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平和はアジアから?
・・・東南アジア友好協力条約(TAC)の発展

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【要約】 紛争の平和解決、武力行使の禁止などをうたった「東南アジア友好協力条約」(TAC)がつくられ、中国、日本、米国、EUを含め54カ国も参加した安全保障の枠組みとして発展しています。

【概要】 ASEANが1976年の第1回首脳会議で採択した条約。 国連憲章、バンドン会議(1955年のアジア・ アフリカ会議で採択)にのっとり、独立、主権、平等、領土保全の尊重、内政不干渉、紛争の平和解決と武力の不行使などを原則としています。

1987年にASEAN域外の国々に開放され、ASEAN全加盟国の同意を得てTACに加入できることになりました。

TAC加入国はEU加盟諸国を含め54ヵ国になり、世界人口の約70%を占めます。TAC加入は東アジア首脳会議(EAS)参加の条件の一つとなっています。

【加入国数の変遷】

域内
1976年 5 インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ
1984年 6 ブルネイ
1992年 8 ベトナム、ラオス
1995年 10 カンボジア、ミャンマー

域外
1989年 1 パプアニューギニア
2003年 3 中国、インド
2004年 7 日本、パキスタン、韓国、ロシア
2005年 10 ニュージーランド、オーストラリア、モンゴル
2007年 14 東ティモール、フランス、バングラディシュ、スリランカ
2008年 15 北朝鮮
2009年 17 アメリカ、欧州連合
2010年 19 カナダ、トルコ
 
合計  29(54ヵ国)

【近未来の課題】
 米国、ロシア、中国、インドという大国が参加する場で、いかにASEANが地域協力の「運転手」の役割を発揮するのかが問われます。

たとえば、紛争解決:
 地域の平和と安定を目指すASEANはいま、内部でタイとカンボジアの国境紛争を抱える一方、対外的には南シナ海問題(「南沙諸島( スプラトリー)問題」)への対応を迫られています。

 タイ・カンボジア紛争では、ASEANの委任によるインドネシア監視団の紛争地域派遣が決まっていますが、タイ軍部の反対で進展がみられません。

 ASEAN高官は、「この紛争はASEAN共同体実現の障害になりかねない。ただ、ASEANの関与によって解決に向かえば、むしろ地域統合に良い影響を与えることになるだろう」と言います。(2011年4月)

 南シナ海問題では、中国と東南アジア各国が南沙諸島などの領有権を争っています。米国は昨年「南シナ海の自由航行は米国の国家利益」だと表明しました。この問題に関与する姿勢を見せており、大国間の対立を呼び込みかねない状況です。

 本年4月のASEAN外相会合(非公式)は、EASでは南シナ海問題を単一の議題とするのでなく、テロや国際犯罪も含めた「海洋問題」として議論する方向で一致しました。南シナ海問題が突出することで対立が先鋭化することを避ける考えです。


関連して、昨世紀後半から、世界の軍事同盟がなくなってきています。その先鞭を付けたのが、東南アジア条約機構の解消でした。ここでも、アジアが世界平和への先頭に立っていることになります。

そこで、軍事同盟が、どのように減ってきているのかの概要を見ておきます。

【軍事同盟の変遷】

       軍事同盟加盟国数      同左人口
1960年    52ヵ国(53%)      20億4000万人(67%)
2009年    31ヵ国(16%)      10億8000万人(16%)

現存する軍事同盟
 北大西洋条約機構(NATO)
 日米軍事同盟
 米豪軍事同盟
 米韓軍事同盟

解消された軍事同盟(年は、解消などの時期を示す)
 東南アジア条約機構(SEATO)       1977年
 中央条約機構(CENTO)           1979年
 アンザス条約(ANZUS)            1986年機能停止
 米州相互援助条約(リオ条約)       事実上機能停止
 ワルシャワ条約機構             1991年
 中ソ友好同盟相互援助条約        1980年
 米・フィリピン相互防衛条約         1991年

残っている軍事同盟は、いずれもアメリカの関係するものです。ワルシャワ条約機構の消滅以後も世界でのアメリカの地位が低下しており、今後の成り行きが注目されます。

(2011年9月8日記)

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