完訳 ファーブル昆虫記 第9巻 下
ジャン=アンリ・ファーブル (著), 奥本 大三郎 (翻訳) 集英社 (2015/5/26)
昆虫記も終盤に近く、面白さがいや増して、, (2015/10/23)
この巻は、全11章のうち7つの章がラングドックサソリについての記述です。それらを挟むように、クモとカイガラムシの記述が各2章ずつ冒頭と末尾に並びます。
サソリというと、恐ろしいという印象があるかも知れません。しかし、本書を読んで、私の場合、それがいわば偏見であることがわかり、少なくともラングドックサソリについては、とても親しみやすく可愛らしい印象に変わりました。他の巻と同様に訳者による現代の研究成果を踏まえた解説により、その他種類のサソリのこと、ファーブルがかけなかった背景・事実などを知ることも出来て理解を増してくれます。
第1巻からここまで、クモ、サソリなどをも含め、どちらかといえば馴染み深い種類のムシが扱われましたが、本巻最後の2章にいたり、ここまでに見なかったような随分珍しく面白い(私にとっては、かな?)ムシが扱われます。とりわけケルメスタマカイガラムシ、この、成虫がイラガの繭を思い出すような球形をしたへんてこりんなムシには、まことに驚かされます。
最終巻第10章上下を残すところまで来ると、そうしたユニークなムシどもが登場してくるのかようです。何よりもムシの生態そのものに関心を示し、それを研究したファーブルさんの長年の経験がいっそう輝く終盤という気がしてきます。