「Weekly Needs」1996.10.17号(Vol.3 No.15)

「まち」から「仮設」へ。「仮設」から「まち」へ。

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「長田のみなさん はじめまして」

〜灘区琵琶町からのエール〜

 キンモクセイの香りがしてきました。とてもいい香りです。何となく子供心に帰らせてくれるような、またお母さんと一緒に歩いているような、そんな懐かしいもので、あぁ〜また秋がやってきたなと感じさせてくれます。「でも少し様子が違うな」と感じるのは僕だけではないと思います。となりの家にも、あの角の家にもあったキンモクセイの風景が少し違うのです。店屋があって風呂屋があって、子供の声とおっちゃんの声、下駄の音と自転車の音……やはり何かが違う。よく見てみるとあの懐かしい風景が無いのです。

 おとうちゃんおかあちゃん、どこへ行ったんや。おっちゃんおばちゃん、どこへ行ったんや。こんな灰色の町に僕をおいてどこへ行ったんや。はよ〜出てきてんか。前のように僕をしかってんか。どんなに大きな声を出しても、どんなに遠くへ走っても、なんにも聞こえないし誰にも会えなくなった。とても寂しく、とても悲しく、とても恐くなります。 でもよ〜く見ると僕の回りにも泣いている子供がいっぱいいることに気付きました。そうだ! 僕は泣いてなんかおられへん。こいつらと一緒にさがしにいこう。むかし聞いたあの懐かしい声を目指して……。

 私の住んでいる灘区琵琶町は一部の区画が全焼し、約80%の方々が区外に避難され、皆さんの住んでおられた長田と同じく区画整理にかかっています。私たちは今できることは何だろうと、一所懸命さがしています。そして一所懸命取り組んでいます。昔と形は違っても、みんながいたわり合い、みんなが汗を流すあの風景を求めて。

 今年6月のある日、ふとしたきっかけで長田のまちづくりに関わる方と出会い、話し合っているとお互い同じ風景を求めて、同じ悩みを持っているもの同士ということがわかり、今日までたくさんの“汗”をいただきました。 謝々
 「一日も早く、一人でも多く元の生活を……」西と東で場所は違いますが、想いは一緒だと思います。この気持ちをキンモクセイの香りに乗せて皆様へお届けできれば嬉しく思います。

(琵琶町復興住民協議会:中川 清司)


インフォメーション


◆2重ローンに対する支援
 すでにお持ちの住宅の融資の返還を行いながら、被災者向け住宅資金融資を利用して住宅を建てられるか、買われる人に一定の条件で助成を行います。助成内容は、年収などに応じて5年間で20万円〜200万円。
 詳しくは、10月1日発行の「広報こうべ」10月号にのっています。
【問】神戸西総合住宅相談所(078−731−6962)

◆まるごとアジアフェスティバル
 「今、神戸のアジアを知ろう撮そう!」と題して、牧田清の写真教室+サイン会(20日午前11時〜12時)、ミニコンサート(27日午後1時〜2時)、民族衣装ファッションショー(27日午後2時〜3時30分)などがあります。入場無料。
【期間】10月20日(日)〜27日(日)
【会場】長田区役所7階 長田区民ギャラリー(078−579−2311)
【主催】神戸アジアタウン推進協議会(078−737−5544)
※11月18日〜23日「今、神戸のアジアを知る写真展」もあります。

◆長田バザール
 神舞太鼓、大ビンゴゲーム大会、南京街の獅子舞などのイベントの他、靴の展示会、全国物産展、フリーマーケットなどがあります。
【日時】10月20日(日)午前10時〜午後5時
【場所】長田区久保町(パラール南)
【交通】JR新長田駅・地下鉄新長田駅から南に徒歩15分
    お車でのおこしはご遠慮ください。
【主催】神戸商工会議所西神戸支部(078−641−3185)

◆ときめき神戸スタンプラリー
 神戸市内にある異人館や博物館など、66の施設を8つの地域に分け、その内4地域でスタンプを押すと応募資格が得られます。応募は、1人1枚までです。抽選でクルーズへの招待や神戸の名産品などが当たります。詳しくは、お問い合せください。
 応募用紙は市内5ヶ所の案内所、新神戸・北野・三宮・神戸・有馬の観光案内所と神戸ハーバーランド総合インフォメーションなどで配布。
【応募〆切】前期:12月31日まで。後期:来年4月8日の消印有効。
【問】観光案内所または神戸集客・観光推進協会(078−322−5339)まで
※情報を詳しく知りたい方は、それぞれの連絡先、または「すたあと長田」までお問い合せ下さい。


仮設だより 〜兵庫区御旅住宅より〜


 仮設住宅の中には「高齢者・身体障害者向地域型住宅」というものがあり、現在神戸市内に21ヶ所、1500人が入居されております。「高齢者・身体障害者向地域型住宅」には、日勤で福祉相談員(生活支援員)が常駐して入居者の福祉サービスの発見・提供を行っています。

 私が福祉相談員として勤める兵庫御旅地域型仮設住宅の開設当時に入居された独居老人Aさん(86歳の女性)は、6ヶ月の避難所生活で体力的にも精神的にも限界状態で、これまでのにぎやかな集団生活から、急に一人で生活することになったギャップが大きかったようで、一言「寂しくなりました」と話されました。
 入居された当時は食事を一人でとることもできず、以前の避難先の看護婦さんからお世話を受けながらどうにか生活できるような状態で、すぐさまホームヘルパーの派遣を行いました。
 そして、昨年(1995年)9月頃になると家事ヘルパーの付き添いを受けながら通院や外出もできるようになり、次第に顔の表情も明るくなりました。最初は通院のための外出でしたが、必然的に買い物や人的交流で世間との接触が増える機会になり、Aさんにとって、よい刺激になったと言えるでしょう。
 ところが同年10月中旬、これまで来ていたヘルパーさんの家族が体調を悪くされ、ヘルパー派遣を受けられなくなりました。Aさんは「私みたいな口の悪い者でも相手にしてくれて良い人やったのに……」と、とってもヘルパーさんを気に入り、頼りにしていたのです。
 そこで、早急に新しいヘルパー派遣の話をAさんにすすめてみましたが「何もかも一人でやるのには時間がかかるし不安やけど、がんばってみる。生きているかどうか部屋をのぞきに来てくれるだけでいい」と言って、断られたのです。

 Aさんには突然ヘルパーさんが来れなくなったという話ではありましたが「それなら自分一人でやってみよう」という決意が芽生えたのです。
「話し相手が欲しいのと、生きているか見に来て欲しいだけ」とのお話から地元ボランティアグループなどに友愛訪問をお願いし、私たちは必要最小限の支援のみを行うことにして、Aさんの自立しようとする気持ちを大切に見守っていくことにしたのです。

(福祉相談員:橘 治行)

※今回の「仮設だより」は、兵庫区ボランティア発行の「復興!たまねぎ」より抜粋し、再編集させて戴きました。


みんなの伝言板


 皆さんの「声」と「声」をつなぐコーナー。「譲ります」「求めます」「この人を捜しています」などなど、多くの人に呼びかけたいことがあったら、ぜひご連絡を下さい。
 (電話・FAX・郵便で「すたあと長田」まで)

★ふりがなつけました
 本紙に載せられた漢字にふりがなをつけて欲しいとのご要望が以前より寄せられていました。遅くなりましたが、ご要望にお応えして、今号よりふりがなを付けていくことにしました。
 作業量が増えるために、制作の都合上、紙面上の全ての漢字に付けられない場合もありますが、一つでも多くのコーナーで実行できるように努力して行くつもりです。
 皆様のご意見をお待ちしています。
(ウィークリーニーズ発行元:すたあと長田:078−521−7170)


あきちゃんかんちゃん、街へ出る 第16回


あき:
10月19日は、長田神社の秋まつりだけど、今年もおみこしの「おわたり」はなく、各地での『復興繁栄祈願祭』だけでさみしいわ。
かん:
早く、長田に人や活気が戻ってきて、みんなでワッショイワッショイとおまつりをやりたいね。そのためにも震災後の今の状況を全国に訴えることが大切だ。
あき:
被災者がみんな個人でがんばってるんだけど、国の援助が必要だものね。
かん:
『ガンバレ神戸』のワッペンを付けて戦ってくれたオリックスと「優勝して神戸を応援しよう」と言ってくれた長嶋巨人軍との神戸での日本シリーズも、震災の現状を訴える良い機会だよ。
あき:
それに10月20日(日)の衆議院選挙も大切だわ。震災復興は「政治のちから」そのものなんだから……。
かん:
ぼくも熱心に候補者や政党の意見を聞いているんだ。自分の生活もかかっているんだから、総選挙では真剣に選んでみるゾー。
『暮らしの手帖』1996秋号118頁……「震災の傷跡は、まだまだ深く、いろんなところにのこっています。こんなときこそ新聞やテレビは、じっくりとしつこく報道をつづけてほしいし、私たちもできるだけ応援をつづけたいとおもうのです。

(和田 幹司)

長田神社


この「ウィークリーニーズ」は以下の皆様の協力により配られています


◎新聞販売店様のご協力で長田区内に折り込み戸別配布
  ・読売新聞 丸山IC   ・読売新聞 新長田IC
  ・神戸新聞 五位の池専売 ・毎日新聞 丸山販売
  ・毎日新聞 尻池販売   ・読売新聞 御蔵IC

◎地元ボランティア団体・個人の協力により各地区の仮設住宅に配布
▽姫路「心のケア」ネットワーク:玉手・新白浜(姫路市)
▽鹿の子台ボランティア連絡会:鹿の子台第1〜8(北区)
▽有野台ボランティア:有野台第1〜3・五社・東有野台・有馬(北区)
▽神戸女子大学ボランティア活動本部:桜木町(須磨区)
▽北須磨ボランティア:西落合1〜2・名谷2(須磨区)
▽SVA神戸:長田区内各仮設
▽兵庫商会:南落合第1〜3(須磨区)
▽阪神高齢者・障害者支援ネットワーク:西神第7(西区)
▽りんくうネット:大阪府りんくうタウン内仮設

◎すたあとスタッフによる配達(仮設住宅・店舗など)
長田区内各仮設および店舗等・東白川台(須磨区)・学園東町第5(西区)・星和台南ほか(北区)

◎コープこうべ様のご協力で店頭に据え置き
▽コープミニ ポートアイランド店
▽コープミニ 鹿の子台店


今号の制作スタッフ


編集長:     小野 幸一郎
副編集長:    吉田 信昭
版下:      吉田 信昭
印刷:      横田 ゆり
タイトル:    加瀬 久美
見出し・イラスト:家田慈子・金田真須美・瀬戸綾子・橋本吏賀・徳永陽子
※インターネット・ホームページ:
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※「すたあと長田」は、「ウィークリーニーズ」の発行を中心として地域のコミュニティづくりのお手伝いを目的に、自主管理で運営するボランティア団体です。
 「ウィークリーニーズ」に対するご意見やご希望、お気付きになられたことがありましたら、ぜひ、ご連絡下さい。投稿なども歓迎いたします。
(すたあと長田)



numata@sakuraia.c.u-tokyo.ac.jp