大学を卒業して二年、今や花のフリーアルバイター人生を謳歌している俺は人生について考えていたのである。
だから、道を見ていたのだ。
人生の道と、普通の道をかけているのだ、
親父ギャグじゃんとか言わないように。
だが、道を見つめているだけではただの変人だ、
ひそひそ声で、
「やばいよー、あのひと変ー」
とか言われてもしかたない。
そう考えながら、なんとなく雑誌を手に取った。
既に、俺はコンビニの中に立っていた。
考えながら歩いていたので、気分は瞬間移動だ。
傍目から見ると、ただぼんやり歩いているだけだが。
雑誌を開く、
いきなり広告のページだ。
この広告こそが俺のその後の運命を変えることになろうとはこの時は思いもしなかった。
思いもしなかったので、広告を読むという動作は一瞬で却下された。
この広告が俺に読まれるのはこれから三日語の事になる。
なんで、読んだのかって?
暇だったからだ。
広告は半ページを使った二色刷りの一品だった、
良く言うと、シンプル。
悪く言うと、地味。
悪く言うと、見づらい。
悪く言うと、・・・・悪く言うのは止めよう、広告作った人に悪い。
内容は、
「宝林財団私設遺跡発掘隊隊員募集!!
君も浪漫を感じてみないか!?
三食昼寝付き、勤務地・・・・・・・・・・・・・・」
浪漫うんたらはどうでもいい。
「三食昼寝付き」
これだ。
悪くないかもしれない、不都合だったら止めればいいし。
そう思って、電話の受話器を手に取った俺は、
広告に書いてある電話番号を押していた。
更に三日後、
俺は面接を受けていた。
面接の担当はゆるそうな男といかついオヤジだった。
以下、面接の内容
ゆるそうな男(以下ゆるお)「当調査隊を志望した理由をお聞かせ下さい」
俺「浪漫を感じてみたかったからです」
いかついオヤジ(以下オヤジ)「体力はありますか?」
俺「それなりです」
オヤジ「それなりですか」
俺「かなりそれなりです」
オヤジ「体力、それなり、と・・・・」(チェック表に付けている)
ゆるお「一人暮しですか?」
俺「完全無欠に一人暮しです」
ゆるお「・・・・彼女無し、ということですか?」
俺(涙を流しつつ)「正直に言ってそうです、生まれてから24年間ずっと彼女と呼べる存在はいません、なんでわかったんですか?」
ゆるお「なんとなくです」
オヤジ「長期勤務になりますが大丈夫ですか?」
俺「全然平気です」
オヤジ「全然ですか?」
俺「全然です」
ゆるお「あなたの長所をお聞かせ下さい」
俺「普通なところです」
ゆるお「普通?、どのくらい普通なんですか?」
俺「毎朝、早起きして納豆おかずに朝飯食うくらい普通です」
オヤジ「普通ということは、特に長所が無いともとれますが?」
俺「そうともゆう」
オヤジ「・・・・・・○レヨンしんちゃん、好きですか?」
俺「大好きです」
オヤジ「登場人物のなかで誰が一番好きですか」
俺「ねねちゃんのお母さんです」
ゆるお「最後に、あなたのお名前をお聞かせ下さい」
俺「九条慎一です」
俺は応募用紙に名前を書いていなかった。
俺は今、トラックの荷台に座っていた。
周りにあるのは俺のほとんど無い家財道具だ。
採用通知が届いた翌日、宝林財団の者だと名乗る引越し業者が現れ、
俺と家財道具を部屋から搬出してくれたのだ。
ご丁寧に俺がそれまで住んでいたアパートの契約も解約済みなんだそうだ、
面倒な手続きは全てナシである。
しかし、別の見方だって出来るな、
俺、拉致されたんじゃねえか?
そう思ったのは、つい5分前だが。
実際そうかもしれない。
もしそうなら、親友の護に別れの電話くらいかけさせて欲しかった。
護の奴ときたら、高校2年の時まではぱっとしなかったのに、
3年になって彼女が出来てから、いきなりかっこよくなりやがって、あの野郎。
そういえば、今もその彼女と共同生活してたなあ、あいつ。
なんてうらやましい野郎だ・・・・・、やめよう。ひがむのはみっともない。
そういや、あいつとも大学卒業以来会ってないな・・・会いに行こうかな・・暇になったら。
とか、思ってたらトラックの揺れが止まった。
止まったらしい、またトイレ休憩だろうか?
「お疲れさまでした、着きましたよ九条さん」
「・・・・あんた、誰?」
「・・・・引越し業者です、つい3時間前も会ったでしょう」
「そういや、そうだったね」
「2日もトラックの荷台で疲れませんでしたか?」
「ああ、俺の事なら大丈夫、ぞんざいに扱われるのは慣れてるし、そのほうがかえって安心するから」
「・・・・そうなんですか」
「俺を無理やりにさらった人の台詞とも思えないな」
「あなたがついでに乗せていって欲しいっていったんじゃないですか、行き先までの道順がいまいち解らないとか言うから」
「そういや、そうだったね」
「搬出始めますから、降りてください」
「へーい」
降りて辺りを見まわす、
見渡す限りの大自然だ。
そこから振り返ると不自然に近代的な建物があった。
「ねえねえ、この建物何?」
さっきの業者をつかまえて訊ねる。
「あなたの引越し先ですよ」
「この立派な建物が?」
「そうです」
「へええ・・・・・・・いいねえ」
「搬入もう終わりですね」
「え、もう?」
「荷物少なかったですから、私一人で搬入終わりましたし」
「なんか悲しいな・・・・」
そう言い、また別の方向を向くと、俺が乗ってきたトラックにそっくりなトラックが止まっていた。
「あのさ、ここに来るのって俺だけじゃないの?」
「全員で20人だと聞いてますが」
「じゃあ、もう来てる人とかいるかな?」
「どうでしょうね・・・?九条さんはこうやって来ましたけど、本来は別に来てもらう予定でしたからね、聞いてきましょう」
業者はそういってここを離れると、しばらくして戻ってきた。
走ったらしくて、息が切れている。
「悪いね、使い走りさせちゃって」
「いえ、気にしないで下さい。・・・・ここに来ているか今日中に来る予定の人はあなた以外に6人ですね」
「中にいるのかい?」
「どうでしょうね、そこまではわかりませんでしたけど。一人、九条さんと同じで私達のトラックで来てる人がいるらしいですから、
その人にはすぐ会えると思いますよ」
「そうかい、さんきゅな」
「いえ、打ち合わせも兼ねてますから」
「打ち合わせって?」
「これから、また仕事です。その打ち合わせです」
「そうか、じゃここでお別れだな。・・・・最後に名前聞かせてくれないか?」
「奈々篠 言太郎(ななしの ごんたろう)です」
「・・・・・すげえ、解りやすい名前だ・・・。また会う事は無いと思うけどあんたの名前は忘れない」
「良く言われます、じゃあこれで。あ、これ中の見取り図と、貴方の部屋の鍵です。なくしたりしないでくださいね」
奈々篠さんはそのまま振り返りもせずにトラックに乗って去っていった。
2度と出る事も無いキャラだろうが、退場はかっこいい。
自分の部屋以外の部屋は入れる部屋もあったが、中には何も無かった。
当然といえば当然であるが、なんかくやしい。
ただ、いくつか鍵のかかった部屋があったので、そこにはもう住人もしくはその荷物が来ているらしい。
俺は散歩でもすることにした、
とりあえず歩く、
歩く歩く歩く、
歩く歩く歩く歩く歩く歩く、
歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く、
歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く、
歩く歩く歩く歩く歩く歩く・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、もう20分は歩いている。
なのに、何も無い。(大自然以外は)
なんかくやしいので、石を拾って投げると、木々の間に飛び込んで
「ぐえっ」
という音をたてた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ぐえっ?
なんだそりゃあ?
もう一回やってみる。
「ぐえっ」
又だ、俺には理解できた。
ここいらの木には呪いがかっているんだ、
そういや今まで忘れてたけど、俺の仕事は遺跡の発掘調査だ。
ということはこの辺に遺跡があるってことだ、
古い遺跡、そこにかけられた呪い、おれはきっと蛙か何かになって踏まれて死ぬに違いない、おお、嫌だ。
「誰ですかー、人に石なんか投げつける人はー?」
何だ、やっぱり人間か。
どうやら、俺の同僚になる奴らしい。
挨拶でもするかな・・・・、
俺は意を決して話しかける事にした。
「すまない、悪気はなかったんだ。本当は少しあったけど無かったことにしといてくれ」
「じゃあ、許しますー、ああ、そこで待ってて下さい今降りますから」
そう言って降りてきたのは目の細い男だった。
「僕は、岡田信樹(おかだ のぶき)って言います。あなたも調査隊の方ですか?」
「ああ、俺は九条慎一、よろしく頼むよ。・・・木に登って何やってたんだい」
「昼寝するのに具合の良さそうな所を探していたんですよー」
「昼寝?・・・・・・・・・朝っぱらから・・・・・?」
「そうです、僕、昼寝好きなんですよー、アハハ」
面白そうな奴だと思った。
きっと奴は昼寝さえ出来てれば幸せなんだろう。
良く解らんが、そんな気がしてならなかった。
岡田と一緒に建物へ戻ってくると、又、人がいた。
白い帽子に白いノースリーブのワンピース、
どうやら女性のようだ。
違ってたら怖い物がある。
近寄ると、向こうから話し掛けてきた。
「貴方達は、調査隊の方ですか?」
「そうですけど、あなたも?」
「ええ、私は木村素子(きむらもとこ)といいます、貴方達は?」
「俺は九条慎一、彼は・・・ええと、何だっけ?」
「岡田ですよー、岡田信樹、九条さん、忘れないで下さいよー」
「申し訳無い」
「同感だわね、私は次に名前聞かれても教えないわよ」
彼女は冗談めかしてそう言った。
今気づいたが、彼女、結構美人だ。
だが・・・・・・・・、ここに来ている人間なのだ、
油断はならない、きっと何か特殊能力があるに違いない。
ヒントだけでもつかめないものだろうか?
「ええと、・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「九条さん、何固まってるんですか?」
「そうそう、言いたいことははっきりと言った方が・・・」
「・・・・・・・・・・・・ごめん、君の名前忘れた・・・・・・・・」
時が、一瞬停止してまた動き出した。
「木村です、木村。・・・・・言ってるそばから忘れないで下さい」
「木村ね、木村・・・・・・、いや名字は解るんだけどさ・・・・・・・」
「なるほど、それで名前が解らないと!」
「そう!岡田君、見かけによらず鋭いねー!」
そこまで言って、二人で大笑いした。
木村さんは困惑顔で固まっていた、
もう、、どうにもフォロー不可能だった。
一瞬、場が静かになって、鳥の声が聞こえてきた。
いい感じだ、でも嬉しくない。
「素子です、素子、すうどんのすって書いてこどものこで素子、年は22才、血液型はAB・・・・・」
「いや、そこまで聞いてない、ちなみに俺24才ね」
「ああ、そうですね、そこまで聞かれてないかー、まいったなー」
「いやいや、私は君についてもっと良く知りたいな」
振り返ると、
「ダンディーなおじさま」
とでも形容すべき人物がそこにいた、
解りやすい変な人だ!
逆に安心してもいいかもしれない。
「私は、鈴木浩太郎(すずき こうたろう)。年は32、趣味は『はんてぃんぐっ』だ。ちなみに狩るのは野生動物だけではないかもしれないよ?
そう、木村君、君のような素敵な女性とか・・・・・ね?」
最後の「ね?」に乗せて破壊力甚大の流し目が炸裂した。
俺は別の世界に旅立ちかけてなんとか踏みとどまり、
お嬢ちゃん(素子の事)は立ちくらみがきたようだ。
岡田に至っては、すでに気を失っている。
「おや、大丈夫かね?九条君に岡田君、木村君が立ちくらみをするというのは納得いくが・・・・・・・・・、君ら、持病でもあるのかね?」
「はあ、ちょっとアレルギーみたいなもんが・・・・・・・」
「そうか、それはいかんなぁ、九条君。若いのに病気持ちだなどとは嘆かわしい」
限界だ、この怪しいオーラに耐えられない、
もう、駄目かもしれない。そう思ったその時!
「なんじゃい、結構来とるやんけ。おーい、森本、久安、早く来やがれコラ!」
これ以上無い、今日最大の変人だ。
なんてったって、葬式でもないのに黒外套なんて着てやがる。
でも不思議と知っている人のような気がする・・・・・。
「魔人さんが歩くの速すぎるんです、私達が遅いんじゃありません」
「そうだぜ、じいさん」
「やっかましいわい」
黒服の後ろから現れたのは、なんと!
「ああっ!、ゆるおにオヤジ!」
「誰がやさおで誰がオヤジだっ!」
「ゆるおです、ゆるお。やさおじゃないですよ、森本さん。私がゆるおでしょうね、多分。となると森本さん、あなたがオヤジです」
「ふぅざけんなぁ!・・・・おい、お前。確か・・・九条だったな!」
「あ、すんません、オヤジなんて2度と言わねえっす」
「違う!、俺はオッサンだっ!、オヤジってゆーな!」
「あんまり変わらないですよ、森本さん。ああ、九条君、私は久安照正(ひさやす てるまさ)
この発掘調査隊の隊長です、彼は副隊長の森本権太郎(もりもと ごんたろう)さん。これからよろしくお願いしますね」
「権太郎・・・・さんですか?」
良く良く縁のある名前だ。
「なっ何だ?俺の名前がどうかしたか?」
「いや、俺の荷物とか運搬してきた人の名前も権太郎だったんで・・・珍しいなと思って」
「何ぃ?、俺と同じ名前だとぉ?ああー、会ってみたい話してみたい触ってみたいー!」
森本のオッサンは絶叫し、心底悔しそうである。
「わはは、変な名前同士仲良くするんか?」
「うるせーんだよ、じじい!お前だって魔人なんつー苗字のようでも名前のようでもない一般名詞みたいな名前じゃねえかっ!」
「へへーんだ、ワシには名前なんて意味が無いもんね、今も仮にそうなのってるだけだしぃー」
「コギャルみたいなしゃべりすんじゃねえっ!」
「いいんだよ、身体は若いんだからよぉ」
「年齢不肖の生き仏のくせして、何言ってやがる・・・・・・」
「はっはっは、そうひがむな。・・・・おお、自己紹介がまだだったな。ワシは魔人、いわゆる現地協力者という奴じゃい。よろしゅーな!」
「よ・・・・・よろしく・・・・・」
なんとかその一言を搾り出す。
このおっさん(?)絶対にただモンじゃねえ、さっきからテンションは異常に高いのに、目が笑っていない。
はっきり言ってメチャクチャ怖ええ。
「んん〜?、九条君とか言ったっけ、君?」
「は、はい、そうデスケド・・・・・」
「なんか怯えてない?」
あんたが怖いんだよ、とは言えない。
仕方が無いので適当にごまかす事にする。
「い、いや、昔どこかで会った事がありましたっけ?」
「・・・・・・・・・・・いや、初めてだが?」
無言の一瞬がとてつもなく気になる。
「ホントにィ?」
「ホントだよぉ〜・・・・」
今度は露骨にダルそうな態度で答えやがった、怪しい。
「・・・・・・・あっ、思い出したっ!」
「何っ!、思い出したのかっ!?」
「嘘ですよ」
「おっ、驚かせんなよぉ、バレタかと思ったじゃねーか・・・・」
「何がです?」
俺は会心の笑みを浮かべた。
それこそ、『ニヤリ』と浮かべた。
魔人のオッサンは痛恨の表情だ、
コレ以上無いくらいに『しまったぁぁ、俺とした事がゲロ甘だったぜとっつぁぁん』という顔だ。
何故ルパンでボケるんだ俺、と自分に内心ツッコミつつオッサンにつっこむ。
「なぁにぃがぁでぇすぅ?」
「そっ、それは・・・・その、アレだ・・・・、なぁ、解るだろ?」
「さぁ、全然」
オッサンは露骨にイヤそうな顔をした後、イヤそうに話し出した。
「
何故か?
それは・・・・・・、来る奴来る奴みんな、変人ぞろいだったからである!
(久安さんと森本さんが選んだんだそーだ、
理由は・・・・・・・、多分変人じゃないと、この人外魔境の環境に気が狂ってしまうからではないかと思う)
結構楽しい職場だなと・・・・・思う。
変な奴だらけなのを除けば・・・・・・・・だが。