新幹線の車内清掃をてきぱきとする小母さんたち

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新幹線に乗るといろいろなことに気づく。今日は、ちょっとの間、車内掃除の小母さんたちの手際の良さに見入ってしまった。

各号車の入り口に、彼女たちはピンクの制服に大きな白い布製バックを肩にして、折り返し運転の車両が止まって乗客が皆降りるのを待ちかまえている。お客さんが早く降りろと内心では待ちかねているので、最後と覚しき客が降りるとさっと車内に入る。バッグを1番A席に置くと、作業にかかる。

箒で椅子の背や座部を掃いて回ったり、窓枠や肘掛けなどに雑巾がけをし、枕カバー(?)を取り外し座席の向きを進行方向に反転させ、新しいカバーを3人掛け、2人掛けごとに数を合わせて配ってから、改めてひとつづつマジックテープで固定する。何れの作業も、もちろんマニュアルに沿って進められているはずであるが、実に手際よい。たとえばマジックテープでの固定は、移動距離が最短になるように工夫されているらしく、1,2番座席を例にとれば、2番C,B、A、1番A,B,C、D、E、2番E、Dとやって3,4番に移る・・・。

しかし、マニュアル作業は万全でなく、ときにちょっとした漏れが生ずる。別の時だが、新幹線での小さな経験を紹介しよう。窓側席に座っていて、たまたま、肱を窓枠の小棚に載せた。そこには、しばしばお茶のペットボトルなどを載せる。肱を載せた途端、小棚がひどくべたべたする。よく見たら、先客が飲み物でもこぼしたらしく、そのうえ、おおまかにぬぐっただけという感じで、端がほんの少し高くなっているその陰が良く拭けておらず、おまけに黒い汚れが付いている。その下の肘掛けも同じようにべとべとしている。かなりしつこい汚れでティシュペーパーごときでは取れない。そこで、たまたま弁当と一緒にもらったおしぼりでごしごしごしごし拭いてようやく取れた。上のような流れるような作業では、この汚れは拭き取られないで終わってしまう。

この程度のことは、あまり多くはないだろうが偶にはでくわすであろう。そんな程度だから、多くは自分で対応して誰にも言わない。しかし、よく考えると、車内清掃の質を上げて、乗客の快適な旅行を本気で考えるなら、やはり鉄道会社(の清掃下請会社か?)により日常的にそれなりの対応がなされて良いのかも知れない。

清掃の小母さんたちは、折り返すまでの短い時間で、上に書いたような多くの作業を見事なまでにこなしている。その労には感謝であり、そのうえで、新たな作業を潜り込ます余地は少ないのではないか、とみうける。しかし、発想の転換をして知恵を出してさらなる質的向上を小母さんたちの労働強化なしで図ること。鉄道会社が乗客本意を口にするのであれば、そのような質的向上をしなければならないし、そのようなところから真の乗客本意のサービスが実現してゆくのではないだろうか。

そんなことを考えているうちに、小母さんたちはてきぱきと仕事を済ましドアをしっかり閉めて去っていった。

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