今日はみのりちゃんの誕生日!
渉部:ども、隠れみのりちゃんファンクラブ『KAKUREMINO』会長の渉部です。
秋穂:……秋穂みのりです。
渉部:今日はなんと! みのりちゃんの誕生日!!
秋穂:はぁ。そのせっかくの誕生日に何が悲しくて先輩といなくちゃいけないんだか……。
渉部:そう言わないでさぁ。ね、楽しく行こ、楽しく。
秋穂:まあ、いいです。でも、先輩? 約束どおり、お昼ご飯1週間先輩のおごりですからね。あと、今度の日曜日は先輩のおごりでケーキ屋さん巡りですから。すっぽかさないでくださいね。
渉部:うう、今月厳しいぞ……。まあ、誕生日プレゼントって思えばいいか……。
秋穂:そうですよ。このとってもかわいい私が誕生日の貴重な時間を先輩に割いてあげるんだから、そのくらいしてもらわないと。ケーキ屋さん巡りだって、ほんとは虹野先輩も一緒に行くところを、私だけにしてあげてるんですからね。感謝してもらわないと。
渉部:はいはい、ありがとうございます。
秋穂:だから二人きりで行くって言っても変な誤解しないでくださいね。
渉部:わかりましたって。
秋穂:ところで先輩? 『KAKUREMINO』ってなんですか?
渉部:最初に言ったように、隠れみのりちゃんファンクラブのことです。
秋穂:なんで"隠れ"なんですか? 堂々と応援を……まあ、それはそれでイヤですけど。
渉部:これはまあ、ファンクラブ入会条件が「実はみのりちゃんも好き」という人に限られるからです。
秋穂:「〜も好き」ってことは他に誰か好きな人がいるってことですよね。しかも私はその人の次以降ってことですよね。
渉部:そうなるね。
秋穂:なんか、すっごく気分悪くなるファンクラブですね。
渉部:それを言われちゃうと……申し訳ない……。
秋穂:まあ、いいですけどね。第一「私を1番好き」なんていう人、いるとも思えませんし。
渉部:そんなことないと思うけど。
秋穂:先輩が言っても説得力ないですよ。現に先輩がそうなんですから。
渉部:ほんと、申し訳ない……。
秋穂:ま、先輩に好かれてもしょうがないし。それに、先輩が好きなのって虹野先輩でしょ。だったらそれが普通ですよ。
渉部:いや、でも、渉部はみのりちゃんも好きなんですよ、マジで。だから今日だってこうやって誕生日のお祝いを……。
秋穂:だからいいんですって。気にしないでください。私だって、誕生日を祝ってもらって悪い気はしないし。そのかわり、ちゃんとお祝いしてくださいね!
渉部:もちろん。
秋穂:あ、じゃあ、食べ物と飲み物買いに行きましょうよ。ケーキもないなんて大問題です! あ、もちろん全部先輩の
渉部:おごりですよ……。
女子っ子ってなんであんなに菓子好きなんですかね
ドサドサドサドサドサッ!!
渉部:ちょ、ちょっと買い過ぎじゃないか?
秋穂:多めに買ったのは虹野先輩の分に決まってるじゃないですか。さ、虹野先輩を呼びに行きましょう!
渉部:ストップストップ! 待ってみのりちゃん!
秋穂:え、なんでですか? まさか先輩、二人っきりでお祝いしたい、なんて言うんじゃないでしょうねえ。
渉部:虹野さん、今ちょっと用事があるからあとで来るって。
秋穂:用事? そうなんですか。なんだろ、用事って?
渉部:体育祭の実行委員の仕事だとかなんとか……(まさか数学の小テストの成績が悪かったから補習で残されてるなんて言えないし……)。
秋穂:そっかぁ、私も実行委員になっておけば良かったなあ。そうすれば今頃、虹野先輩と二人っきりで……。
渉部:二人っきりってことはないと思うけど……。
秋穂:あぁもう。先輩、そういうこと言わないでくださいよぉ。せっかく人が……。
渉部:んじゃあ、ケーキは虹野さんが来てからでいいよね。
秋穂:そうですね。じゃあ、とりあえず乾杯しましょう! ほら、先輩! ぼさっとしない。当然、先輩が注ぐんですよ。今日は私の誕生日なんですから。
渉部:はいはい、みのりお嬢様。
トクトクトク……
渉部:それじゃ、かんぱーい!
秋穂:かんぱーい!
渉部:みのりちゃん誕生日おめでとう!
秋穂:一応、ありがとうございます。
渉部:あのね。
秋穂:冗談ですよ、冗談。さてと、いっぱいお菓子買ってきちゃったからがんばって食べなくちゃ私「ホッキー」大好きなんですよ思わず10箱も買っちゃいましたでもさすがにちょっと買い過ぎだったかもしれませんね、あ、そうそうほらこのクッキーも外国のですっごくおいしいんですよでも高いから普段はあんまり食べられないんですけど今日は先輩のおごりだから問答無用で買っちゃいましたしかも2箱も、あ、このスルメ買ったの先輩でしょなんでこんなの買ったんですか今日は誕生日会なんですからこんなの買わないでくださいよ先輩ちゃんと責任もって全部食べてくださいね、あ、そういえばこのチョコも買ったんだったこれもおいしいんですよね先輩食べたことあります?食べたことないなら絶対食べてみてくださいほんとおいしいですからでも今日はこれ1個しかないから今度自分で買って食べてくださいね、あ、そうだなにか足りないと思ってたらマシュマロを忘れてたんだ私あれすっごく好きなんですよ友達とかってみんなあんまり好きじゃないって言うんですけどどうしてなんでしょうねふわふわしておいしいのに先輩マシュマロ好きですか?あ、でも先輩がマシュマロ食べてる姿はちょっと想像できないですね男の人でマシュマロが好きっていうのもなんかちょっと怖い気しますし、あぁっ!ポテチが梅味じゃなーい!そんなぁ!なんでコンソメなんて買うんですかポテチは梅味って決まってるんですよ先輩わかってないですねえ、まあ、言い忘れた私も悪いんですけど、あ、梅味あるじゃないですかなーんだよかったぁやっぱりポテチは梅味ですよね先輩ちゃんとわかってるじゃないですか誉めてあげますでも先輩はそのコンソメ味食べてくださいね梅味は私が食べますから、あ、梅味と言えばこの前優美ったら私が買ってきた梅味のポテチ全部食べちゃうんですよ人が楽しみにしてたのにでもまあ、そのあとお詫びにジュースおごって貰ったんですけどねジュースと言えば先輩紅茶ってなに飲みます?缶の紅茶ですよ私は断然「ポコー」ですね「ポコー」のミルクティーが好きなんですよ冬なんかもう最高ですよクラスの子はレモンティー派が多いんですけど私レモンティーってなんか好きになれないんですよねでも虹野先輩はレモンティー好きなんですよそう考えると私もレモンティー派にならなきゃとか思うんですけどなんでよりによって虹野先輩レモンティー派なんだろ虹野先輩は絶対ミルクティーの方が似合うと思うんですよ先輩もそう思いません?
渉部:…………。
行き当たりばったりで書くとやっぱつらいなあ
秋穂:あれ、先輩食べないんですか?
渉部:いや、なんかすごいな……って思って。
秋穂:なにがですか? 変な先輩。
渉部:みのりちゃん、サッカー部のほうの調子どう?
秋穂:え、うん、まあ、えっと……どうなんでしょうね? 虹野先輩は「みんながんばってるね。これなら今度の大会はきっと勝てるわ!」って言ってましたけど、実は私、まだサッカーのこと、あんまり良くわかってないんですよねえ、あはは。だから正直なんとも言えません。でも、みんながんばってるのはわかりますよ。あ、良くわかってないって言っても、サッカーのルールくらいは覚えましたけどね。
渉部:マネージャーの仕事の方はどう? 虹野さんは「みのりちゃんすっごくがんばってるよ」って言ってたけど、自分ではどう?
秋穂:一応、私なりにはがんばってるつもりです。でも、虹野先輩にはまだまだ追いつけないって感じですね。虹野先輩が卒業するまでには、追いつけなくても近いところまでいければって思ってるんですけど、なかなか……。あ、マネージャーと言えば聞いてくださいよこの前練習試合があったんですけど相手校、えっと、名前は……あぁ忘れちゃいましたけどとにかくその学校に練習試合で行ったんですよそしたら試合終わってすぐに相手チームの選手が1人ウチのベンチに来たから何の用かなって思ったら虹野先輩を呼んでくれって言うんですよ私イヤな予感がしたから二人のあとついていったらその人虹野先輩に告白しだすんですよ信じられます?私持ってたボールを投げつけてやろうかと思ったんですでも虹野先輩すぐにその話を断ってこっちに戻ってきたんで私も戻りましたけどまったくなに考えてるんでしょうねその男がまたカッコ悪いんですよっぽど先輩の方がマシですよ、あ、だからって先輩がカッコいいって言ってるわけじゃないですからねとにかく虹野先輩ってそういうことけっこう多いんですよなんか他校にも虹野先輩のファンがいるみたいでだから練習試合はほんと気が抜けないんですよね部のためには練習試合しなくちゃいけないんでしょうけど虹野先輩のことを考えると正直あんまり練習試合とかってしてほしくないんですよねやっぱ先輩もそう思うでしょそれと学校によってはマネージャーが睨んできたりするんですよ、ほら、その、やっぱりトイレとかですれ違ったりするじゃないですかそれですれ違いざまに思いっきり睨んでくるんですよ私もう頭きちゃって文句の1つでも言ってやろうかと思うんですけどさすがに虹野先輩がいる前でケンカするわけにもいかないから我慢してますでもほんと虹野先輩がいなかったら絶対ケンカになってると思いますよそれでそういう睨んでくるマネージャーに限って試合が終わったあとに沢渡君に告白しにくるんですよ勝手にライバル意識持たないで欲しいですよね私は沢渡君のことなんてなんとも思ってないのにだからそういう場合は帰りがけとかに沢渡君になにかおごらせてるんですいいでしょ〜えっとこの前は確かお好み焼きだったかな、あ、駅前にできた新しいお好み焼き屋行ったことあります?けっこうおいしいですよそうだ今度先輩一緒に行きます?
渉部…………。
感じ出てます? はっきり言ってネタ切れだ!
秋穂:な、なんか、のど渇きましたね。
渉部:ま、まあ、それだけ一生懸命しゃべってれば、そりゃね。
秋穂:あ、すいません。なんか、私ばっかりしゃべって……。
渉部:いや、いいよ。けっこう楽しいし。
秋穂:私、しゃべり出すとなかなか止まらなくって……。私も、もうちょっと落ちつきが欲しいですね。いつでもすごく落ちついていられる虹野先輩がうらやましい……。
渉部:え、そう? 虹野さんってけっこうあわてんぼうなところあると思うけどなあ。
秋穂:そうですか? う〜ん、私と先輩の前とではやっぱりちょっと違うのかなぁ。あ、このチョコおいしそう。
渉部:「マネージャーの仕事をしっかりやらなきゃ」って責任感があるから、やっぱり普段より落ちつきがあるんじゃないのかな? よくわかんないけど。それよりみのりちゃん、そんなにお菓子ばっかり食べて、太ったりニキビできたりしないの?
秋穂:私、食べても太らない体質みたいで、みんなにもけ、っこう…羨ましがられ、ますね。ニキビも……ヒック……あんまりでき、ないしヒック……。
渉部:み、みのりちゃん!?
秋穂:な〜んか、景色が……グールグルグールグル回ってキャハハハハハハ! 先輩の顔変な顔〜ヒック!
渉部:う、酔っ払ってるのか!? 酒は買ってこなか……あ、もしかして……このバッカスチョコ!?
秋穂:う〜! コラーわたるべぇ! ちょっとそこにすわれ〜!
渉部:み、みのりちゃん大丈夫? なんでバッカスチョコなんかで酔っ払うんだよおい。
秋穂:……だいたいねえヒック……なんで、わたしが、2ばんめなんだあ〜! そんなににじのせんぱいがいいか〜! わたしだって……わたしだって……にじのせんぱいだ〜いすき〜! キャハハハハハ! あ〜もういっこチョコたべよ〜っと!
渉部:ああっ! みのりちゃんはもうそれ食べちゃダメだって!
秋穂:うっさ〜い! そんなほうりつないぞ〜ヒック! にじのせんぱいはよヒック、くてわたしはたべちゃダメっていうの〜!?
渉部:いや、そういうわけじゃ……。
秋穂:わたしだってね〜、これでもサッカーぶの……マネージャーなんだぞ〜! チョコくらいたべさせろ〜! みんなしてにじの、にじのって〜! わたしはサッカーぶのなんなんだ〜! マネージャーだ〜! キャハハハハ!
渉部:み、みのりちゃん落ちつこ? ね?
秋穂:せんぱ〜い! じつはわたし……ヒック! せんぱいのこと……。
渉部:み、みのりちゃん!?
秋穂:バカだとおもってま〜す! キャハハハハ……ZZZZZZ…………。
渉部:い、いったい、なんだったんだ……。
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