「Weekly Needs」1995.9.17号(Vol.2 No.4)

Vol.2 No.4 表紙

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おじいちゃん・おばあちゃんに会いに

〜仮設住宅を訪ねて思ったこと〜

 空もすっかり秋らしくなり、ずいぶん過ごしやすくなりました。気候の変化は、仮設住宅での生活、そして殊にお年寄りには厳しいものです。如何お過ごしでしょうか。私は春から梅雨の頃にかけて、老人ケアを主とするボランティアに参加していました。お年寄りの方々とお話できるのが楽しくて、殆ど毎日2〜3人のお宅を訪問しては、家事やお話、足のマッサージなどをさせてもらいました。
 みなさん、元気なお話上手な方ばかりでしたが、家から出るのが困難な方が殆どでした。多いのはリュウマチ。雨の日、寒い日が辛いんですよね。あと関連して、足の悪い方が殆どでした。中には骨粗しょう症で、私たちが体を支えることさえ危険(下手に支えようとすると骨が崩れてしまう)なお婆さんもいらっしゃいました。
 でも、その方はとてもお話上手でした。12〜17歳、北海道から神戸へ一人旅の話。18歳、初めての(?)結婚(そこから逃げて帰ってしまった)の話。今は2度目の結婚を経て、年下の3番目のご主人と暮らしていらっしゃるそう。お婆ちゃん達のお話はまるで小説のよう。語り口がまたうまい!
 また、別のマッサージ好きのお婆ちゃん(この方も足が悪かったのですが)の、沖縄で外国人の中で生活していた話も。この方も恋多き人で「恋せよ乙女」とハッパをかけられる私たちでした。
 折り紙で部屋をお花畑にしていらっしゃる手先の器用な方もいらっしゃいましたし、料理上手の男の方もおられました。その方が出して下さるおやつ(手作りよもぎもち、カプチーノ、おはぎなど)のおいしいこと。まさに最高なのです。足が悪い奥さんに代わって家事一切を見事に切り盛りしていらっしゃいました。
 どの方ひとりとっても、何かしら、はっとするものを持っていらっしゃるのです。お年寄りと会うことで、日々磨かれていく気がしていました。
 お年寄りに知恵あり、歴史ありです。

(みさみさ)


暮らしの潤いを見つけに

仮設住宅での茶話会を催した、ねえさんからの手紙

 拝啓

 秋の訪れを虫の音に感じる今日この頃、皆様には如何お過ごしでしょうか。私は、先日9月9日の土曜日、午後2時より神戸市北区にあります−−仮設星和台南住宅−−にて茶話会を催してまいりました。
 当日は十五夜で、陰暦で言うところの重陽(別名、菊の節句)にちなんで、ススキや菊の花を持参いたしました。初めてこの仮設を知ったのがその週の月曜日で、茶話会の準備期間が4日間と短く、お手伝い頂いた皆様にも、大変ご苦労をおかけしました。今回で3度目を数えますが、各々の仮設によって雰囲気も異なり、抱える問題も微妙に違います。震災後、70過ぎの女性と知り合ったことが、私の目を仮設へと向けるきっかけになりました。花冷えのする4月9日、鍵渡しの日、その女性は長田の公園テントから名谷の仮設へと移って行かれました。引っ越しを手伝う私達を困らせたのは、朝から降り続く雨ではなく、鍵と一緒に手渡された行政配布の地図でした。やっとの思いで現地に着いて分かったのは、カンバン等の目印さえあれば、同じ所を何度も行き来しなくて済んだということでした。その後も幾度となく足を運ぶうち、ひと月が経ち未だ隣人の顔さえ知らぬという話に驚かされ茶話会を開くに至りました。
 急ごしらえで味気ない箱の集合体、私の目に映る仮設住宅の姿でした。予期せぬ災害対策の結果とはいえ、仕方がないというだけでは納得することはできません。私達、被災者が行き着くゴールがどこなのか、私には分かりませんが、いつの時、どこに居ても、安らぎの為には個人も行政も関係なく手を取り合い、努力し続けるべきだと改めて感じます。そのためにも仮設住宅内で自治会を発足させる必要があると痛感致しました。
 私の生けた花を見た女性がおっしゃいました。「避難所では紙皿で、仮設に来てからはソーメンもうどんも一つのドンブリを使い、以前は欠かさなかった花も震災後は生けることさえ忘れていた」と。限られた選択の中で生きるための潤いとは何か?私の中ではじけます。
 今後とも、ご迷惑おかけする事、多いかと存じますが、よろしくお願い致します。朝夕の冷えに風邪など召されませぬ様、お身体ご自愛下さいませ。

 かしこ

 9月17日 金田 真須美

追伸:この度の茶話会へのご協力に対し、SVA・すたあと長田の方々へ、深く感謝致します。


長田のEatころみっけ!


「本家・桜亭」の巻
 「すたあと長田」のプレハブ(御蔵通5−5)から歩くこと2分、御蔵公園の北側。新築のプレハブの1階にピンクののれん。そいつをくぐると小綺麗な店内が目に入る。
 はい、ここが新しい本家桜亭であります。僕が伺った日もカウンターにはズラリとお客さんがいらっしゃって、ええ雰囲気でした。ありゃ、お邪魔虫かしらん。そこで、いらっしゃいとのママさんの優しい声に促され、図々しくもカウンターの中に入れさせてもらい、お話を伺いました。弟さん(?)からの話では、「店の中のもん(冷蔵庫やクーラーなどなど)は殆ど持ち寄り。みんなの気持ちで開店まで漕ぎ着けましたわ」とのこと。もちろんそれは、ママさんの桜亭再開への意欲があってこそ。実ははじめに書いたピンク(桜色)ののれんは、震災前に発注していたものだったそう。それを酒屋さんが大切に保管してくれていた。その事を知ったママさんはさらにお店再建の意を強くされた訳です。
 ママさんからのお言葉。「そやね、ともかく今度のことで、お客さん、業者さん、そして家主さんにほんまにお世話になって、感謝しているんですよ。」
 桜亭のある場所もいわゆる「再開発地区」。周辺一帯も全焼した。それでも再び咲いた「桜」のもとで再び和やかな笑いが戻ってきたことが、ママさんの何よりの喜びのようです。

・営業時間:17時〜24時迄
・定休日:毎週日曜日
・電話:578-2388
オススメ:飲茶、韓国料理等。すっぽんを食したい方は要予約。

(小野幸一郎)

「新生・七福」の巻
 「寿司の七福」が生まれ変わりました。長田商店街の南の入り口にある朱い鳥居の東の、いつもお店のテーマソングをかけているお寿司屋さんです。地震で元あった店舗は全壊してしまったそうですが、9月1日にめでたく再オープン。お酒・ビールも始めて、営業時間も今までは午後8時までだったのが、今では11時まで開店しています。おでん・揚げ物などの居酒屋メニューも登場して、皆さんのお越しをお待ちしております!
 お店に伺ってびっくりしたのは、なんとお店のカウンターや戸棚はマスターの奥間前経さん自身の手製だそう!でも素人が作ったなんて分からないほど。
 「お店は早く再開したかった。でも大工さんもなかなか来てくれへんかってねぇ」。大工さんを待つ間、大工さんの仕事をしてしまったマスター。誰にでも出来ることではないなぁ、と感心しきり。6月頃から毎日、六間道の自宅から店に通って作っていったとか。二階にも席があって規模は開店当時の4倍になりました。
 とにかく安い。遅くまでゆっくり出来るお店です。お持ち帰りもあり!

おすすめメニュー

★うどん定食
(うどん+にぎり6つ):800円
★まつたけのにぎり
一ヶ:150円
(季節物なので11月まで)
★にぎり一盛り
5,500円
(パーティー用)
11時〜23時
TEL: 578-0601

(いえいえ)


ヤマキチ開いたで、よっといで!!

山吉市場に元気な呼び声が帰ってきた

 長田の市場がまた一つ復活しました。9月11日、「山吉(やまきち)市場」が再開です!
−というわけでそれより遅れること2日後(スンマセン)、市場に馳せ参じた次第です。山吉市場の歴史は古い。生まれは大正7年。「山吉」の名は、市場の発足に尽力された「山田吉蔵」さんの名にちなんで命名されたそう。かつての戦災では、西半分が焼失する被害を受けました。その後復活、現在に至ります。で、今回の震災では無事だった方の東半分が全壊してしまいましたが、この度、プレハブの再建が済み、再開の運びとなったわけです。
 ではでは、会長の七條鉱治さんに伺ってみます。

−再開おめでとうございます!
「はい、何とか9割の店が出そろうことが出来ました」。
−お客さんの出については如何でしょう。
「やっぱり少ないですね。この山吉の周りは火事で全焼したところが多く、以前の2〜3割ぐらいかなぁ」。
−再開に当たって大変なことは。
「ここは区画整理地域に入ってますので、今後の計画如何によってどう変わるか分かりませんから、設備投資などで悩みますねぇ」。

 山吉市場もまた、難題を抱えながらの再出発ですが、ぜひとも頑張って下さい!

(小野 幸一郎)


あきちゃん・かんちゃん「すたあと勉強室」No.4

−まちづくりを考える−

あき
まちづくり協議会に参加することは大切よね。
かん
区画整理の地域は、特に大切だね。
あき
協議会ですべてが決められるの?
かん
市は、協議会で、その町に住む人達の意見をよく聞いて、事業計画を作っていくんだ。街路や公園などの配置も相談されるんだ。
あき
新聞では、「市は年内に計画を決定したい」って書いてあったわ。来年早々、工事が始まるってことかしら?
かん
計画が決定されたら区画整理審議会の選挙があり、住民の代表でチェックする機会があるようだ。
あき
「審議会」のことも少し勉強してみる必要がありそうね。
かん
次には「換地」とか「減歩(げんぶ)」という言葉も調べてみるよ。
あき
「計画の実施」というと、移転したり、住宅の建設工事が始まったりすることね。
かん
土地を一部提供したり、代わりの土地をもらったりした後の補償もあるね。本当に大がかりの事業だよね。
(あき・幹)

<参照>
復興まちづくり市民連絡会運営会議(8月)の資料など

区画整理事業の流れ
都市計画の決定(1995年3月)

まちづくり協議会との打ち合わせ
(今、重要!!)

実地測量
現物調査

事業計画の決定

区画整理審議会の選挙

事業の実施
(仮換地指定、移転、住宅建設工事、補償)

事業の終了
(換地処分、登記、清算金徴収、交付)


長田発〜アジア秋祭り・ボランティアスタッフ大募集!!


 「アジアからの風を御菅に」10月1日(日)、タイの舞踊・音楽団イサーンの一行が来日するのを機会に、菅原商店街で、「長田発〜アジア秋祭り」を行います。
 ステージではイサーンの舞踊を中心に、様々な催し物が行われる予定です。またその周辺では様々な国の特色あふれる屋台が立ち並び、アジアの文化に触れることが出来ます。
 そこで、「長田発〜アジア秋祭り実行委員会」では、当日手伝ってくれるボランティアを募集します。特にこども広場で、昔の遊びを子供達に教えてくれるおじいちゃん・おばあちゃんを大募集!! もちろん若者も大歓迎!!
 どうぞ気軽にご連絡下さい。

れんらくさき:SVA内長田発〜アジア秋祭り事務局長 高橋 康次郎
でんわ:512-3703  FAX:512-3705


寅さんを長田に迎えるための署名にご協力を


 いよいよ念願の神戸ロケが実現しそうです。山田監督は、既に決まっていたシナリオを一部変更して地元のお願いに答えてくれそうです。監督は、地元は皆さんと一緒に映画を作りたい、とおっしゃっています。
 地元として、この神戸ロケが最高の条件のもと進められるよう、出来る限り努力したいと思います。
 皆さんの署名を出来るだけ多く集めて、地元の熱意を伝えるため、署名にご協力下さい。
 なお、「寅さんを迎える会」の実行委員会を、毎週木曜日午後5時から、長田区役所で開いています。
 興味のある方はぜひお越し下さい。



numata@sakuraia.c.u-tokyo.ac.jp