「たえず書く人」辻邦生と暮らして 辻 佐保子(著) 中央公論新社 (2008/04)
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作品が生まれたモチーフ、背景、エピソード、文学的意義など, 2008/11/9
辻邦生全集20巻の月報を元にまとめられた20章。佐保子夫人による辻作品の解説。
該当巻所収の作品の客観的な内容紹介はほとんど期待しない方が良く、その作品が生まれたモチーフ、背景、エピソード、文学的意義などがちりばめられている。そのうちでも身近にいた夫人でないと分からない事柄が結構多くて、この本の特徴となっている。夫人の邦生への思いも率直に書かれている。うっかりすると、邦生の気持ちと夫人のそれとが区別できないような記述も再三見られるほどだが、それは二人の緊密度の強さを示すのかも知れない。したがって、新たにこれから辻作品を読もうとする人にもそれなりに理解のいとぐちを与えてくれるだろうけれど、主な作品をすでに読んだ人に一層インフォーマティブな書きぶりとなっている。つまり、辻邦生ファンなら、いたるところで作品の場面や記述を思い浮かべつつ心の高まりをあちらこちらで覚えずにいられないだろう。