日本のメディアは、本来の役割を忘れた

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最近のテレビや大手新聞の報道を見て、どこも同じことしか伝えていない、と感ずることがしばしばです。そのうえ、メディアは、かつては、2大政党制を実現しなければ日本の政治はよくならない、とか、最近は、社会保障改革のため消費税増税を早くやれ、とばかりに合唱を繰り返してきたのです。メディアの影響力は絶対的といって良いほどの大きいのが、現代日本の大きな特徴です。本来の役割は、権力のチェックにあるのではなかったか、と思うのです。

そのことを、もう少し掘り下げて勉強することが出来ましたので、その結果をまとめておきます。

日本の新聞日刊紙の発行部数は5100万部、そのうち、5大紙が2600万部です。OECDの調査による読者率(最近、または昨日、新聞を読んだという成人の比率)が、日本は94%の高率で、他の国についてみると、ドイツ71%、米国45%、イタリア45%、フランス44%、インド37%、韓国37%、英国33%、ロシア11%などです。わが国における新聞の影響力を思い知らされます。

これにあわせて、テレビがまた大きな影響力をもつわけですが、新聞・テレビ界が、大きな問題を抱えていると報じられています。クロス・オーナーシップ(異業種メディアの所有)の問題です。インターネットで検索すると、原口一博元総務相が、これを禁止する法制化を主張したことなどを見ることもできます。クロス・オーナーシップとは何か、といえば、新聞社が系列下にテレビ局を抱えていることをいうのだそうです。

よく知られたことですが、下記のような新聞−テレビの系列があります。

読売−日本テレビ
朝日−テレビ朝日
毎日−TBS
日経−テレビ東京
産経−フジテレビ

なぜ、これが問題にされるかというと、まずは、これが欧米では、原則禁止、なのです。何故かといえば、新聞とテレビとの相互チェックが出来なくなることと報道の多様性が損なわれることが理由とされています。メディアは、特に権力のチェック役が古くから期待され、実際にしばしば果たされてきたことが思い起こされます。

有名な例を3件だけ挙げておきます:

ニクソン陣営が民主党本部の盗聴をしたウォーターゲート事件を暴露しニクソン大統領を辞任に追いやったのは、ワシントン・ポストでした。

トンキン湾事件がアメリカ軍のねつ造であったことを示す国防総省の文書を暴露したのは、ニューヨーク・タイムズでした。圧力で財政危機に陥っても闘い続けると不退転の覚悟でこの仕事をし遂げました。この記事は、後にピューリッツァー賞を受賞しました。

最近では、イギリス公共放送BBCが、イラク戦争を報道するにあたって、首相と喧嘩しつつも終始批判的立場を貫いたことは有名な出来事でした。

このように、メディアの権力批判は、健全な社会を保障する大きな力として存在するのです。ところが、日本のメディアは、逆に、そろって政府機関紙のようです。そうならないことを事前に保障するのが、クロス・オーナーシップ禁止の原則なのです。日本では、それが禁止されていない。原口総務相は、この禁止をやろうと言い出したわけでした。

日本のメディアが今の姿になってしまったには、歴史があって、意図的にこのような現状が作り出されてきたのです。特に、1990年代以降は、大きな動きがみられます。

たとえば、「民間政治臨調」は、2大政党制実現をめざすといって小選挙区比例代表並立制を強力に打ち出したのですが、その150人ほどの運営委員中の約半数がメディア関係者だったのです。その後、実際に小選挙区推進、2大政党キャンペーンを日本のメディアは大々的に行いました。メディアが世論誘導をしたと批判を受けさえしたものでした。

その他では、選挙制度審議会27人の委員中11名がメディア関係者ですし、これら新聞社の社屋の建つ地が、多く国の払い下げ地であることは、どのような影響があるのか知りたいものです。

かくして、わが国のメジャーなメディアは、権力のチェック役ではなく、政府の政策の旗振り役をしているといってよいでしょう。中に、チェック役を果たそうとする個々のジャーナリストや地方新聞のがんばりは貴重ですが、大きな流れがこのようであることは、現代日本の持つ大きな課題だと考えられます。
                                               (2012/02/24)

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