完訳 ファーブル昆虫記 第3巻 上
ジャン=アンリ・ファーブル
(著), 奥本
大三郎 (翻訳) 集英社
2007/3/6
寄生バチは、本当に略奪者か?,
この巻の前半は、ツチバチが主人公。雌は、土にもぐってカブトムシやハナムグリなどコガネムシの幼虫を探しだしその場で麻酔を掛け卵を産み付ける。ファーブルは、それらの様子を30年間にわたる観察結果に基づき書き付けている。第4巻でも続きが展開されるという。まさに、観察する人ファーブルである。後半は、主にヌリハナバチに寄生するハチやアブの話が中心で、寄生者が、ヌリハナバチの強固な城砦のような巣をどのように侵すのかなどを追跡してくれる。それらを通して、まさに実証的に進化論の自然選択説を批判的に論ずることにも力を注ぐ。
この巻に限らないのだが、詳しい注が、現代の読者の理解を助けてくれてありがたい。脚注では、同じ用語が何回も説明されることも結構あり、素人が繰り返し学習により知識を定着させることを助けてくれる。例えば、「寄生」という言葉に本巻だけで3回の注をつけて(p.135、171、368)いる。訳注でも、ファーブルの時代から現代への知見の進歩を跡づけてくれることも多く、これはとても役立つし面白くもある。例えば、寄生バチは意外に種類が多く、一説では、すべての昆虫には一種以上の寄生バチがいるといわれ、また、その寄生バチが、動物の数を調節する上で特別に重要な役割をしているらしい、ということなども紹介されている、等々である。