完訳 ファーブル昆虫記 第4巻 上
ジャン=アンリ・ファーブル
(著), 奥本
大三郎 (翻訳) 集英社 2006/12/20
昆虫の作る巣の中でもっとも優美なもの?, (2007/3/20)
この4巻上は、ハチが主人公。キゴシジガバチがなぜ、人家の中、マントルピースにまで巣を作るのか。ファーブルは、この巻でも進化論を批判しつつ本能の不変を主張します。しかし、本能も、ガチガチの融通の利かない特性ではなく、生命を維持するのに、営巣のためのエネルギーを節約するという融通さも兼ね備えていると考察します。その事例に人間と共生しているツバメやスズメの営巣などを参考にします。
8〜9章では、綿毛を巣作りに使うモンハナバチと樹脂を使うモンハナバチを比較して、それらを形態だけで同一の属にまとめている分類学に異を唱え、機能を考慮して2分すべきだと主張します。現在から見れば、それは先進的な主張を含むとともに虫眼鏡などによる観察力の限界をも示しているのですが、あくまでも観察し実証したことを確信を持って主張するファーブルの姿勢はこの巻でも不動です。
なお、第8章で、輝くばかりの純白の綿でできたモンハナバチの巣が、昆虫の作る巣の中でももっとも優美なものである、と美をうたっています。美をうたうような記述には今までの巻ではお目にかからなかったように思い、印象に残りました。