% 1 と一

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\begin{document}

\section*{▼$1$と一▼}

$y$が$x$の自乗---自分を乗ずる、すなわち$x^2$だ---に比例するとき「$y$は$x$の$2$次関数である」という。いや、ちょっと待って。これは「$y$は$x$の二次関数である」と書くほうがいいのかな? むむ、これは重大な問題だ。

数学の話題を文章にしていながら何だが、こういうときに算用数字を使うか漢数字を使うかで常に迷うものだ。「$x^2$」なら「$x$の$2$乗」である。決して「$x$の二乗」とは(私は)書かない。なぜなら$x^n$の場合、$n$には無制限に数をあてがうことができる。$n$が小さいときは算用数字でも漢数字でも気にならないけれど、$n$が大きいときに漢数字を使いたくない。一貫性を持たせる意味で算用数字に統一したい。

それに対して「一対一対応」はこのように漢数字を使いたい。$m$,~$n$に無制限に数をあてがう「$m:n$対応」という言い方は一般的ではない。加えて「一対一」はことばであると考えたいからだ(ここまでにも「一貫性」「統一」などのことばが出てきたね)。それは「三寒四温」や「七転八倒」が決して「$3$寒$4$温」や「$7$転$8$倒」と書かれることがないのと同じだ。このことから、数字を一般の自然数$n$に置き換えることができるなら算用数字を、数字がことばとして使われているなら漢数字を使えば良さそうだ。

するとものを数えるときは「$1$つ,~$2$つ, $3$つ,~$\dots$」ではなく「一つ,~二つ, 三つ,~$\dots$」と書くのが自然なのだろう。「ひとつ,~ふたつ, みっつ,~$\dots$」はことばの範疇だろうから。でも、ものを数えるときには「○○個」とも言う。ここの○○は一般に$n$を使える場所だ。この場合なら「$1$個,~$2$個, $3$個,~$\dots$」と書くのが自然かもしれない。なんてことだ。自分でちょっとした規則を作ってみたものの、何となく不統一な感じは否めない。不統一はそれに止まらない。私の規則では「ひとり,~ふたり, さんにん,~$\dots$」は「一人,~二人, $3$人,~$\dots$」だ。何と途中から算用数字を使うはめになってしまうじゃないか。

他にもある。$1$次元と一次元、$1$次変換と一次変換、$1$次方程式と一次方程式、などなど。どっちが適切なんだろう? 理論的に$n$次元を考えることができるから$1$次元? いわゆる線形と呼ばれるものが一次変換だから漢数字でよい? 方程式は$n$次方程式をを考えることができるけど、代数的に解けるのは四次までだから、$5$次以降とは区別しようか? う〜む。困ったことだ。正解はあるのだろうか。

そこで結論だ。ま、分かればどうでもよい。

\end{document}