『資本論』はどのようにして形成されたか―マルクスによる経済学変革の道程をたどる   新日本出版社 (2012/01)   不破哲三(著)
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歴史の中で資本論を読む,  2012/1/30

「資本論」は難しいというので、その解説書を読むと、これまた難しいということがしばしばです。本書は、そうならずに、よく分かるようになる解説書のひとつです。だだし、下記の通り、いわば中級者以上向けです。

本書は、著者の”歴史の中でマルクスを読む”という方法による「資本論」形成史第3弾です。すなわち、第1回が「エンゲルスと『資本論』(上・下)」、第2回が「マルクスと『資本論』−再生産論と恐慌(全3冊)」です。本書では、それらふたつの著書の成果を含め「資本論」形成史に関する10数年にわたる研究の結果をまとめています。内容は、主として経済学変革の画期をなした四つの発見と「資本論」第1部の完成稿にいたる理論展開が中心です。四つの発見とは、絶対地代、経済表マルクス版、恐慌の運動論、独自の資本主義的生産様式の規定を指します。マルクスの草稿準備から完成に至る過程を綿密、具体的に追います。

この形成史解明は、資本論そのものとともに、その諸草稿のうち、「(18)57〜58年草稿」「61〜63年草稿」「63〜65年草稿」を、また多くの書簡などをも読み解きながら進みます。本書を深く理解するためには、これら草稿などを読んでいる必要はないのですが、前提として「資本論」を通読していることが必要で、先行する上記2著書をも読んでいればベターです。さらに、著者が「資本論」全体を読み込みながら形成史に関してもしばしば触れている「『資本論』全三部を読む(全七冊)」を参照できると理解が一層深まると思われます。

さて、本書を読んで驚くのは、著者の旺盛な探求心もあるのですが、マルクスの「資本論」が、完成した理論の書ではなく、マルクスの経済学研究の発展の経過が強く反映した書であると知らされることです。「資本論」には、研究の結果得られた結論の理論的記述のほか、試行錯誤の過程がそのまま書かれていたり、宿題のまま残されたことも多々あることが見てとれます。そして、マルクスが、経済学の理論的発展に大きな貢献をしただけでなく、変革のための研究、たとえば閉塞感の漂う現代日本の変革に向け力を鼓舞するほどの実践的研究を展開したところに類い稀な凄さを感じます。

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