風雅論 辻邦生(著) 世界文化社
古めかしいが若者向けにも、風雅=自然または季節+人生+詩, 2002/9/14
若者がこの本を読んでくれることを辻さんはきっと喜ぶと思う。書名も題材も、一見、古めかしいが、若者にこそ読んでもらえる要素がある。なぜなら、アウトドア、詩、人生論・・・と現代の若者に、静かだが広範に関心が広まっているテーマを展開した本だから。
一端を紹介するために、私がどんな風に読んだかといえば:
辻さんがよく引用される漱石のF+f という文学論に模せば、
風雅=自然または季節+人生+詩、
とでも書けようか?たしかに、この本を読めば、そんな単純ではないと思うが、かと言ってこの式が皆目間違っているとも思えない、どころか、その通りと思える。『マルテの手記』に「世人には詩人は自然よりもわかりやすかった」、「彼は詩人であって、曖昧なことがきらいであった」と書かれていることを辻さんはよく知っておられるし、そのように自身もしばしば創作してこられたのだから。そして、私は自然科学者であって、風雅なことが大好きだから。