「Weekly Needs」1997.7.10号(Vol.3 No.34)
「まち」から「仮設」へ。「仮設」から「まち」へ。
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◆福祉施設◆
[2](3)福祉施設(前号の続き)
1997年3月、神戸市は1997〜2000年度(平成9〜12年度)の「市民福祉総合計画(後期実施計画)」を発表した。神戸市の2000年の人口を1997年3月の141万8千人とし、高齢化率を16.0%と仮定して新ゴールドプラン(新GP)の達成率をもとめた。1997年度予算(施設ができ上がるのは約2年後になる)で新GPの達成率が100%を上回るのは、特養ホーム(特別養護老人ホーム)の106%とショートステイの122%のみである。2001年度予算ではデイサービス(医療機関が行うデイケアをふくめる)の新GP達成率は74%まで伸びる。老健施設は85%と計画している。
ただし神戸市の人口が震災前(1995年1月)の152万人のままなら、特養ホームの達成率は100%となる。2000年の高齢化率が全国平均と同じ17.0%なら94%に低下する。人口と高齢化率の増減で達成率は上下する。
<神戸市の後期実施計画>
| 全国2000年 新ゴールドプラン | 神戸市2000年 新GP当てはめ | 神戸市後期実施計画 |
1997年度 | →新GP比 | 2001年度 | →新GP比 |
ホームヘルプ | 17万人 | 1777人 | | | | |
デイサービス | 1万7千カ所 | 178カ所 | 71カ所 | 40% | 132カ所 | 74% |
ショートステイ | 6万人 | 627人 | 763人 | 122% | 980人 | 156% |
在宅支援センター | 1万カ所 | 105カ所 | 14カ所 | 13% | 37カ所 | 35% |
特養ホーム | 29万人 | 3031人 | 3210人 | 106% | 4010人 | 132% |
老健施設 | 28万人 | 2927人 | 1305人 | 45% | 2500人 | 85% |
ケアハウス | 10万人 | 1045人 | 130人 | 12% | 460人 | 44% |
| 全国 | 神戸市 | 長田区 | 2000年の日本の高齢化率は17.0%
と推定される。神戸市の高齢化率
は1995年国勢調査時に13.5%であ
ったが、2000年には16.0%と推定
される。神戸市の人口は1997年3
月時点のものを採用。 |
高齢化率 | 17.0% | 16.0% | 20.7% |
総人口 | 12738万人 | 141.8万人 | 90166人 |
2000年高齢人口 | 2165万人 | 22.7万人 | 18664人 |
要介護人口 | 280万人 | 29336人 | 2314人 |
要介護/高齢人口 | 12.9% | 12.9% | 12.4% |
ことに福祉施設の中核である特養ホームの定員数の伸びがいちじるしい。特養ホームは震災前には全国の県・政令指定都市のランキングで下から数番目であったのに対して顕著な改善である。不十分さは残るものの、明らかに震災が神戸市の福祉計画をプッシュしたと言える。
特養ホームの問題点は、
- @市街地では「不足」がつづく
- 市街地で新GPを達成する区はまだ少数である。また市街地では老健施設の建設は進まないので、決して「多い」数ではない。
- A「入所者のプライバシー」と「地域との交流」が維持される施設と運営の課題
- B最近の特養入所者は重症化しており「医療との連携」が重要となる
長田区での特養ホームについて見ると、現在は長田ケアホームの1カ所のみであるが、1997年度予算で鹿松町(長田区北部)が認められた。
今後の計画としては二葉町5丁目(新長田再開発地区内)と番町(旧・西市民病院あと)が予定されている。
資料:1997年度予算まででの特養ホーム整備状況(各区別)→
|
|
<長田区の後期実施計画当てはめ>
| 長田区2000年 新GP当てはめ | 長田区 |
1997年度予算 | →新GP比 | 2001年目標 |
ホームヘルプ | 141人 | | | |
デイサービス | 14.1カ所 | 7カ所 | 50% | 10.4カ所 |
ショートステイ | 50人 | 40人 | 81% | 77人 |
在宅支援センター | 8.3カ所 | 2カ所 | 24% | 2.9カ所 |
特養ホーム | 240人 | 100人 | 42% | 317人 |
老健施設 | 231人 | 0人 | 0% | 198人 |
ケアハウス | 83人 | 0人 | 0% | 36人 |
(つづく)
(神戸協同病院院長:上田 耕蔵)
用語脚注:
- 市民福祉総合計画
- 新GPにある達成目標をふまえた神戸市の福祉行政に関する後期実施計画(1997〜2000年度分)のこと。1997年3月発表。
- 新ゴールドプラン(新GP)
- 高齢者保健福祉推進十か年戦略の見直しのこと(1994年12月、大蔵・厚生・自治各省の合意)
- ホームヘルプ(サービス)
- ひとり暮らしやねたきりの高齢者がいる家庭を、派遣申請に基づいてホームヘルパーが訪問し、家事、介護、相談など日常生活の援助を行うこと。
- デイサービス(〜老人デイサービスセンター)
- 在宅の虚弱高齢者や寝たきり高齢者を対象とし、通所により、デイサービスセンターにおいて各種サービスを提供すること。リフトバス等を用いて送迎を行うところや、訪問事業を行うところもある。サービス内容は食事・入浴・日常動作訓練・健康チェック・レクリエーション・生活指導・家族介護者教室など。サービス内容により、以下の5つのタイプがある。
- A型:(重介護型)
- 基本事業(生活指導、日常生活動作訓練、養護、家族介護者教室、健康チェック、送迎)、通所事業(入浴サービス、給食サービス)、訪問事業(入浴サービス、給食サービス)の全部を実施する施設。
- B型:(基本型)
- 基本事業、通所事業の全てを実施し、訪問事業の各サービスについては選択して実施する施設。
- C型:(軽介護型)
- 基本事業6項目中、「送迎」を必須とし、他の5項目中3項目を選択して実施するとともに、通所事業及び訪問事業の5つのサービス中2項目を選択して実施する施設。
- D型:(小規模型)
- 基本事業については、生活指導(レクレーションを含む)、養護、健康チェックを、通所事業については給食サービスを実施するとともに、入浴サービスについては選択して実施する施設。
- E型:(痴呆老人向け毎日通所型)
- 事業の実施はD型と同じ。ただし、対象者を痴呆老人とするもの。
- ショートステイ
- 老人短期入所、またはそのための施設を指す。寝たきりや痴呆・虚弱な高齢者が一時的に家庭介護が困難になった時、一定期間を限度(1・2週間位)に福祉施設(特養ホーム等)などで生活すること。さらに長期にわたる入所(ミドルステイ)を行うところもある。
- 在宅(介護)支援センター
- 介護を行っている家族が、身近なところで気軽に専門家に相談でき、市町村の窓口に行かなくとも必要な保健福祉サービスが受けられるように調整するための、保健・医療・福祉にまたがる在宅サービスの窓口。ホームヘルパーの派遣や、ショートステイ、デイサービス、訪問入浴サービスなど、各種の在宅福祉サービスを提供している機関や、訪問看護、訪問リハビリといった保険医療機関(訪問看護ステーションを含め)などと連絡を取り、実施するサービスの組み合わせなどの調整を行う。
- 特養ホーム(=特別養護老人ホーム)
- 原則として、65歳以上で身体上または精神上に著しい障害があるために、常時介護を必要とするが、家庭ではこれを受けることが困難な老人を入所させ、日常生活上の必要な介護を行う施設。
(養護老人ホームの中でも、常時介護が必要な方を対象とするもの。)
- 養護老人ホーム
- 65歳以上で、身体上、精神上または環境上の理由と経済的な理由から、家庭で養護を受けることが困難な老人を入所させ、健全な日常生活の確保を図ろうとする施設。
- 老健施設(=老人保健施設)
- 疾病、負傷などにより、寝たきりの状態にある老人、またはこれに準じる状態にある老人に対し、看護、医学的管理のもとにおける介護及び機能訓練その他の必要な医療を行うとともに、その日常生活上の世話を行う施設。
- ケアハウス
- 60歳以上で、自炊できない程度の身体機能の低下が認められ、または独立して生活するには不安があり、家庭による援助を受けることが困難な者が利用できる施設。
インフォメーション
- ◆福祉サービスの対象者拡大◆
- 65才以上の人や障害者に行っているホームヘルパーの派遣や短期入所(ショートスティ)・日常生活用具の給付などのサービスが、対象者をひろげ、在宅で介護・介助を受けている特定疾患患者などやその家族もサービスを受けられるようになりました。
【対象者】日常生活を営むのに支障があり、次の@〜Bにあてはまる人。
- @18才〜64才の特定疾患調査研究事業の対象疾患(118疾患)患者と慢性関節リウマチ患者。
- A在宅で療養が可能な程度に症状が安定していること(医師の診断書が必要)。
- B老人福祉法・身体障害者福祉法・児童福祉法・精神薄弱者福祉法の施策の対象ではない方。
【問】市役所 健康増進課
【電話】078−322−5260
または、お住まいの区の区役所保健部(保健所)まで
- ◆神戸国際港都 建設計画案の縦覧◆
- 神戸市役所都市計画局計画課で、次の計画案を見ることができます。期間は7月22日(火)までです。
@用途地域・A高度地区・B高度利用地区・C道路(若松公園線ほか)・D公園(若松公園)・E市街地再開発事業(新長田駅南地区 震災復興 第二種市街地再開発事業)そのほか。
【問】078−322−5478
- ◆花火ガイド◆
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- @須磨 渚の夕べ花火大会(須磨海岸)
- 【日時】7月19日(土)午後8時〜
- 【問】078−731−4341
- Aたるみっこマリンフェスタ花火大会(平磯芝生広場)
- 【日時】7月19日(土)午後8時〜
- 【問】078−708−5151
- B明石市民夏まつり花火大会(明石市役所周辺)
- 【日時】7月25日(金)・26日(土)午後8時〜
- 【問】078−918−5018
- C姫路みなと祭 海上花火大会(姫路港、飾磨港区内)
- 【日時】7月26日(土)午後7時〜(雨天時は7/27(日))
- 【問】0792−21−2504
※@〜Bは、雨の場合中止。
仮設だより
新緑の鮮やかな神戸のまちを愛車のミニバイクで走っていると、ついつい“あじさい”や“むくげ”の花の美しさに見とれてしまう(オット!わき見運転は危ないアブナイ……)。6月、真夏の陽差しを思わせるような梅雨の晴れ間に、ある仮設住宅を訪ねました。
私がおじゃましたお宅は、一人暮しのMおばあちゃん家(ち)。季節のかわり目にひいた風邪のせいか、何となくしんどそう。
「だいじょうぶ?」と声をかけながら室内に上がらせてもらうと、畳のスキ間につめた新聞紙が目に付いた。それは仮設ぐらしの月日を伝えるには、じゅうぶんなほど黄ばんでいました。
公営住宅への入居も進み、どの仮設も空き室が増えたせいか、今年の夏は雑草が目立つ。まちのそこかしこでも、住民の戻らぬ更地に、雑草が太陽に向かってたくましくのびている。
やっぱり仮設で一人暮しのKおばあちゃんは、お歳を感じさせない若々しさで、こう言った。「もう、もとの街でなくてもいいの。公営住宅の倍率も高すぎるし、当たるの待ってられんでしょ。それより、この仮設で馴れたからこの街で暮らしたい。かかりつけのお医者さんも出来たしね」と。
震災前に30年近く過ごした“まち”も今はすっかり様子が変ってしまい、それならいっそと考え直したらしい。
また、家族でよくよく話し合った結果、神戸市外の公営住宅に申し込み、引っ越された方も「人生の再スタートや。心機一転、新しいまちでがんばってみる」とおっしゃってました。
“あの日のあの街”へ戻るのがむずかしいまま、3度目の夏を迎える被災地。仕方なく暮らす土地ではなく、少なくとも自分の意志で選び暮らすまちだからこそ、“住めば都”になるような気がします。
もうすぐ蝉しぐれの街から……
(金田 真須美)
みんなの伝言板
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みなさんの「声」と「声」をつなぐコーナー。「ゆずります」「求めます」「集まってください」などなど、多くの人に呼びかけたいことがあったら、ぜひ連絡をください。
(電話・FAX・郵便で「すたあと長田」までご連絡ください)
- ★共生共創センター(仮称)を一緒につくりませんか?★
- すたあと長田のとなり(長田区御蔵通5−5)のプレハブで、仕事をテーマに、リサイクルショップと作業所をつくろうと思っています。フリースペースも設け、自由に使ってもらえたらな、と考えています。
リサイクルショップで販売できるような不用品がありましたらおよせください。また何か収入を……と考えている方、一度よってみませんか?新しい出会いがあるかも。
その他、自分の作品を展示したり販売したりというのもおもしろいと思います。
ぜひ一度ご連絡ください。また呼びやすい名称も募集中です。
問: 阪神・淡路大震災「仮設」支援NGO連絡会(担当:山田 光)
電話:078−578−6921
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- あき:
- つゆとはいえ、あつい日々がつづき、そのうえに須磨で気が重くなる事件があり、おちつかないわ。
- かん:
- いま、北町のあたりをあるいてみると、黄色い旗がいっぱい。保護司会のかたがよびかけているんだ。
- あき:
- 『ふれあいと対話が築く明るい社会』という旗でしょ。たいせつなことだわ。
- かん:
- おとなりどうしの”ふれあい”が、おたがいに、たいそう助かることは、震災で、ぼくたちが学んだことだもんね。
- あき:
- このまえ、西神第15仮設のかたたちと、いもほりにごいっしょしたの。灘区のほうへ引っ越しされたご夫婦も、こられていて、したしげに話されてたわ。
- かん:
- 《しんさい同窓生》なんだよ、僕たちは。
- あき:
- つらい出来事のあと、まわりの人にもこころを配りながら、いっしょうけんめい生きてるんだから、わたしたち、みんな、助けあう《しんさい同窓生》なのね。
※あついけど、ながたの散歩をたのしみましょう。朱色の長田橋のあたり工事が進み、ひまわりもさいています。
(和田 幹司)
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▲いつもたくさんの人が 渡っている長田橋 |
この「ウィークリーニーズ」は以下の皆様の協力により配られています
- ◎新聞販売店様のご協力で長田区内に折り込み戸別配布
- ・読売新聞 丸山IC ・読売新聞 新長田IC
・神戸新聞 五位の池専売 ・毎日新聞 丸山販売
・毎日新聞 尻池販売 ・読売新聞 御蔵IC
- ◎地元ボランティア団体・個人の協力により、
各地区(市内広域・姫路・大阪など)の仮設住宅に配布
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▽姫路「心のケア」ネットワーク:玉手・新白浜(姫路市)
▽鹿の子台ボランティア連絡会:鹿の子台第1〜8(北区)
▽有野台ボランティア:有野台第1〜3・五社・東有野台・有馬(北区)
▽神戸女子大学ボランティア活動本部:桜木町(須磨区)
▽北須磨ボランティア:西落合1〜2・名谷2(須磨区)
▽春風会:長田区内各仮設
▽兵庫商会:南落合第1〜3(須磨区)
▽阪神高齢者・障害者支援ネットワーク:西神第7(西区)
▽りんくうネット:大阪府りんくうタウン内仮設
- ◎すたあとスタッフによる配達(仮設住宅・店舗など)
- 長田区内各仮設および店舗等・東白川台(須磨区)・学園東町第5(西区)・
星和台南ほか(北区)
- ◎コープこうべ様のご協力で店頭に据え置き
- ▽コープミニ ポートアイランド店
▽コープミニ 鹿の子台店
今号の制作スタッフ
- 編集長: 小野 幸一郎
- 副編集長: 吉田 信昭
- 版下: 澁江 美貴
- タイトル: 加瀬 久美
- 見出し・イラスト:家田慈子・金田真須美・橋本吏賀
- ワープロ入力: 田中洋子・和田幹司
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