マルティニーク熱帯紀行―ラフカディオ・ハーン追想 恒文社 (1995/09)   工藤 美代子(著)

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ハーンによるクレオール評価の原点=マルティニーク島 , 2004/8/11

クレオール文化に強く惹きつけられ関心を持ちそれに注目したところは、ハーンの業績の際だったところのひとつであるが、その原点はマルティニークにあったと思われる。そのことを考えるのに、この本は多くの示唆あるいは情報を与えてくれる。ハーン撮影とされた写真33枚も紹介される。

 この本は、ラフカディオ・ハーンの生涯に関する評伝三部作「聖霊の島(ヨーロッパ編)」「夢の途上(アメリカ編)」「神々の国(日本編)」を著している著者の紀行文。「仏領西インドの二年間」に記されたようにハーンが過ごした島=マルティニークの過去の姿を想いつついくつかの土地を訪ね人々と接した、その記録である。生涯三部作に比べてハーンの作品や生活にあまり踏み込んでいない印象が強く、評伝というよりもやはり紀行文である。著者の姿や思考がしっかりと描かれるけれど、相対的に客観的な記述という印象が残る。「追想」であって、やはり評伝ではない。

 「夢の途上」で著者は、「心の痛みと、それ故のやさしさ」をハーンに見ているが、この紀行文に漂う島の雰囲気にもそれを読みとったと言えば、深読みに過ぎるであろうか。

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