滝廉太郎―夭折の響き 海老沢 敏(著) 岩波新書 (2004/11)
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いつも歌う「荒城の月」は瀧廉太郎作ではない? 2008/02/16
私たちが、普通に歌っている「荒城の月」は、実は、瀧廉太郎が作曲したものとは異なる山田耕筰編曲になるそれであることが多い。この本を読んで、もっともビックリしたのはそのことでした。確かに、原曲の楽譜を見ると、第2小節の8分音符のひとつに♯が着いています。それに対し、山田耕筰編のそこには♯がありません。そして、私が無意識に歌う「荒城の月」のそこには♯がないのです。さらに、原曲はロ短調、アンダンテで8小節からなっていますが、山田編ではニ短調、レント・ドロローソ・エ・カンタービレで16小節、したがって前者が8分音符が基本のところ、後者は4分音符になっています。山田編はゆっくりなのです。
また、その他、瀧が留学した街、ライプツィッヒに、没後100年の2003年夏に、彼の記念碑が建ったということは、偉人のゆかりの地を訪ねるのが好きな私には興味深い情報でした。
瀧に限らず、モーツアルトもシューベルトも、私たちは若くして死して残念と思うのですが、当時としては決して夭折とはいえないという当時の平均寿命を考えさせられる記述もあります。
その他、瀧の伝記的エピソードを、モーツアルトなどの研究で有名な著者海老沢さんの蘊蓄をかたむけてたっぷりと書いておられるこの本は、瀧の全体像を、特に当時の音楽界を中心とした情勢の中で得ようとするには格好で手軽なありがたい本です。「荒城の月」の他に、「花」「箱根八里」などを愛唱する時、この本を読んでいるとその歌の理解がより深くなって興趣が増そうというものです。