統計学を拓いた異才たち
・・・経験則から科学へ進展した一世紀
デイヴィッド サルツブルグ(著) 日本経済新聞社 (2006/03)
数理統計学に、こんなにおもしろい側面があったのか, 2006/8/25
今につながる数理統計学の流れを、それらを拓いた学者を前面に出して紹介する好著。時代としては主に19世紀末からほぼ100年余なので身近な題材が多い。なぜ、この手の本が今まで無かったのか、不思議なほどに、あって然るべき本。
現代統計学を築くフィッシャーの話題から始まって、分布の話、ステゥーデントのt検定、実験計画法の完成、ベイズ理論、確率過程、探索的データ解析、統計的品質管理、医療の解析等々、現代統計の主要な流れを、それを築き発展を担った学者のエピソードをふんだんに紹介しながら数式なしでたどって行く。フィッシャーとピアソンの確執も興味深く読める。数理統計を実務の勉強として苦行してきた人は、この本を読むと、数理統計学にこんなにおもしろい側面があったのか、と改めてうれしくなるに違いない。
著者が、製薬会社という応用統計の現場で長く働いてきた学者だけに、フィッシャーの分散分析が農業の場から生まれたこと、その後も、医療や工場などで社会に役立つ学問として発展してきたとする立場は説得的で好もしく読める。しかし、流れの中でひとつ、多変量解析の流れがわずかしかおもてに現れないのはなぜだろう。