完訳 ファーブル昆虫記 第3巻 下
ジャン=アンリ・ファーブル
(著), 奥本
大三郎 (翻訳) 集英社
2006/3/23
「虫に聞いてみよう」, (2007/3/9)
この3巻下では、まず、大きなカマを持つカマキリを、トガリアナバチがどのように狩り、麻痺させるのかを観察します。この危険な狩を、試行錯誤しながら身につけるはずがないなどと、ここでも自然選択説を批判します。息子のエミールがみつけたツチハンミョウの擬蛹からクシヒゲゲンセイの生態を調べます。後半では5章を費やして、ツツハナバチが雌雄を産み分けることを事細かに観察し推論してゆきます。
この巻では、何よりも実に大量な観察を基に虫の生活・習性を追って行くことに驚かされます。「この研究を続けてきた六,七年来、・・・どれだけの巣を採集したか、その総数をここにあげたら、それはあんまり大袈裟すぎるといわれるかもしれない。しかし、午前中に採集した左官蜂の巣の数だけでも、あるときには六十にものぼったといえばそれで充分だろう。」ファーブルがよく言う「虫に聞いてみよう」という精神が躍如としています。この精神が昆虫記を面白くもしており、長編にもしているのだと思います。