陶土の基礎知識 土を探る―土作りから焼き上がりまで
季刊「炎芸術」編集部著
陶土のすべて、入門編, 2006/4/13
陶芸では「一焼き、二土、三細工」と言われるそうだが、そのうちの土に焦点を当て、その空間的広がり、時間的長さ、その中での奥の深さを何人かの新旧陶芸家の話なども引きながら紹介してくれる。陶土ハンドブック入門編である。
各地の現役陶芸家が、ご自分の土観を披露するのはこの本の第一の特徴。ついで、陶土とは何か、のさわりを示し、陶土用の土の練り方、作り方の基本を示す。陶芸の現場も少しだけだが訪ねた後、わが国の主な陶土を比較してその多様性と主な性質を分からせてくれる。加藤唐九郎さんなど歴史的名工の土観も簡単にたどれ、遺著の紹介も。世界の陶土の短い紹介、全国の陶土販売店の紹介もある。
ところで、上記の加藤さんは、「一にも、二にも、三にも土。土は生きており、その土と話をしていた」ようであるが、これはすごいことだと思う。
ところで、「はじめに」で、陶土についての本が出ていないのでこの本を出したとあるのだが、ほとんど信じられない。農業の土、建築材料の土は、昔から世界中で人々に親しまれてきたが、陶器類は、できあがったものが、焼かれたために土の顔とはずいぶん違ってしまっているせいか、専門化以外には土としてあまり意識されていないのかも知れない。陶芸、農業、建築等、全ての土を延べて論じた本など、あっても良いのではないか。しかしその前に、土の学問が、それらの分野を横断して世に存在するのか、どうか、それが問題かも知れない。