郷愁の大地-ある父と子の北国物語

    東京図書出版 (2016/4/22)           塚本 正明(著)  

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少年が移りゆく北国の四季の中で成長して行く自分史風物語, 2017/12/8

少年マサオが北海道新得の種畜場を主舞台に、移りゆく北国の四季の中で成長して行く姿を描く自分史風な物語。小学校一年生の初夏、札幌から転校してきます。いろいろな植物や動物、とくに種畜場に飼われている多くの家畜に驚きをもって接します。長い冬も子ども達にとっては楽しい遊びの季節です。種畜場の職員やその子供たち、やや大きくなってからは町場の子ども達とも付き合います。兄姉たちとは年が離れているので、彼らが休暇で帰ってくるような時に絆を深めます。大学の先生が来た時には、難しいけれど大事そうなことを聞かされました。そんな環境で、ふたたび札幌に転校して行く六年生の初夏まで過ごします。

自伝というよりは自分史風な書き方で、小さな山はあっても大きな山はないままに筋も淡々と進んでゆきます。驚くようなことといえば、皇太子の種畜場訪問時、皇太子が騎乗した道産子が暴れ出したことくらいです。乗馬をたしなむ皇太子は馬をおとなしくなだめてことなきをえました。修学旅行では阿寒、屈斜路、摩周の湖を巡りますが、それらも現代の洗練された観光地とは異なります。読者にとっては珍しいことがたくさんありましょうが、なによりも著者がそれら生活の移ろいに郷愁を感じているだろうことが文章から覗えます。自分史たる所以です。文章がとても整っていますので読者にはすらすら読めます。

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