砲撃のあとで 三木 卓(著) 集英社 (1977)
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この少年の強烈な体験は、ぜひ次世代に語り継がれてほしい, 2006/6/10
満州(現・中国東北部)における敗戦前後から引揚船に乗り込む前までの出来事を、ほとんど時系列に一連の短編集(やや長めのもあるが)としてまとめた本。植民者だった民族が一転して哀れな状況に追いやられ、いち早く逃げ出せなかった人たちはことのほか悲惨である。主人公の少年にとってそれら体験はあまりにも強烈である。それらを14編の作品により追体験することとなる。(この後は、自伝的作品「裸足と貝殻」などに引き継がれる)
解説によると、この本の発表まで、四半世紀にわたって書き継がれたのだという(木山捷平なども、満州関連の作品発表までにそのような時間を要したという)。それらの日時の中で研ぎ澄まされ詩のように練られた文章で描かれた多くの出来事は、あの地あの時の体験者がいなくなりつつある今、語りつがれもう一度見つめ直されるために格好なリアルな素材である。少年が主人公であることも与って、広い世代の人々に読んでいただける一篇である。なお、この本には埼玉福祉会発行の大活字本もあって図書館などで見かけることがある。