△1$円か$○○6$円としよう。そうすれば、$1$円玉を一度に$4$枚も受け取れるから。
さて、このような買い物を毎日続けるとしよう。すると、一日で$12$枚の$1$円玉が手に入る。当然これは貯めることにする。さあ、塵集めの始まりだ。一年間続けると$12\times365 = 4380$枚の$1$円玉が集まる。$4{,}380$円になるが、決して大きな額ではない。さらに、勤続期間が$40$年として、毎日$1$円玉を集め続けると$4380\times40 = 175200$枚の一円玉が集まる。要するに$17$万$5200$円のまとまったお金になる。しかし、これは「山」か?
ちょっと大袈裟な言い方をすると、一生かけて塵を集めて$17$万円だ。とても山になったとは言えないのではないだろうか?
もし、勤続期間が$1{,}000$年なら$438$万円だから「小山」程度にはなる。しかし、勤続$1{,}000$年はあり得ないのだ。仙人でもなければ千年生きられないでしょ。つまり「塵も積もれば山となる」とは、あくまでも「積もれば」という仮定の話に過ぎない。その点で、諺は正しい。塵は積もることがあれば山になる。しかし、現実には積もることはない。積もる前に風で飛ばされるのがオチだ。
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