西部開拓史  猿谷 要著  岩波新書 (1982/05)

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西部劇やローラ・インガルスの時代は、アメリカの今に・・・, 2008/3/1

「駅馬車」「シェーン」「OK牧場の決闘」など、西部劇映画の舞台となった時代、あるいは「ローラ・インガルス」の物語に描かれる時代である。それらの時代を概略であってもまとめて知る機会は、私たち日本人にとってそれほど多くない。この本を読むと、それらの時代がどんな時代であったのかがよく分かる。

アメリカがイギリスから独立し、スペイン、フランス、メキシコなどから南部、西部の広大な土地を購入し、西部への人々の流れが起こり始める。その時代は、まず未知の天地を探検することが必要であった。毛皮商人、マウンテン・マンなどが縦横に行動し、サンタフェ・トレイルなど、街道が自然発生的に出来上がる。ついで、開拓農民の群れが、幌馬車を連ねて西へ向かう。公有地の売却が進み、西部に準州、州が増えてゆく。黄金郷がカリフォルニアを始めあちこちに見つかりゴールドラッシュが起こる。駅馬車の発展を経て鉄道が拡がり、大陸横断鉄道も完成する。大量の牛の群れを追ってカウ・ボーイも現れ、牧畜全盛期となる。それらの動きの中で、先住インディアンは差別・迫害を受け彼らの人口は激減する。フロンティア・ラインの消滅を国勢調査局が報告したのが1890年であった。以上は、アメリカ独立からほぼ100年間の出来事である。

西部開拓を支えた中心的精神として、神から選ばれたアメリカ人がこの大陸全体に広がり、周辺の劣等な民族を教化することは「明白な天命(マニフェスト・デスティニー)」である、とする考え方があった、と著者は言う。

西部劇やローラ・インガルスの時代を根源とする歴史の延長線上に現代のアメリカが存在することを知ると、知らないときに比べ、その実像がより明確になってくるように思え、アメリカを考えるにあたって必須のことであろうと思う。

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