% 倍半ルール

\documentclass{jsarticle}
\pagestyle{myheadings}
\markright{tmt's Math Page}
\renewcommand\baselinestretch{1.33}

\begin{document}

\section*{▼倍半ルール▼}

カップラーメンの一人当たり年間消費量が$9$個ぐらいっていう話を聞いたとしよう(架空の話だよ!)。当然、人によっては「案外少ないんじゃない?」とか「そんなに食べてるの?」とかの反応があるだろう。自分がたくさん食べてれば前者のように反応するだろうし、めったに食べない人は後者の反応になるはずだ。

ここで言う$9$個という数は単に平均値であるから、実際には年$90$個以上食べている人だっているはずだ。$実際$、$10$\%の人たちが年$90$個食べ、$90$\%の人たちはまったく食べないのであれば
\[
90\times\frac{10}{100} + 0\times\frac{90}{100} = 9
\]
だから、平均$9$個の場合、こういうこともあり得る。

でも、カップラーメンなら年$90$個食べる強者(つわもの)からまったく食べないチキンな人(←どんな人?)まで、山なりに分布しているはずである。じゃあ、月に$2$個程度食べてる自分(←私ではない架空の人だよ)って山なりの分布のどの位置にいるのだろうか?

こんなとき私は「倍半ルール」を適用する。カップラーメンの例では平均$9$個という情報しかないが、$2$倍は$18$個、半分は$4.5$個だから、まあ、一般の人は年に$4.5$個から$18$個ぐらいのカップラーメンを食べてるんだろうと想像する。すると、月に$2$個程度食べてる自分は、年に$24$個程度食べることになるので一般の人とは違うってことになる。山なりの分布に照らすと、$9$個付近の盛り上がりからだいぶ上位に離れた裾に位置している。おお、勇者だ(←繰り返すが私のことではない)。

カップラーメンは年何個食べられるか分からないが、大抵数百個で頭打ちだ。つまり上限があるだろう。それに対して、たとえばフリーマーケットで何らかの物を売って利益を得るような場合は、うまくやると結構高額な利益になり得る。天井知らずの儲けとまで言わないが、上限と呼べるものはないかもしれない。こんなとき私は「倍半ルール」を拡張して「$3$倍、$1/3$ルール」にしてみる。

たとえば、このフリマでは出品者の平均売り上げは$1$万円です、みたいなときに「$3$倍、$1/3$ルール」を適用すると、多くの人は$3$千円強から$3$万円程度の売り上げを得るだろうと想像できる。もちろん$10$万円売る人もいるだろうし、まったく売り上げにならない人もいるだろう。でも、平均値しか情報がないとき、平均という理由から、平均より高い方にも低い方にも同じ範囲の分布があると思うのは、あまりにステレオタイプだ。

平均の上下に同じ範囲で分布すると考えたら、平均$1$万円の上下を$1$万$5$千円と$5$千円と考えるのが妥当か、$1$万$8$千円と$2$千円と考えるのが妥当か迷ってしまう。というより、平均の上下に同じ範囲で分布する見方は「正規分布」の見方である。テストの点数や身長の分布ならそうかもしれないが、物の売れ行きとか年収みたいなものは正規分布を平均より下方向にゆがめた分布、たとえば「$\chi^2$(カイ$2$乗)分布」のようになるものである。「倍半ルール」は万能ではないけれど、ちょっとした推測にはよい目安だと(私は)思っている。

\end{document}