完訳 ファーブル昆虫記 第1巻 下
ジャン=アンリ・ファーブル
(著), 奥本
大三郎 (翻訳) 集英社
2006/3/23
実験昆虫行動学、一行メモ要約、ファーブル紀行,
この分冊では、南仏の高峰ヴァントゥー山への登山から始まって、ジガバチ類、ハナダカバチ、ヌリハナバチなどの狩、巣作りや帰巣といった行動が扱われる。観察、実験を行い考察を加える。例えば、石の上に造られたハチの巣を石ごと移動して、ハチがどう行動するかを詳しく調べる。実験結果の考察をして、時にダーウィンの進化論にも挑戦する。ファーブルの行う実験は、今風にいえば実験昆虫行動学とでもいえようか?
この訳本の特徴のひとつとして、各章の冒頭部分にその章の要約、それも一行メモを連ねた形式の要約が付けられている。これを利用させてもらい、自分の興味あることを割り込ませたり、違った切り口の表現に置き換えたりすれば自分流の要約になる。これは、あとから見返すにも、内容の理解にも、いろいろと便利である。
巻頭のカラー写真は、現代的視点による昆虫生態や昆虫記の舞台の現代の風景を見せてくれる。これは本書の理解を深めるだけでなく、巻をすすめるごとに、巻頭などのいろんな地図とあいまってちょっとしたファーブル紀行になりそうだ。第1巻上下だけでも私は、これら写真を本文と合わせ眺めながら、数年前にその地を訪ね昆虫記に書かれた場所や虫たちを追った記憶をたどり、そうか、あれはそんな場所だったのか、などと反省したりしている。