長岡鉄男 ながおか てつお 1926.1.5 - 2000.5.29 pm4:06


頭のトレーニング1集 新しいクイズ100選

昭和42年1月 永岡書店 2276-10990-5615 650円


世は正にクイズ・ブーム!

放送に、出版にクイズ、パズルは花盛り。だが、そのクイズ、パズルの内容はと見ると超クラシックの海外パズルを、そのまま引き写した、と言うような物も決して少なくない。

その点、本書は類書とは趣を異にする。ここに集めた100問のクイズ、パズルは殆ど筆者の創作になる物だからである。

たかがクイズ、パズルとバカにせず、本書をフルに活用して思考力を養い、実用的な面においても、なにがしかの汲み取る物があれば幸いである。


頭のトレーニング2集 クイズ・パズル作法入門

昭和43年1月 永岡書店 2276-11090-5615


世は正にクイズ・ブーム!

クイズは解くのも楽しいが、作るのもまた楽しい。そしてクイズは、作ろうと思えば誰にも作れる物なのである。

クイズ・パズルと銘打った本は数十種類も出版されているが、本書は類書とは趣を異にする画期的な物と自負している。解く楽しみとともに"クイズ作りの参考書"としての性格をも持たせた物だからである。

本書を一冊マスターすれば、ことクイズに関することならセミプロ級にはなれよう。クイズ作法に通ずることはまた、クイズ解法にも通ずることだからである。


続・オーディオ日曜大工 【スピーカー・システムの設計】

昭和51年4月30日 音楽之友社 ISBN4-276-20172-1 C0073


日曜大工の本来の面白さは、自分で設計し、自分で作るところにあると思う。キットというのはメーカーが設計し材料を揃え裁断し、一応の仕上げまで済ませた物を、ユーザーが単に組み立てるだけである。それでも結構楽しい物ではあるが、本来の楽しみの十分の一しか味わえないのではないかと思う。

「オーディオ日曜大工」のように、設計図だけを頼りに、自分で材料を集め、裁断し、組み立て、仕上げまでやるというのはキットに較べると遥かに手間がかかり、それだけに楽しみも遥かに大きいが、それでも本来の楽しさの二分の一かせいぜい三分の二ぐらいと思う。設計までやって、初めて本当の楽しさがわかる、あるいは実際には作らずに、設計するだけでも結構楽しい。

設計と言っても、実際は単に図面を引くだけのことではない。まず全体の構想から入り、予算、スペース、材料を考え、板取や、組み立て順序と言った物も考慮しながら設計していくのである。いきなり図面だけ引いたりすると、材料に大変なロスがでたり、実際に手を着けてみたら、組み立て不能だったり、と言うことがよくある。

本篇では、スピーカー・システムの設計法を中心に、初心者にも理解できるように詳しく解説してみた。この本一冊マスターすれば、予算に合わせ、自分の部屋に合わせ、音の好みに合わせて、自由自在にスピーカー・システムを設計することが出来るはずである。

- 前書きより -


オーディオA級ライセンス

1983.12.10 共同通信社 ISBN4-7641-0138-6 C0376


オーディオ装置の能力をフルに引き出すために手間と暇を惜しまない行動派マニアに捧げる、著者のノウハウのすべて。カートリッジからスピーカーまではもちろん、リスニングルームのイスに至るまで徹底的に論じた待望の書き下ろし"オーディオ・バイブル"


長岡鉄男の外盤A級セレクション1

1984.7.16 共同通信社 ISBN4-7641-0151-3 C0373


輸入盤はなぜ音が良いのか?安くて良い輸入盤を選ぶにはどうしたらよいか?マニアのための"ソースの宝庫"に分け入るコツを明かし、「買って損しないモノばかり」100枚を厳選する。今始めなければ手遅れになる外盤コレクションのための緊急書き下ろし。


長岡鉄男のレコード漫談 玉石混淆のレコード紹介240

昭和59.10.20 音楽之友社 ISBN4-276-20172-1 C0073


『ステレオ』誌の八〇年一月号から連載している「レコード漫談」を単行本にまとめたいという話があって、当初はほんの数か所、赤を入れるだけで、そのまま使えるかなと思っていたのだが、取り掛かってみたらライター本能とでもいうのか、右腕がむずむずし始めて、結局赤鉛筆を万年筆に換えて、大幅に書き直す羽目になってしまった。

紹介レコードも入れ換えたり、枚数を増やしたりでかなり変わった。ジャケットの写真も、スペアナの写真もほとんど撮り直した。ジャケットの写真は多少出来の悪いものもあると思うが、プロのカメラマンがスタジオで撮ったものではなく、筆者が自宅リスニングルームで、一枚ずつ聴きながら、その都度撮影していったものなので、ご勘弁願いたい。なお、スペアナは必要ないと思われるものは省略した。

「レコード漫談」は何となく適当なテーマを決めて、雑談をしながらレコードを探していくという形式を取っている。よほどへんてこなテーマでない限り、そのテーマにつながるレコードは必ず見つかるものなので、至って気楽にやっている。むしろ音楽やレコードというものの幅の広さを認識して自分で驚いているくらいだ。

筆者の手持ちのレコードはほとんどが外盤である。国内盤も多少はあるが、メーカーから送ってきた試聴盤だ。自分で選んで買ったというものはない。もっとも外盤も特に選んで買っている訳ではなく、行き当たりばったりのまとめ買いだから玉石混淆、石の方が多い。

外盤にはメリットもデメリットもあるが、メリットだけ言うと、安い、音がよい、耐久性がある。古代から未来まで、レパートリーが格段に広い、廃盤が少なく、二十年、三十年前のものでも買える、ジャケットがきれい、と言ったところ。

筆者の場合、外盤はすべて東京のレコード店の店頭で買ったものであり、特に注文して取り寄せたというようなものは一枚もない。従ってこの本で取り上げた外盤は現在でも入手可能なはずである。国内盤の方はアッという間に廃盤になってしまうので、紹介したものも大半は入手不可能ではないかと思う。筆者の外盤偏重はそういった点も理由のひとつになっている。

なおこの本で取り上げたレコードは玉石混淆、玉はもちろん推薦盤だが、石には石でまた別の味もある。○○とハサミは使いよう。救いようがないと思っていたレコードが、ひょんなところで大いに役に立ったという経験も一度や二度ではない。最高と最低はどこかでつながっているのかもしれない。

- 前書きより -


長岡鉄男の外盤A級セレクション2

1985.10.15 共同通信社 ISBN4-7641-0173-4 C0373


最高のCDでも最高のアナログは越えられない!――オーディオ評論の第一人者が優秀録音・超優秀録音LPを選りすぐって、CD時代にますます価値を高めている独創的レコード・ガイド。聴きどころを詳述した"良いものだけを選んで10倍楽しむための100選。


続 長岡鉄男のレコード漫談 玉石混淆のレコード紹介240

昭和60.8.20 音楽之友社 ISBN4-276-20173-X C0073


この本の由来については第一集に書いたので省略。第二集ではスペアナの見方について説明しておきたい。正式にはリアル・タイム・スペクトラム・アナライザーと呼ぶ。入力信号を32のバンドパス・フィルターを通して分割する。

各バンドの中心周波数は20、25、32、40、50、64、80、100、125、160、200、250、320、400、500、640、800Hz、1、1.25、1.6、2、2.5、3.2、4、5、6.4、8、10、12.5、16、20、25kHz。それぞれのバンドのレベルを棒グラフの形で表示する。リアルタイムだから、絶えず激しく上下しているわけだが、ピークホールドをかけておくと、各バンドの最大ピークをつなぐ形で周波数特性のようなものが出来る。

このスペアナのピークホールドは三十分ぐらいホールド可能なので、レコード片面を演奏してのピークホールドも可能である。また二枚組、三枚組のレコードのクライマックスだけを拾ってつないでいくこともできる。こうして作られたスペアナの写真だが、何を示しているかというと、そのレコードを演奏して、少なくとも一回はこのレベルに達したということを示しているのである。

だから、たった一回のシンバルの強打で25kHzがピンを跳ね上がったというレコードもあれば、たった一回の演奏のイズ(足音、風切り音等)で20Hzがピンと跳ね上がったというレコードもある。しかし一般的にいえば、スペアナはfレンジ、Dレンジ、エネルギーをある程度示している。

レンジの広いソースはカートリッジにとってもスピーカーにとっても難物である。もう一つ、1kHzを中心とする中域のレベルの異常に高いソースもカートリッジには厳しいのである。カートリッジの振動系自体の共振というのはこの辺りにあるからだ。なお、第一集で使用した、スペアナは25Hz〜20kHzの30バンドのものだった。第二集のスペアナはこれにローエンド20Hz、ハイエンド25kHzを追加したものである。

第一集がそうであったように、第二集も玉石混淆である。グランプリ級のものもあれば、箸にも棒にも引っかからないひどいものもある。ただし、世の中何でもそうだと思うが、秀才、優等生だけが価値のある存在という訳ではない。天才、鬼才は落ちこぼれの中から出てくることも多いのである。それにどんなレコードも制作者にしてみれば苦心の力作のはず。誰一人かえりみないようなレコードにスポットを当てるのも良い功徳になると坊主は考えるのである。

- 前書きより -


長岡鉄男の最新オリジナルスピーカー工作20

昭和六十一年七月十日 音楽之友社 ISBN4-276-24030-4 C0073


スピーカー工作の本には、初心者向きにイラスト中心で構成した絵本感覚の物から、設計技術者向きの理論中心の物まで、何段階かあると思うが、本書はちょうど中間、中級者向きに、理論と技術と工作実例を一冊にまとめた物である。

実例はSTEREO、週刊FM、FMfan、別冊FMfan、オーディオ・アクセサリーの各紙に発表した新作中心で、いずれもこれまで単行本に載せられたことは無い物。説明は一応中級者向きになっているが、よく読んでもらえば初心者にも制作可能である。

ただ、スピーカ工作の本当の面白さは他人の設計した物を寸分たがわず作ることではなく、自分で設計して、自分だけの音を作ることにある。そのための助けになれば、と言うのが本書の第一の狙いである。

ユニットの性格、エンクロージュアの理論、ネットワークの設計法、木工技術等について、実践的にかなり細かく説明してあるので、電卓ひとつあれば誰でもスピーカーシステムの設計が可能と思う。また音作りのコンセプトについては実例の解説に詳しい、これも参考になると思う。

スピーカ工作のアイディアはもう種が尽きた、と筆者自身考えたのが5年前。ところが、その後も次々と新作を作り続けている。アイディアは手持ちが決まっていて、使い果たしたらおしまいというような物ではなく、うまく使えば、次から次へと湧き出してくる物らしい。

それはこの本の校了後も続いており、いずれ続編を出すことになるかもしれない。しかし、こういったアイディアはむしろ若い人の方が豊かなはず。きっかけさえあればアイディアは噴き出してくる。この本がそのきっかけになればと願い、読者の奇抜なアイディアに期待している。

- 前書きより -


長岡鉄男のいい加減にします Part I

昭和62.4.20 音楽之友社 ISBN4-276-35067-0 C0273


「いい加減にします I」は週刊FM誌の1982年No.6から83年No.14まで、35回連載された1ページもののコラムである。本誌の判型が変形B5と大型化してから、「いい加減にします II」となり50回連載、判型が変形A4と更に大型化してからは「III」となって現在連載進行中である。

このコラムの特徴は、連載としての一貫性が無く、主義主張も無く、支離滅裂、場当たり、日和見で、絶えず豹変し、面白マジメのはぐらかし、書き始めてからテーマとオチを考えるという即興性、といったところにある。もともと単行本にするつもりはなかったから、世相、ニュース、流行語、CMパロディをふんだんに取り込んでいる。5年経って読み返してみると、ハテ、これは何のパロディなんだろうと自分で首をひねる部分もある。云い足りない部分もあれば、云い過ぎた部分もある。

書き直したいという欲も出てくるが、このコラムはもともと日記帖的な性格も持っているので、これを書き直したのでは日記としての意味が無くなってしまうし、いい加減でもなくなる。そこで修正も追加も削除も無しに、原文のまま載せることにした。その代わり、一篇ごとに、解説とも云い訳ともつかぬ書き下ろしのサブコラムを付けることにした。このサブコラムもかなりいい加減なものである。

このコラムのもう一つの特徴として橋本金夢氏のイラストがある。いわゆる挿し絵ではなく、独立した漫画に近いもので、キャプションも氏の創作。筆者を肴にして、あるいはオモチャにして遊んでいる感じで、うまい、と手を叩くときもあれば、なるほどとうなづく時もあり、いい加減にしろと怒鳴りたくなる時もある。この時、氏いわく「いい加減にします」、で、このイラスト一切変更せずそのまま載せることにした。

- 前書きより -


長岡鉄男のスピーカー工作全図面集

昭和六十二年六月二十日 音楽之友社 ISBN4-276-24031-X C0073


初心者向きにイラスト中心の構成を採った「長岡鉄男の傑作スピーカー工作」全10巻、中級者向きに理論と技術と実例を一冊にまとめた「長岡鉄男の最新オリジナルスピーカー工作20」に対して、本書は純粋に設計図集の形を採った物である。

一冊で155機種の設計図がタイプ別、ナンバー順に集められているので、CPは非常に高いとも言える。その代わり何の説明もない。これで説明を付けたら百科事典なみの大冊になってしまう。どちらかというと上級者向きだが、中級者にも十分理解できる物と思うし、初心者でもネットワーク無しの物だったら、製作可能のはずである。また本書は索引としての用途もあり。エンジニアのためのヒント集としても役に立つと思う。

- 前書きより -


続々 長岡鉄男のレコード漫談 玉石混淆のレコード紹介240

昭和62.11.10 音楽之友社 ISBN4-276-20174-8 C0073


80年1月からスタートした「STEREO」誌の連載は未だに延々と続いており、単行本もついに第三集「続々」まできた。この次は「続々々」か「新」か、とにかく我ながらよく続いたものと驚いている。スタート当初はどういう形で進めるか、全く決まっておらず、行き当たりばったり、きわめていい加減にやっていたのだが、そのうちに毎号ひとつのテーマを決めて雑談を進め、テーマに関係のあるレコードを8枚選ぶというスタイルが定着した。

何故8枚かというと「STEREO」誌1ページ分の左端を縦に使ってスペアナの写真を入れると8枚入る。これで8枚に決めたという、至って単純な理由である。時にはスペアナは8枚でも、ジャケット写真だけは9枚ということもあったが、一応1テーマ8枚とすると、一年で96枚、二年で192枚ということになる。

ページ数との関係で今回は22テーマと言うことになったが、レコード枚数は約180枚。実は本篇、続篇、とも「玉石混淆のレコード紹介240」というのがサブタイトルになっている。当然、続々も240枚でなければならない。そこで新たに約60枚のレコードを追加することになった。

240枚は文字通り玉石混淆、外盤もあれば国内盤もある。AD(LP)もあればCDもあり、LDまで入っている。ディスクと名が付けば何でもこいである。

玉石の石の方にはそれこそ箸にも棒にも引っかからないような駄作もあり、こんな物を買う奴は日本広しと言えども俺一人ぐらいだろう、と思っているとこれが大間違い。レコード店で聞いた話だと、そういう駄作を是非買いたいと言ってくる客が結構いるということだ。

誰も買わないレコードというのは、そのことがひとつの価値になるようでもある。コレクター心理であろう。この本はそういう希少価値盤を探す上にも役に立つ珍本と言えそうだ。どうしようもないレコードまでわざわざ紹介しているという単行本は他にあるまいと、これだけは自慢(?)出来る。

- 前書きより -


長岡鉄男のスーパーAV ホームシアターを作る

1988.7.8 共同通信社 ISBN4-7641-0206-4 C0076


小学生の頃からSF(当時はSFという言葉はなかった)が好きで、たいていの本は読み、たいていの映画は見ている。戦前に見たSF映画に、H・G・ウェルズ原作の「来るべき世界」というのがあった。この映画に出てくる21世紀の世界、
明るい室内に大型のフラットスクリーンがあり、映写機も何もないのに映像が映っている。
これはいいなと思ったのが多分最初。以後も、SF映画の中で大画面AVに相当する情報システムをたくさん見てきた。

この本は、我が家にAVが入る日を夢見て30年、やっと実現したAVルーム、と言うよりはホーム・シアター製作の記録である。今、AVがブームと言われているが、オーディオ・システムの中に小型(30インチ以下)のテレビをはめ込む方式の、
いわゆるAVは過渡的な存在でしかなく、発展性は少ないと思う。

情報量から言ってVが主役になるべきであり、Vの大型化に伴い、
AVからVAへ、ホームシアターへと行くのが自然の流れ
であろう。どのような方式のVであろうと、ピュアオーディオの中にVを加えれば、ある程度の音質劣化は避けられない。最も劣化の少ない形でVを割り込ませたとすると、このVは所詮、一種の居候であり、いずれは追い出されてしまうだろう。Vを加えるには、音質劣化を補って余りあるほどの魅力がなければ意味がない。そうでないのなら、テレビはテレビとして別の部屋で見るのがよい。

VAの魅力は、
大画面とそれにふさわしいサウンドとの相乗効果による異次元世界
の現出、と言った所であろう。迫力の無い小画面を加えたことで音質が劣化するというようなAVでは、相乗効果はマイナスの方に働いてしまう。純粋に音楽を楽しむにはピュアオーディオの方がよい。現に母屋のピュアオーディオは、更に純化された形で残っている。VAは音楽にこだわることなく、新しい世界を切り開いていかなければならない。それがホームシアターである。

ホームシアターの主役は当然大型スクリーン(70インチ以上)である。まだまだ高嶺の花と考えている人が多いと思うが、現時点でもプロジェクターは140万円、スクリーンは10〜25万円(いずれも正価)で手に入るので、若い人たちが2年おきに車を買い換えていることを考えれば安い買い物とも言える。部屋も70インチなら10畳あれば間に合う。
21世紀の物と思われていたホームシアターが実はすぐ手の届くところにあったのだ。

プロジェクターはまだ安くなるだろうし、性能も向上するだろう。いずれはハイビジョンも出てくるだろう。それまで待とうと考えている人も多いと思う。それでも入れ物だけは早めに手当しておいた方がよい。これは安くなりっこ無いのだから。また、中には年齢の関係で、そういつまでも待っていられないと言う人もいるだろう。僕もその一人である。

- 前書きより -


長岡鉄男のいい加減にします Part II

昭和63.8.20 音楽之友社 ISBN4-276-35073-5 C0273


週F誌の連載の方はトータルではとっくに100回を越えてしまっているが、よくネタが続きますねと言われる。心配ご無用、ネタなんてものは一粒の麦と同じで、手元で暖めている限り一粒のままだが、地に蒔けばいくらでも増える。ネタは自己増殖するのである。良いネタだからと温存しておくのは一番下手なやり方。ネタを拾ったらすぐさま使ってしまう。ひとつのネタを使うと2つのネタが転がり込んでくる。2つのネタを使うと4つのネタが。かくてネタはネズミ算式に増え、ついには爆発する。核兵器なみである。

昔は10年一昔といった。今は10年も前の話というのは考古学の世界である。年々テンポが速くなる一方なので、5年一昔、3年一昔、今は1年一昔ではないか。1年前の出来事が、遠い過去の出来事のように思えてしまう。流行語もブームもあっという間に過去のものになってしまう。今回、第2期連載を読み返してみてもそれを感じた。エリマキトカゲのブームって何だったのだろう。

ただ、原稿のいい加減ぶりは少しも色あせていないので大いに意を強くした。第2期連載は当初編集部の意向で、使いこなしについての実用的な記事を書くと言うことになっていた。で、1回分だけはマジメに実用記事を書いたのだが、たちまち脱線して、元のいい加減路線に戻ってしまった。いい加減こそが文明人の真髄である。動物も機械もコンピューターもいい加減が出来ない。だから、まだしばらくは人類の支配が続くのだ。いい加減コンピューターが出てきたらおしまいかな!

- 前書きより -


長岡鉄男最新スピーカークラフト(1) スワンaとその仲間

1989.1.15 音楽之友社 ISBN4-276-24032-8 C0073


一切の説明を抜きにした図面だけの総集篇「全図面集」は予想外に好評で版を重ねているが、一方、図面だけではどこから手を着けて良いのか見当が付かない、収録機種数は少なくても良いから、わかりやすい説明付きの本も出して欲しい、自分で設計するための分かり易い設計理論も紹介して欲しい、と言う声が多く、先に発刊した「スピーカー工作20」の姉妹篇と言う形で本書が企画された。

内容としては「全図面集」に入っている物の中から、まだ他の単行本で取り上げていない物と、「全図面集」以後に設計製作されたニューモデルとを中心に、約40機種を選んで一冊にまとめる、と言うことで進行したのだが、やり始めてみるとページ数が膨大になり、一冊では厚くなりすぎるので二冊に分けることにした。やはり20機種くらいが手頃な数のようである。

本書には設計図だけで実際には作っていない、と言うような物は一機種も入っていない。しかも製作はすべて素人である各誌の編集者の手による物なので、初心者にも十分作れるということを実証した形になっている。なお、ユニットの理論、エンクロージュアの理論、計算式と言った物は「オリジナルスピーカ工作20」で紹介しているので、同じことをもう一度書くのもどうかと思って省略した。ただ共鳴管の理論は未紹介の理論なので後編で紹介することにした。

前編である本書にはBS(ブックシェルフ)を中心とした比較的小型のシステムを取り上げ、後編では共鳴管を含む大型システムを主に取り上げている。いずれにしてもメーカー製のブックシェルフやフロア・タイプのように、四角四面の箱にユニットが2、3個付いただけと言う平凡な物は一機種もない。スピーカー工作の最大の魅力は、メーカー製にないユニークなシステムへの挑戦にあると信じているからである。

- 前書きより -


長岡鉄男最新スピーカークラフト(2) フロア型と音場型

1989.3.15 音楽之友社 ISBN4-276-24033-6 C0073


「最新スピーカークラフト1」の続編というよりは、本来一冊にまとめるはずだったのが、ページ数が大きすぎて二冊に分けられたという物で、分け方も製作年代ではなく、主としてサイズで分け、1は小型システム中心、2は大型システム中心となっている。新しい方式として共鳴管システムが登場するのでその設計理論も紹介してある。

スピーカーはオーディオ製品の中で最も遅れている分野であり、考え方によっては40年間殆ど進歩が無いと言えるのである。素材面では振動板に金属、カーボン、ダイヤ、セラミック、プラスチックなどが使われて日進月歩とも取れるが、突然またパルプコーンが復活してきたりするのを見ると、40年間何をしてきたのだろうと考えてしまう。

メーカー製システムはここ数年、全メーカーが同じサイズ、同じユニット・レイアウト、同じ音の、箱型システムを同じ価格で発売するという、いかにも日本的な商法でやってきたが、最近少しずつ変化が見えてきた。

筆者の設計はメーカー製システムとは著しく異なったスタイルの物が多い。ことさら奇をてらっている、と思われても仕方がないが、決してそれだけではない。シビアに音を追求していったらこうなったというのが殆どである。実はメーカー製のシステムでも30年、40年前にはユニークな物がたくさんあった。トールボーイ、ローボーイ、衝立型、額縁型、球形、円筒形、行燈型、セパレート型、何でもあった。バックロードホーンもあったし、共鳴管に近い物さえあった。

各メーカーが個性を持っており、メーカーに所属するエンジニアも個性を発揮することが出来た。ユーザー自身も個性を持って選んでいたと思う。それが日本流の経済発展に伴って、安全第一、他人と違うことは避けるという方向が定着、画一化が浸透してここ数年のような状況になってしまった。今メーカーはそこから脱出しようとして努力している。メーカーのエンジニアが筆者に言ったことがある。「長岡先生は好きな物が自由に作れて羨ましい。宮仕えの身ではそれが出来ないのですよ」と。

ここに納められた20機種、それぞれはっきりした個性を持っている。その個性がユーザーの個性と一致した時は、最高のパフォーマンスを示す。20万円のシステムを捨てて「スワン」に換えたという実例もある。しかし、個性が全く相反していた場合にはD-70が3万円のメーカー製システムに負けると言うこともある。だから面白い。

- 前書きより -


長岡鉄男の外盤A級セレクション3

1989.6.16 共同通信社 ISBN4-7641-0221-8 C0373


今や希少価値さえ出つつあるアナログ・ディスク。愛用のレコード・プレイヤーは健在だが、それを生かす音のよいLPがほしい。最高のCDを越える最高のアナログ・ディスクはどれか?オーディオ、輸入盤の最高権威が自らの目と耳で厳選した優秀録音100選。好評の1・2巻に続く輸入盤LPガイドの決定版!最高のアナログを、手遅れにならないうちに集めておこう。


長岡鉄男のディスク漫談 玉石混淆のディスク紹介201

1989.10.15 音楽之友社 ISBN4-276-20175-6 C0073


CD、LDの時代である。LPレコードもADと改名した。レコードは死語になりつつある(賢人注)。もともとレコードという言葉は英米でしか通用しない。英米でもディスクという言葉を使う方が多いのではないか。フランスはディスクであり、イタリア、スペイン、ポルトガル等ラテン系はディスコである。そこで「STEREO」誌の連載も89年1月から"ディスク漫談"と改名することにした。

それにつれて単行本もディスク漫談に変わった。実は第4集を出す前にタイトルで苦労していたのである。"続々々長岡鉄男のレコード漫談"は頂けない。続、続々ときて突然"Part4"とするのも変だ。"新"を使おうかという提案もあったが、どこかの真似をしているみたいだ。いっそ連載と同時改名で"ディスク漫談"はどうだろう。それが良いと言うことで、連載よりも単行本からの発想でディスク漫談が決まったのである。

漫談の連載は80年1月だから完全に10年たった。10年も続けていると記憶も曖昧になる。一番困るのは新しく紹介するつもりのディスクが、実は数年前、あるいは10年前に既に紹介済みではないかという疑問が起きることだ。同じディスクを二度紹介したからってどうってことはないのだが、1枚1回限りを決めてスタートした連載なので、原則は守りたいのである。

今になって考えると、1回紹介したディスクはジャケット裏にシールでも貼っておけば良かったかなと思うのだが、当初は10年も続けるなんて予想もしなかったので、頭の中のメモリーで十分間に合うと思っていた。しかし10年も経つとそろそろ危なくなってきた。たまにディスクがダブることがある。単行本にまとめる段階で初めて気が付くという始末である。気が付いた物はちゃんと差し替えてあるから問題はない。

連載の時に入り切らなかったディスクの追加はいつもの通り。今回の新機軸は玉石のマークを付けたことである。玉石混淆は当初からの方針(と言うよりは偶然?)だが、どれが玉で、どれが石か、わかるようにしてくれという声もあり、今回は(玉)と(石)のマーク、それに(珍)も加えてみた。かなり点は甘くしたので(玉)が多く、(石)が少ないという結果になっているが、(石)を乱発して石でも投げられてはかなわないと思ったからである。

- 前書きより -

(注)長岡氏の使ったADという呼称は結局普及しなかった。レコードは生き残っている。


長岡鉄男のいい加減にします Part III

1990.4.10 音楽之友社 ISBN4-276-35083-2 C0273


「いい加減にします」の週刊誌連載を初めてから9年目に入った。もういい加減に止めろ、という声も聞かないので依然続行中である。

9年前はいい加減という言葉自体、決して良いイメージではなかった。9年経って世の中変わった。いい加減が市民権を得たのである。いい加減、適当、まあまあ、曖昧、ファジー、これが人間の本質であり、動物と人間の最も大きな違いである、と主張する人も出てきた。人類の中で最もいい加減な人種は日本人である。だからここまでこられた。

機械と人間の違いもいい加減さにある、と以前は思われていたが、最近はファジー理論の応用で、適当に処理することを覚えた機械が出てきた。一歩、最近のヤングはいい加減とか、適当とか言うことを知らないデジタル人間が増えたという話もある。未来はいい加減さを身につけた機械が支配し、人間は機械に使われる道具になるのではないか。これは決していい加減な話ではなく、本当にそうなると予想している学者もいるのだ。

- 前書きより -


長岡鉄男のスピーカー工作全図面集(2)

1991.7.25 音楽之友社 ISBN4-276-24034-4 C0073


前回の全図面集が予想外に好評で版を重ねているので、続編を出すことになった。基本的には前回と同じだが、今回は一機種ごとに設計の狙いや工作のポイントを簡単に解説している。これがどの程度プラスになるかは判らないが、多少、愛想の良い本になったのではないかと思っている。

今回取り上げた機種は、前回以降各誌に発表した物の他に未発表の新作もかなり多い。これについては順次雑誌で製作していく予定である。型番については前回説明した通りだが、更に整理して、DBとか、PSTとか、動作原理による型番はなるべく廃止するようにした。

前回無かった物として、組立工式があるが、1、2、3、4……と順次接続していくことを示し、かっこ内は先に組み立てておくことを示している。一応筆者の頭の中で考えた順序だが、必ずしもこれがベストと言うわけではないので、公式の順序にこだわる必要はない。

一番気にしているのは図面上のミスである。ナンバーが違っていたり、寸法が間違っていたり抜けていたり、と言うことがあるかもしれない。はっきり言って必ずあると思う。実は前回でも多くのミスがあり、読者から指摘を受けた。三年ぐらい経って発見されたミスもある。ミスをゼロにして出すのが本当だが、それは人間業では不可能ではないかと思う。ただ、ミスが少ないことを願うのみである。

- 前書きより -


長岡鉄男のいい加減にします Part IV

1991.9.10 音楽之友社 ISBN4-276-35094-8 C0273


永遠に続くかと思われた連載コラム「いい加減にします」だが、コラムより先に週刊FM誌の方が終わってしまった。当然コラムも終わり、になるはずだったが、いい加減の本領を発揮、AV月刊誌の「VISIC」に引っ越して続けることになった。

コラムには新聞の「天声人語」みたいに毎日というのもある。毎週というのもある。週刊FMのように隔週というのもあるし、月刊、季刊のコラムもある。ボクは毎日というのは書いたことはないが、毎週は書いたことがあるし、隔週はもちろんある。毎月もある。

どれでも同じかというと、実はかなり違うのだ。毎日か、毎週か、隔週か、毎月か、隔月か、季刊かで、テーマの選び方、書き方ががらりと変わる。実は「いい加減にします」も隔週から毎月に変わって、別にどうってことはあるまいと思っていたのだが、やってみるとずいぶん勝手が違うので驚いた。

コラムというのは毎日とか毎週とか、期間が短いほど、真価を発揮できるのではないかと思う。ホットなテーマをフルスピードで書き上げて素早く読者に提供する。これがコラムの真髄。だから一番良いのは、〆切までにぎりぎり一時間しかないというところまで追い詰められてから、泡を食ってテーマを決めて一気に書き上げることだ。

一行目を書きながら二行目を考え、二行目を書きながら三行目を考えるといったやり方で書き飛ばしていくと、いつの間にか最後のオチにたどり着く。始めからオチを考えて書くというのは失敗の元だ。

当然のことだが、急いで書いたものは急いで読むのが一番、十日も一ヶ月も経ってから読んだのでは気が抜けてしまう。では二年も三年も経ってから読んだのではどうしようもないかというと、これはまた違うのである。古い日記をひっくり返して読むようなもので、当時は気が付かなかった新しい発見があったりする。

- 前書きより -


長岡鉄男のディスク漫談(2)キメラの時代

1992.1.25 音楽之友社 ISBN4-276-20176-4 C0073


80年1月から開始した「STEREO」誌の連載は十二年目に入った。単行本も「ディスク漫談」としては二冊目だが、「レコード漫談」から通算すると五冊目である。

因みに「レコード漫談」と「ディスク漫談」の違いを説明しておくと、LPレコードが中心だった頃にスタートした連載のタイトルが「長岡鉄男のレコード漫談」、時代とともにCD、LDの出番が増え、「レコード」も死語になりかけてきたので「長岡鉄男のディスク漫談」と改称した。それだけのことであった何一つ変わっているわけではない。「ディスク漫談」になってからでもLPレコードは頻繁に登場している。レコードはむしろ日本語であって、欧米では昔からLPもディスクであった。

ところで五冊も出した漫談だが、筆者は何を訴えようとしているのか、またこれを読むことによって読者は何を得るのか。この際はっきり白状しておくが、何も訴えているわけではないし、高貴な思想も、遠大な構想もない。行き当たりばったり、まさに漫談そのものである。ためになる本なら、「工作」「A級ライセンス」「A級セレクション」といろいろ書いている。

何の役に立つのかわからない雑文と、ゲテモノディスクの大量紹介。それが書きたかった。こんな物誰が読んでくれるのだろうと思ったら、結構読んでくれる人がいる。こんなディスク誰が買うんだろうと思ったら、(石)印のディスクに人気が集まったりする。よく考えたらこれが本当の趣味の世界なのかもしれない。

- 前書きより -


長岡鉄男最新スピーカークラフト(3) バックロードの傑作

1992.12.30 音楽之友社 ISBN4-276-24035-2 C0073


これで何冊目になるのか、何百機種目になるのか、自分でもよくわからない。よくまあアイディアが尽きませんね、と言われるが、アイディアは井戸の水の様な物で、けちけちして汲み出さずにおくと腐ってしまう。汲み出しすぎると枯れてしまう。程々に汲み出していれば尽きることは無いのである。もし本当にアイディアが尽きてしまったら、MKII作りでもやるかと考えているが、まだ先の話であろう。

メーカーもせっせと新製品を市場に投入してはいるが、殆どがMKII、ヴァージョン、マイナーチェンジであって、それから見るとメーカーのアイディアはとっくに尽きてしまっているようだ。とは言いながらスワンは、スワンMKII、スワンa、スーパースワンとマイナーチェンジを作り続けている。これはいけると思った物はしつこく磨きをかけてみたいという気持ちはあるので、アイディアの枯渇とは別の問題である。

スピーカー工作、もう何年も前から問題になっているのはユニットの払底である。昔は良かったなあと思う。パイオニア、オンキョー、コーラル、テクニクス、ヤマハ、数え切れないほどのユニットが自由に使えた。今は数えるまでもないくらいのわずかなユニットでシステムを構成しなければならない。でも、必ずしも悪い面だけではない。物を作る場合、自由度が大きすぎるとろくな物は出来ない。枠は絶対に必要である。

コストの枠、サイズの枠、用途の枠、多くの枠にしばられて、その中で四苦八苦したときに素晴らしいアイディアが閃き、傑作が生まれる。枠を取り外してしまったらアイディアはしぼんでしまう。メーカー製でもそういう例はたくさんある。今のところはアイディアは有り余っているので、まだこの調子で行くが、いずれは音場スピーカーのMKII作りもやらねばなるまいと思っている。

長年工作をやっていて、読者からの反応も多数受け取っている。痛感しているのは反応の落差の大きさだ。同じスピーカに対し、低音が出過ぎて困るというクレームがあるかと思えば、低音が全く出ないと言うクレームもある。スーパースワンにしても世界一だと絶賛する人もいれば、焼却炉だとこき下ろす人もいる。この落差の大きさをどうするか。どうすることも出来ない。それが趣味の世界なのである。

- 前書きより -


長岡鉄男の日本オーディオ史 1950〜82

1993.10.30 音楽之友社 ISBN4-276-24101-4 C0073


オーディオは転換期にさしかかっている。どういう形の転換期なのか、人によって見方は違うのだが、僕は古き良き時代のオーディオが終わって、新時代のオーディオが芽生えつつある時期だと思っている。

オーディオと言ってもどこをスタートとするかで話は違ってくる。エジソンのロウ管蓄音機からスタートしたと見る人は多い。しかし、一般的に考えればオーディオというのはLPレコードとともに誕生したのではなかろうか。ステレオレコードが原点と考えても良い。SPレコードはオーディオとは別の次元でとらえたい。ましてエジソンはオーディオとは無縁の世界の人である。

僕自身、SPレコードとは無縁の人間である。LPレコードから入り、すぐステレオに飛びついた。そうしてアッという間に40年が過ぎた。オーディオの誕生に立ち会い、死を見取った人間の一人である。もちろんオーディオは永遠に不滅です(賢人注)。第一期オーディオブームは終わっても、第二期、第三期が待っている。

僕自身、第二期オーディオに首を突っ込んでいる。しかし、第一期オーディオの終焉を迎えて、知らん顔は出来ない。第一期オーディオと同時代を生きてきた人間として、オーディオ史のような物を書く義務があると感じた。

膨大な資料を駆使して、正確無比なオーディオ史を書くというような仕事は僕のようないい加減な人間にはできっこない。細部では誤りがあるかもしれないが、大きな流れは掴まえて全体像を浮かび上がらせるようにする、そういった方向で、資料としてのオーディオ史よりは、読み物としてのオーディオ史を狙ってみた。

細部での誤りはもちろんゼロにしたいし、それなりの努力はしたが完璧ではないと思う。完璧を期するといつまでたっても出せない。誤りは読者の指摘を待って、いずれ改訂版で訂正しようと気楽に考えて刊行に踏み切った。

僕は資料らしい物は殆ど持っていないが、製品カタログはたくさん持っている。これを主な資料として使い、文中の写真もすべてカタログから転載した。ただの製品写真と違って、メーカーの思い入れが強く出ており、説得力がある。

本書の内容は総論と各論に分かれているが、各論の中ではスピーカーとアンプにウェイトを置いている。オーディオとはスピーカーを鳴らすことであり、スピーカーを鳴らすのはアンプであるという考え方からだ。アンプに信号を供給するトランスデューサーは種々にあって栄枯盛衰、消えていく物もあれば、誕生する物もある。常に変わらぬ存在はスピーカーとアンプだけである。なおAVまで含めると切りもなく拡がってしまうので、本書ではAVには一切触れないことにした。

- 前書きより -

(注)実際には長島は「永久に不滅です」と言っているのだが、何故か流行語になった時には「永遠に不滅です」に変わっていた。


長岡鉄男の日本オーディオ史(2) アナログからデジタルへ

1994.12.20 音楽之友社 ISBN4-276-24102-2 C0073


前作「日本オーディオ史1950〜82」は一冊完結の予定だったが、スピーカー、アンプまで書き進めたところで予定枚数の大半を使い果たして、プレーヤー、チューナー、デッキ、CDについては駆け足で通り過ぎるだけになってしまった。もともとCDには触れるつもりは無かったのでサブタイトルも「1950〜82」となっている。

オーディオとはスピーカーを鳴らすことであり、スピーカーを鳴らすのはアンプであるという考えから両者にウエイトを置いた物で、これで完結しても良いかなと思っていたのだが、やはり続編が欲しいという声が多く、今回第二部として「アナログからデジタルへ」を発刊することになった。前作で触れた部分については再度触れることはしていないので、重複はないと思う。

前作は「カタログから見たオーディオ史」と言った側面を持っていたが、今回はそれを側面ではなく前面に押し出すことになった。カタログの採用が予想以上に好評だったからである。前作では文章にあわせてカタログを探すという作業だったが、今回はまずカタログを集めてしまい、それに合わせて文章を書くという方法を採った。使用したカタログの枚数も多く、見るオーディオ史にもなっている。

前作は「1950〜82」となっていたが、今回は「1950〜89」である。CD、AVまで含まれているからだ。90年代はそのまま現代に繋がるのでオーディオ史としては扱わないことにした。90年代までカタログで紹介していたら、単なる製品ガイドになってしまう。

前作同様、指摘される前に言い訳を書いておくが、歴史資料としては正確を期することが特に重要だが、これがなかなか難しい。たとえば年代は資料により、カタログによりずれがあり、迷うことが多い。価格はある時期、毎年のように値上げが行われ、同じ機種でも三通りの価格表示となっている物がある。

カタログ自体にもミスや誤植は多い。筆者の思い違いもある。一人でやっている仕事なのでいくら注意してもミスはゼロには出来ないと思う。ミスを発見された読者は遠慮なく指摘していただきたい。感謝してお受けしたい。

- 前書きより -


長岡鉄男のいい加減にします Part V

1996.2.10 音楽之友社 ISBN4-276-35128-6 C0273


「いい加減にします」の単行本は雑誌連載のものを一字一句変えずにそのまま転載し、これに蛇足を付け加えるという形式を取っている。ある年数が経ってから振り返ってみると、なるほどと感心したり、なにをバカなことをと呆れたり、感慨も様々である。それがポイントなので、本文と蛇足の間には5年ぐらいの間隔が欲しい。間隔が1年では蛇足の意味が無くなってしまうし、10年では遠くなり過ぎてしまう。

パート I は82〜83年の分をまとめて87年の発行、パートIIは84〜85年の分をまとめて88年の発行、パートIIIは86〜87年の分で90年発行、パートIVは88〜89年の分で91年発行。本文と蛇足との間隔がだんだん短くなってきており、このまま V を出すのは無理と考えて時が経つのを待つことにした。

今回の材料は週刊FM89年22号から91年7号まで38本と、「VISIC」に引っ越してからの92年11号までの19本、計57本の中から36本を選んだ。残りは21本なのでVIを出すことはない。V が最終号になる。89〜92年分を96年発行ということで、間隔としては良いところだろう。

ただ、今回の4〜7年という間隔は大きい。バブルを挟んでいるからである。バブル絶頂期から崩壊期へ、わずか5年で逆転、また逆転、かと思うと何一つ変わってはいない世界もあって、まさに世は様々である。個人的には年を重ねたということ以外、何も変わってはいない。

- 前書きより -


「喝!」長岡鉄男ダイナミックテスト 巻頭百五十言

1996.7.10 共同通信社 ISBN4-7641-0365-6 C0373


FM〔FAN〕誌に連載中の「ダイナミックテスト」は六百三十回を越えた。その前の「体験的製品ガイド」から数えると何百回になるのか。一九八三年の第十四号から「巻頭言」というか、「扉」のページにオーディオ時評的な物を書くようになった。改めて読み直してみると、上昇期のオーディオの勢い、バブルの影響、バブル崩壊後の凋落ぶりと、十数年間の流れが見えてくる。

この「扉」だけを一冊の単行本にまとめたらどうかという話が編集部からきて、どういう形にするかを考えた。実は「扉」の字数は同じではない。約八百字から千五百字とバラついている。そのまま文章を流していくと、ページの途中にタイトルが入ることになる。一回分を見開きにページに収めて、タイトルは必ず右肩に来るようにするにはどうすればいいか。

見開き二ページで、タイトルを別にすれば千三百三十三字はいる。長すぎる物はカットして千二百字以下とする。短いものはそのまま載せる。余ったスペースを生かして小文を付け加える。「扉」のページに対する自己批判である。

昔はこんなことを書いていたのか。昔も今もちっともかわらんな、予言が見事的中した、見事に外れた、ずいぶん進歩した物だ、まるで進歩しとらん、等々、ケースバイケースの無責任な感想である。これで右肩タイトル、見開き完結が実現する。そういうところにこだわるのは筆者の趣味である。

「扉」のコピーは八三年第十四号以降、全部が手元に揃っているが、テストリポートの見方や、測定方法の説明のような、単独では読み物にならない物は外して、九二年第五号までに掲載した物の中から百五十本を選んだ。「扉」の文章はカットした物はあるが、追加、変更は一切無し、すべて原文のままである。だから、同じようになってしまったタイトルの物もあるが、あえてそのままにした。

- 前書きより -


長岡鉄男のオリジナル・スピーカー設計術 こんなスピーカー見たことない

1996.10.1 音楽之友社 ISBN4-276-96029-X P9473


自分でスピーカーシステムを設計してみたいが、初心者向きの教科書はないか? という質問をよく受ける。残念ながら教科書はない。なんとベテラン向きの教科書もないのである。となれば書くしかない。

最初にお断りしておくが、筆者の設計法はすべて体験に基づいたものであり、完全に自己流である。正統的な理論とは必ずしも一致しない。スピーカーシステムが吸うのは空気であり、空気は時には気体、時には液体、時には個体としての性質を見せる曲者であり、それ自体1Lで1.2gという重さも持っている。一筋縄ではいかないのである。スピーカーづくりは職人の世界なのだ。

- 前書きより -


長岡鉄男のオリジナル・スピーカー設計術2 こんなスピーカー見たことない 図面集編

1997.10.1 音楽之友社 ISBN4-276-96041-X P9473


この本は、全図面集の3でもあり、「オリジナル・スピーカー設計術そんなスピーカー見たことない」の続編でもある。

全図面集は解説ぬきで設計図と板取り図を載せたものである。どうやって組み立てるのか、どんな音になるのか、説明が無いので初心者には不向き、上級者向きと考えていたが、意外と初心者にも好評で版を重ねた。そこで続編「全図面集2」を出した。

これにはちょっぴり解説も付けたが、1・2を通して感じたのは判型が小さいということ。図面が見にくい、板のナンバーが読めない、図面が何ページにもわたる、等々の問題が出てきたので、3はB5版のムックで行くことになった。

解説はより詳しく、さらにスペアナの写真も出来るだけ入れるようにした。といってもスピーカークラフト・シリーズのように徹底した解説を入れたら20機種しか取り上げられないので、あくまで全図面集プラス・アルファといった形である。

ここで設計術とドッキングの話が持ち上がった。設計術のポイントは「基礎知識」と「ユニット・データ」である。基礎知識は初心者向けの補足が必要と感じ、ユニットは新たに45機種を測定したのでそれを載せたい、ということでこの本が出来た。

- 前書きより -


長岡鉄男編集長の本『観音力』

1999.4.1 音楽之友社 ISBN4-276-96067-3 P9473


オーディオ歴五〇年
設計したスピーカー五〇〇台
AD、CD、LD総保有数五〇〇〇〇枚
奇才長岡鉄男による
長岡鉄男のすべてがここにある

「方舟」に乗ったら長岡まかせ───


読者が語る「長岡鉄男


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