各日本語入力プログラムの特徴(現行)(制作中。暫定版)

このページは、現在使われている日本語入力プログラムを紹介しています。それぞれにリコーの太田純さんのコメントを付けました。いろいろな種類があることに、よりよい日本語入力を求めた先人たちの情熱が垣間見えるのではないでしょうか。

現行/過去の区分は、現在でも開発またはサポートが続いているということを目安に分けました。

2004年 5月 9日追記:今後、各プログラムの解説は順次日本語入力Wikiに移行します。移行済みの項目には、Wikiの当該ページへのリンクを付けています。

目次

ATOK

「エイトック」。開発元=ジャストシステム(http://www.justsystem.co.jp/)。製品サイト=(http://www.justsystem.co.jp/atok/)

最新の解説は、日本語入力Wiki::ATOKへ。

1983年に登場したJS-WORDに付属したかな漢字変換部KTISがその前身で、1985年にATOK4が単独の製品として登場。その後、一太郎がNECのPC-9800シリーズ上のベストセラーワープロソフトとなるのと同様に、高い人気を誇った。windowsに付属するMS-IMEの性能が上がった現在でも、愛用者は多い。

「ATOK監修委員会」を設けるなどとりわけ辞書の充実に力を入れており、正しい日本語入力という観点から、語の用法間違いを指摘する機能もある(邪魔くさい機能という意見もあるが)。また最近では「関西弁変換」をはじめとする方言の変換にも取り組んでいる。

ちなみに、ATOK監修委員会の委員は次の通り(ATOK15 for Mac OS Xのマニュアルによる)。紀田順一郎、高本條治、鳥飼浩二、井島正博、荻野綱男。

Windows、Mac、Palm、Windows CE、Linuxに対応しているほか、携帯電話にも搭載されている。

なお、ATOKとは「Advanced Technology Of Kana-Kanji Transfer」の略とされているが(ATOK8以降)、リコーの太田純さんによると次の説がある。

ASCII TO Kanji
最初はこれだったはず、とくさかべさんに教わった。のちに、きらいな会社名がまじってるのがいやなので、あとで解釈をANK TO Kanjiに変えた(日下部陽一さんの(280820020817258523%void@merope.pleiades.or.jp)(→Google)をもとに訂正いたしました。TNX > 日下部さん)。ANKはAlpha-Numeric-Kanaの略で英数字かなのこと。
Automatic Transfer Of Kana-kanji
日経パソコンだかバイトだかにATOK6のAPI公開記事が掲載されたときにはこう書かれていたはず。ATOK5で自動変換が掲載されたときにこの名前が採用されたのではないか。
Advanced Technology Of Kana-kanji transfer
ATOK8以降、サポートに「何の略ですか?」と聞くとこういう答えが返る。現在の公式名称らしい。
Awa TOKushima
阿波徳島はジャストシステムの生誕地。たとえAnk TO Kanjiの略だったとしても、阿波徳島にもこっそりかけてあったのだろう、とささやかれている。

ほかに面白い説がありましたら、教えてください。

太田さんの「ここがポイント」

Canna(かんな)

NECのCannaのウェブページ=http://www.nec.co.jp/canna/

スラッシュドット ジャパンの記事「Cannaの開発・保守プロジェクト、sf.jpで発動」によると、SourceForge.jp上でCanna開発・保守が始まったそうです。久しぶりにSlashdotを見に行ったのですが、うまい具合にこういう情報にぶつかって、びっくりしました(この項を追加したのは2002年10月22日です)。プロジェクトページ=http://sourceforge.jp/projects/canna/

UNIXにおける日本語入力システムについては、UNIXでの日本語入力の仕組みを参照してください。

太田さんの「ここがポイント」

EGBRIDGE

「イージーブリッジ」。開発元=エルゴソフト(http://www.ergo.co.jp/)

MacOSに付属する純正の日本語入力プログラム「ことえり」よりも長い歴史を持つ。Macintoshに日本語を入力するシステムが備わっていなかった1984年、当時の日本での販売会社キヤノン販売が日本語を扱えるMacとして「DynaMac」を販売、そこに搭載されたのがEGBridgeである。

その後、純正の日本語入力プログラムのほか、ATOK、VJE、WXなどさまざまなソフトと競合するものの、根強い人気を誇っている。

最近では、Mac OS X 10.1で拡張された最新のUnicode規格にいち早く完全対応したことが目立つ。

Macのほか、BeOSやWindowsに対応(但し、Windows版は製造打ち切りで、流通在庫のみ)。

メイン辞書=約27万語、地名人名辞書=28万3千語、医学辞書=15万4千語など。

EGBRIDGEの由来は、EGはErgoの略と思われるが、BRIDGEがどのような意味を持つかは不明。太田純さんは「ひょっとして『キーボードとアプリケーションの橋渡しをするプログラム』というような意味かな?」と推測しているが、果たして真相は如何に。

太田さんの「ここがポイント」

宗本さんの○×診断(EGBRIDGE11.8、Mac版)

ことえり(アップル)

宗本さんの○×診断(ことえり2)

松茸

太田さんの「ここがポイント」

MS-IME(マイクロソフト)

制作中

OAK/Japanist(富士通)

制作中

SKK

「Simple Kana to Kanji conversion program」の略。佐藤雅彦氏(京都大学教授)により1987年に設計、開発された、emacs/mule上の変換クライアントである。

SKKは、elispで実装されている。直接辞書ファイルを読むことができるので、emacs上の利用だけでは、サーバは必要がないのが特徴だ(サーバを通すことももちろんできる)。

文法解析をしないのが特徴で、漢字の開始位置と送り仮名の開始位置をユーザーが明示することによって、効率的な変換を目指している。

現在では、RingServerプロジェクトのオープンラボラトリで開発が続けられています(http://openlab.ring.gr.jp/skk/index-j.html)。

辞書サーバの実装は、いくつかあり、

skkservもととなるサーバ skksearch複数辞書を読みにいける rskkservrubyによる実装 dbskkd変換速度にこだわったサーバ

などがある。圧縮した辞書を用いたりすることもあるが、これらのサーバでは、基本的に同じ辞書を用いる。

emacs以外からでも入力するために、いくつかクライアントがある。例えば、skkfep(ttyクライアント)、skkinput(XIMクライアント)といったところだ。これらは、skkservと通信する(skkinputは、直接ローカルな辞書も読める)。

なお、unix以外でも、同様な入力方式をもつものが開発されており、SKKIME(Windows用)、AquaSKK(Mac OS X用SKK)といったところが挙げられる。また、LinuxZaurus用のHandSKKもある。

VJE

「ブイジェーイー」。開発元=VACS(http://www.vacs.co.jp/)

最新の解説は、日本語入力Wiki::VJEへ。

当初から、単体の日本語入力プログラムとして開発されており、日本語入力FEP(Front End Prosessor)という考え方はこのプログラムが起源ともいわれている。ほかのソフトは、ワープロの付属品という扱われ方が多かった。

日本語入力プログラムとしての変換精度は、当初、他のプログラムをリードしていた。現在でも、Windows、Linux/BSD、B-TRON、Mac OS X用のほか、携帯電話などの組込用(Compact-VJE)があったが、個人向けパッケージ製品(ライセンス製品、ダウンロード販売含む)のサポートが2005年7月14日に終了することとなった。

VJEは、「VACS Japanese Entry」の頭文字から。

太田さんの「ここがポイント」

宗本さんの○×診断(MacVJE-Delta1.0A)

Wnn

「うんぬ」。UNIXで育った日本語入力プログラム。太田さんの「ここがポイント」にあるとおり、「私の名前は中野です(Watashino Namaeha Nakanodesu)」という文が正しく変換できる複文節変換を目標にしたことから命名された。

「FreeWnn Project」の公式ページ=http://www.freewnn.org/

オムロンソフトウェアWnn6、7のページ=http://www.omronsoft.co.jp/SP/pcunix/wnn/index.html

UNIXにおける日本語入力システムについては、UNIXでの日本語入力の仕組みを参照してください。

太田さんの「ここがポイント」

WX

「ダブリュー・エックス」。開発元=A.I.soft(http://www.aisoft.co.jp/)

非常に多くの項目でカスタマイズが可能で、使い込むほど手になじんでゆくといわれている。以前は、ユーザーと開発元との交流も盛んだった。例えば、Vector(http://www.vector.co.jp/)にあるWX用辞書の多さを見ても、ユーザーの活発さがうかがえるだろう。

変換の仕組みとしては、他のプログラムがn文節最長一致法を採用しているのに対し、最小コスト法(いずれも解説は制作中)を採用しているのが特徴。

Windows、Mac(MacOS 〜9.x)に対応。UNIXに対応もしていたはずだが、現在、不明。

WXシリーズの各製品に付けられた名前は以下の通り。

MS-DOS:

Windows:

WXという名前の由来は、太田純さんは「Word TransferかWabun(和文) Transferあたりかしら?」と予測しているが不明である。山村さんによると、「日本語では普通に読めないような、間違えようのないアルファベットの組み合わせを選んだと言われました」とのこと。また、WXの後ろにつくアルファベットは、Gは、山村さんによると「Generation(s)」の略、すなわち、「次世代標準の機能を持った IME」として世の中に送り出したいという意気込みを表したものだとのことである。また、Pは、太田純さんの記憶によると「PはPublicの略だったと記憶しています。フリーソフトは当時PDS(Public Domain Software)と呼ばれることが多く(真のpublic domainではないものがほとんどでしたが)、無償公開版ということでそういう名前を付けたのだとどこかの雑誌で読んだ記憶があります」とのことである。

太田さんの「ここがポイント」

宗本さんの○×診断(WXG4、Mac版)



「太田さんの『ここがポイント』」は、太田純さんがネットニュースに投稿された記事を、ご厚意により使わせていただきました。使用した記事は以下のとおりです。

なお、太田純さんから、「間違いがあったらそれは太田の責任」と記載しておくよう、お申し出がありました(「太田さんの『ここがポイント』」以外は阿部が執筆していますので、太田さんの責任ではありません)。

また、SKKの項目については、五十嵐亮さんの記事news:87sn0z8gbm.wl@nifty.com(→Google)を基にまとめています。

「宗本さんの○×診断」は、宗本久弥さんがネットニュースに投稿した記事news:alg80g$h4j$1@news2.u-ryukyu.ac.jp(→Google)、news:am525c$hd3$1@news2.u-ryukyu.ac.jp(→Google)を使わせていただきました。宗本さんから、(1)思いつくままに自分の要求する機能について独断と偏見で書いており、様々な機能を網羅的に評価したものではない、(2)忘れてること、見落とし、勘違い、誤解などがある、(3) 便宜上、全角、半角という言葉を用いる――旨を書いておくようお申し出がありました。


作成日:2002年 8月 20日 (火) 更新日:2005年 7月 10日 (日)