自伝 土と炎の迷路
加藤唐九郎(著) 講談社文芸文庫 (1999/02)
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土と炎の芸術家の豪放磊落な生き様, 2006/5/23
陶芸の巨人=加藤唐九郎の自伝だけあって、交友や行動は豪快である。好奇心の塊のように、音楽、絵画、文学、歴史、宗教などに時に必要に応じ深入りする。当然、知人もそれらの分野にまで拡がる。戦後間もなく外国にも困難を押して出かけて行く。数々の業績はさることながら、また、出る釘は打たれること多く、毀誉褒貶にも見舞われる。牢屋暮らしもする。しかし、信念を曲げない無骨さ、反骨精神は強い。
陶芸という用語は、今でこそ普通に使われるが、彼が初めて使ったとのこと。陶芸家は職人か芸術家か、としばしば問われる点に関してもしっかりとした考えを述べている。その陶芸に向き合う考え方は随所に、彼にしてはさりげなく、書き連ねられている。特に、書名にも顔を出す土、その土が大切、とするところは彼の最大の特徴と思われる。
この本の書き振りは、日経新聞の「私の履歴書」(1981年当時連載)をベースにしており、とても読みやすい。