% ビンゴゲームの超幸運

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\section*{▼ビンゴゲームの超幸運▼}

パーティに欠かせないビンゴゲーム。お目当ての商品を手に入れたいのはやまやまだが、思いどおりにいかないのが世の常である。ビンゴゲームのカードは、$5\times5$のマスに重複しない数字が書いてあり、縦・横・対角線のいずれか一列がすべて開けば``Bingo!''となるゲームだ。数字は$1$から$75$までで、中央のマスは最初から開いている。数字はランンダムに選ばれるので、どのカードを手にしても当たる確率は同じだ。

最も幸運な場合は、ゲームを始めて$4$個の数字が読み上げられたときBingo!となることで、これ以上の幸運はあり得ないだろう。実際にやれば分かるが、マスが開くのは本当にランダムだし、あと一つ開けばBingo!という時点からが長い。たぶん、気持ちの問題だと思うが。

では、ゲーム開始直後に$4$個の数字が一列に開く確率はどれぐらいだろう。それは、特定の$4$個の数字が次々読み上げられればよいので
\[
\frac{4}{75}\cdot\frac{3}{74}\cdot\frac{2}{73}\cdot\frac{1}{72}\times4 = 0.00000329\dots
\]
である。$4$倍しているのは、縦・横・対角線の$4$通りの揃い方があるからだ。これは、$100$万回に$3$回強の割合である。

最終的に全部の数字が読み上げられれば、間違いなく全員がBingo!まで到達できる。でも、実は全部の数字を読み上げる必要はない。$4$個の数字を残す、つまり$71$個まで読み上げれば全員Bingo!である。残った数字が$4$個しかなければ、少なくとも一つの列(または行)でBingo!になっているからだ(\textbf{鳩の巣原理}っていう理屈から分かることだよ!)。もし、そのとき「まだリーチ(Bingo!一歩手前)もかからないよ〜」なんて叫んでいる``まぬけ''がいたら、会場から叩き出してしまおう。

では、まぬけじゃないのに運悪く$5$個の数字が残る、つまり$70$個の数字が読み上げられたにもかかわらず、Bigo!にならないのはどんなときだろう。一つの例として、左図のような場合がある(×印が開いてないマスを、○は最初から開いているマスを表す)。
\newcommand\OP{\makebox(5, 5){○}}
\newcommand\X{\makebox(5, 5){×}}
\newcommand\A{\makebox(5, 5){A}}
\newcommand\B{\makebox(5, 5){B}}
\begin{center}
\renewcommand\arraystretch{.75}
\begin{tabular}{|c|c|c|c|c|}\hline
\X & & & & \\ \hline
& & & \X & \\ \hline
& & \OP & & \X \\ \hline
& \X & & & \\ \hline
& & \X & & \\ \hline
\end{tabular}
\hspace{5em}
\begin{tabular}{|c|c|c|c|c|}\hline
\textbf\A & & & & \B \\ \hline
& \A & & \textbf\B & \\ \hline
& & \OP & & \\ \hline
& \B & & \A & \\ \hline
\B & & & & \A \\ \hline
\end{tabular}
\end{center}
こんな大不運に見舞われることはそうそうないだろうが、どの程度の確率か調べよう。

この不運に見舞われた場合、すべての縦や横だけでなく二つある対角線上にも、$1$個の数字が残っているはずである。ということは、右図のAかBのマスのどこかに数字が残ってないといけない。しかも、AとBが同じ行・列にならないようにだ。回転と鏡像を除けば、それは太字\textbf{A}、\textbf{B}のマスの位置関係に限られる。このとき、残る$3$個の数字があるパターンは、回転と鏡像を除いて以下の$4$通りですべてである。
\begin{center}
\renewcommand\arraystretch{.75}
\begin{tabular}{|c|c|c|c|c|}\hline
\textbf\X & & & & \\ \hline
& & & \textbf\X & \\ \hline
& & \OP & & \X \\ \hline
& \X & & & \\ \hline
& & \X & & \\ \hline
\end{tabular}
\hfill
\begin{tabular}{|c|c|c|c|c|}\hline
\textbf\X & & & & \\ \hline
& & & \textbf\X & \\ \hline
& \X & \OP & & \\ \hline
& & \X & & \\ \hline
& & & & \X \\ \hline
\end{tabular}
\hfill
\begin{tabular}{|c|c|c|c|c|}\hline
\textbf\X & & & & \\ \hline
& & & \textbf\X & \\ \hline
& & \OP & & \X \\ \hline
& & \X & & \\ \hline
& \X & & & \\ \hline
\end{tabular}
\hfill
\begin{tabular}{|c|c|c|c|c|}\hline
\textbf\X & & & & \\ \hline
& & & \textbf\X & \\ \hline
& \X & \OP & & \\ \hline
& & & & \X \\ \hline
& & \X & & \\ \hline
\end{tabular}
\end{center}

ビンゴゲームのカードは回転・鏡像は別物なので、いちばん左のパターンは回転を含め4通り、$2$番めのパターンは回転・鏡像を含め$4$通り、$3$番めと$4$番めは回転・鏡像を含めそれぞれ$8$通りある。実際に確かめてもらいたい。すると、数字が$5$個残ってBingo!にならないパターンは全部で$24$通りということが分かった。

さて、$70$個の数字が読み上げられたとき、特定の$5$個の数字が残るためには、$75$個ある数字から特定の$5$個を除く数字が次々読み上げられる必要がある。その確率は
\[
\frac{70}{75}\cdot\frac{69}{74}\cdot\frac{68}{73}\cdot\frac{67}{72} \dots\ \cdot\frac{2}{7}\cdot\frac{1}{6} = \frac{5}{75}\cdot\frac{4}{74}\cdot\frac{3}{73}\cdot\frac{2}{72}\cdot\frac{1}{71}
\]
である。これは、ある一つのパターンの計算だから、実際はこれを$24$倍して$0.00000139\dots$を得る。$100$万回に$1$回強の割合だ。これは、ゲーム開始直後にいきなりBingo!になる確率より断然低い。$70$個も数字が読み上げられながらBingo!にならないことは、いきなりBingo!になることよりあり得ないことなんだ。こんな遭遇こそ、むしろ超幸運じゃないだろうか。

\end{document}