完訳 ファーブル昆虫記 第6巻 上
ジャン=アンリ・ファーブル
(著), 奥本
大三郎 (翻訳) 集英社 2008/3
バラエティーに富んだ興味深い話題が満載, (2008/6/24)
この6巻上では、6つの話題が並ぶ。まず糞虫の父親の役割、ファーブル自身のこと、アルゼンチンの糞虫、虫の体色のこと、モンシデムシの死体埋葬、キリギリス類の生態、である。他の巻に比してバラエティーに富むと言えそうであるが、それぞれなかなか興味深い話題が展開される。以下、それらを瞥見してみよう:
糞虫の話は、ここでも登場、という感じだが、ユニークなのはアルゼンチンのパンパの糞虫のことである。ブエノスアイレスの修道士との文通により、数種の糞虫を彼の地で「探し、見つけ、観察」した結果を得る。それにより、地球の裏側との異同を考察する。
虫の体色をいくつかの虫たちにつき考察する章では、何ヶ月も排泄をしない虫やクモの体色の特徴が老廃物を無毒化した結果であるなど、興味深い観察結果を紹介してくれる。
シデムシが、動物死体をいかに障害物を排除して土中に埋めようとするか、実験昆虫行動学を駆使して解明する。
キリギリスの仲間を中心に、鳴くことの意味などを観察に基づき叙情的描写をちりばめて探究する。叙情は時にファーブルの得意とするところだが、ここでは(訳も)それが冴える。
そして、巻頭に近く第3,4章で、それぞれ「私の家系」「私の学校」と題して、各種ファーブル伝に引用されることどもを縷々披瀝する。評者を含め、多くの人々がそれらを通してファーブルの生い立ちを知ることになっているのである。例えば、どのようにしてアルファベットを覚えたか、光は目で感じることをいかにして知るに至ったか、等々・・・。