『ボクはきらめき高校の生徒になりたいッ!』 
第3話

 なんだか……変な気分だ……。
 校舎は、現実で通ってる建物と同じだ。でも、校門には「私立きらめき高校」とか書いてあったし、おまけにこうやって階段を昇るオレの横には朝日奈さんがいる。そしてこの現実感はどうだ。もはやいつもの現実の方が夢の様じゃないか。そうだこれは現実なんだそうだそうだそういうことにしましょうよどうですかお客さん! あ、でもそれだと「夢だからだいじょぶ」という理由で虹野さんを襲えないぞってまだそーゆーこと言うかお前は>オレ。
「ちょ、ヒー君! どこまで行くつもりよ!」
「へ?」
 あれ、朝日奈さんは階段と廊下をつなぐ踊り場にいて、段の途中まで登っていたオレを見上げてる。
 おっと、アホなこと考えてたら行き過ぎちゃってたらしいぞ、と。え〜と、ここは何階だ? というかオレの教室は何階なんだ? 現実と同じ階でいいのだろうか?
 などと困惑するオレは、救いの手を求めるべく、なんとなく朝日奈さんのほうを見た。さすがにはっきりと「オレの教室はどこ?」などと聞くわけにはいかないだろう。
 困惑している雰囲気を最大限かもしだしてる(つもりの)オレを見て、朝日奈さんは肩をすくめた。
「はぁ。ヒー君今日どうしちゃったの? なんかすっごくボケてない? あんたの教室はアッチっしょ!」
「わかってるって。ちょっと考え事してただけだよ」
 オレはそう言いながら登り過ぎた階段を降りた。
 なるほど。オレの教室はアッチ……と。お、そういえば虹野さんの教室はどこなんだろ? オフィシャルだとE組だけど……。
「朝日奈さん、虹野さんの教室ってどこ?」
「え、誰?」
「え、だから虹野さん虹野さん」
「虹……って、誰だっけ?」
「ほら、サッカー部のマネージャーで、髪が短くて」
「あ〜、あの娘ね。えっと、どこかな?……ゴメン、わかんないや。私、あの娘とあんまし話したことないのよねぇ。でもあれっしょ、私なんかよりヒー君の方がよっぽど仲良くない? あ、その前にサッカー部のマネージャーだったら、ヒー君、同じサッカー部でしょーに。なんで知らないのよ」
「え、あ、そうね、なんでだろうねぇ、はは、ははは……」
「ま、いいけど。んじゃ、あたしは行くね。あ、お昼、忘れないでね〜」
「お、おう……」
 ちょっと凄味をきかせると、朝日奈さんは自分の教室へ行ってしまいましためでたしめでたし、と。それにしても、これはオレの知ってる朝日奈さんじゃねえよ。って悪かったな>筆者。
 そうか。こういう質問もつじつまが合わなくなるのか……。気をつけねば。あんまり挙動不審だと、周りに変人だと思われて白ビル送りとかにされそうだからな。夢とはいえ、虹野さんにまで白い目で見られるようなことになったら……

虹野:ヒムロ君って挙動不審者で変質者で変態だったなんて最低よ!!>ヒムロ(裏声)
秋穂:そうですよ虹野先輩こんな挙動不審で変質者で変態で最低な先輩のことなんか無視して、2人だけでいいコトしましょうよぉ〜!>ヒムロ(裏声)
虹野:そうね! 2人だけでいいコトしようねみのりちゃん!>ヒムロ(裏声)
秋穂:先輩!>ヒムロ(裏声)
虹野:みのりちゃん!>好雄(裏声)

 …………ん?
「どわっ! 」
 突然、オレの眼前に男の顔が! オレの妄想モードは強制終了してしまった。あ、コイツ、どっかで見たことある顔だな……。
「あのな〜。お前は廊下でな〜にやってんだ。それはオレの持ちネタだろうが」
「……あー、えっと、誰だっけ?」
「おいコラ、大親友であるこの好雄様の顔を忘れたのかよ!!」
 そうだ好雄だ。うーん、どうも実体化すると誰だかわからなくなるなあ。一発でわかったのは今のところ虹野さんだけだな。くそう、読者はとっくに好雄だってわかってるに決まってるから、いつまでも好雄と気づかないオレを嘲笑ってやがんだぜきっと!
「おい、なにブツブツ言ってんだよ」
「ま、気にすんなよ。それより好雄、お前こんな時間になにやってんだよ?」
「それはお互い様だろう」
「なんだ遅刻か」
「そうだよ。どうせお前だって遅刻なんだろ。偉そうに言うなよな。でも珍しいな、お前が遅刻なんて」
 うーん、どうも現実のオレとギャップがあるぞ。こっちのオレはけっこう優等生みたいだなあ。
「ちょっと寝坊したんだよ。それよりさあ、オレのこと"お前"じゃなくて名前で呼んでくれない? どっちがしゃべってんのかわかりにくいからさ」
「なんのことだ? 変なヤツ。ま、お前がそう呼んで欲しいってんなら別にいいけどよ」
 キーンコーンカーンコーン。
 突然、鐘の音が校舎に響いた。それと同時にすべての教室から生徒がいっせいに廊下に溢れ出てくる。授業が終わった様だ。
 カバン持って廊下に立ってるオレ達は、おもいっきり「遅刻しました」と言ってる感じだな。みんなの視線はオレ達に釘づけだ。ようするにチラッとこっちを見て「あ、コイツ遅刻だ」と思うのだ。
「おいヒムロ。お前のせいで授業終わっちまったぜ」
「オレのせいにすんなよ。お前は今来たばっかりだろうが。第一、途中から出たって単位貰えねえんだからいいじゃねえか。それより教室に入ろうぜ」
「そだな。お、詩織ちゃんおっはよ〜!」
 好雄は、教室から出てきた1人の女の子にバカ丸出しな口調で話しかけた。
「あ、おはよう。もう、2人揃って遅刻なの? しょうがないんだから」
 その女の子は高校生とは思えない物腰で微笑んでいる。
「いやぁ〜、詩織ちゃん、いつもかわいいねえ」
「やだ、好雄君ったら。おだててもなにも出ないわよ。ふふふ……」
 サラサラのストレートヘア。黄色いヘアバンド。
 そうだ。好雄のそのいやらしそうな声の先にいたのは紛れもなく、あの藤崎詩織だ。
 そして、「詩織」という言葉に無意識に構えてしまう、典型的なときメモラーのオレなのであった……。

続くの!?

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