小さい牛追い    岩波書店 岩波少年文庫 (2005/10)

牛追いの冬    岩波書店 岩波少年文庫 (2006/2)
                   
                  マリー・ハムズン(著) 石井桃子(訳)  

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ノルウェーの牧場はワクワクすることでいっぱいです, 2008/10/10

北欧ノルウェーには夏と冬しかないようです。この本では、冬が去ったと思ったら天国のようなすばらしい日々が来て、ランゲリュード牧場の子どもたちは牛や山羊たちと自然の中で跳ね回ります。そうした子どもたちの夏は、夏休みの山の牧場での牛追いの日々、森の中の冒険や子牛の誕生や誰彼の誕生日、宗教儀式など、刺激に満ちた毎日です。街の子供も来て、満足して帰ってゆきます。秋が来ると冬は一足飛びです。

ノルウェーの牧場の冬は、相変わらずワクワクすることでいっぱいです。夏に山の森で出会った少女が近くに住むことにもなります。いなくなった猫も雪を逃れて近所の家にいたりします。クリスマスやボーイスカウトごっこなど、雪の下でも楽しいことがいっぱいです。今の日本の子どもたちは、とてもこのような日々を送ることは出来ないでしょう。でも、本の中でなら、こんなすばらしい別世界を経験できるのです。

子どもたちの生き生きした日々を、作者のマリー・ハムズンは、客観的な描写をしつつも温かく包み込んだ筆致で貫いています。生き生きした子どもたちの毎日や子どもたちを取り巻く大人の愛情ある対応ぶりは、この本を読んだ子どもたちに、生きていく上で大切な何ものかを強く印象づけるに違いありません。その証拠に、私は、この本からそういうものをもらったことを50年以上昔のことですがよく覚えています。

自然の動植物に接することの少ない都会の子供にも、それらに囲まれている田舎の子供にも、この本の描き出す人と自然とが織りなす豊穣な世界、ノルウェーの牧場の日々を是非味わってもらいたいと思います。

1章々々が、あまり長くないひとまとまりのエピソードとして書かれております。ですから、長いものを読み慣れない小学生にも読みやすいし、お父さん、お母さんによる読み聞かせ用としても良い仕組みの本だと思われます。

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