日本の弱腰、中国の強腰 ・・・尖閣諸島をめぐる両国政府の態度

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最近の尖閣諸島における中国漁船と海上保安庁巡視艇との衝突事件(2010年9月7日)をめぐって、日本政府の弱腰と中国政府の強腰が議論になっています。この事件の背景に関し、問題を二つ感じます。

ひとつは、日本政府が、領有権を、なぜ具体的に主張しないのか。中国も同様で、具体的に主張しません。これをやると、日本の勝ち、となって両国政府が困るからです。中国政府が困るというのは、おおむねお分かり頂けると思います。日本政府が困るというのは、自衛隊や安保条約の存在する根拠が、また減ってしまうからです。それらが存在するためには、軍事的緊張が周辺に存在する必要があるわけです。昨日(2010年9月30日)の国会で、長島委員の主張を、そうしたことを頭において聞いているとよく分かります。自民党の言っていることも同様です。

日本が勝ち、という根拠は、次の通りです。

19世紀の末近く(1895年)、日本が尖閣諸島を閣議決定で日本領土と宣言して以来、それが国際的にも認められております。中国(台湾政府)が領有権を主張し始めたのは、国連の委員会が周辺の石油・天然ガスの存在を示唆した後の1970年代のことで、大陸の中国政府が言い出したのは、1971年12月のことです。その間、70数年にわたって外国からの異議が唱えられてこなかったわけで、国際法で言う「主権の継続的で平和的な発現」が維持し続けられてきたのです。このように、尖閣諸島の日本による領有権は、国際的に正当なものなのです。

ふたつ。日本政府が弱腰になるのは、世界の外交の方向が見えていないからではないでしょうか。どうして良いのか分からないのかも知れません。他方、中国が強腰になるのは、日本を叩いて中国の立場をいっそう強いものにしておこうという思惑があるからと考えられます。当面は、来る11月、横浜でのAPECの場で中国がイニシアティブを握るためには、ここで日本を叩いておかないと云々、という思惑があるのではないでしょうか。中国政府は実際に戦争をするところに利益は無いと見ていて、平和裏に経済を発展させるところに国益を見ています。米中関係にそれが滲み出ていると思いませんか。これが中国の考え方の太い流れであって、民族紛争や尖閣の問題は、それを妨げる課題として解決を模索しているというところでしょう。

中国が、どういうことから平和裏の経済発展を重視しているかについて補足します。

あの戦争が終わり、何千万の民がいのちを失うような戦争を二度としたくないという気持が民衆の間には拡がりました。しかし、その後、朝鮮戦争、ベトナム戦争に見られるように、米ソを中心とした対立軸での戦争が続きました。しかし、ベトナムでアメリカ軍が敗退し、ソ連が崩壊して東西対立の軸が無くなり、軍事同盟も後退しました。日米安保条約のみが旧態を依然として保っています。湾岸戦争、イラク戦争などが、戦争のバカさ加減を示す中で、ASEANの平和外交、南アメリカ大陸における非戦平和外交の進展などがひろがり、オバマの核廃絶発言さえ出るようになり、国連はそれをさらに進めようとして、世界に平和を求める動きが太くなっています。その流れが、日本政府には見えていません。日本のマスコミもほとんど触れません。中国政府には、世界の流れがしっかり見えているのです。

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