ヘーゲル「小論理学」を読む〈1〉    

       高村 是懿 (著)、 広島県労働者学習協議会 (編)   一粒の麦社 (2009/9)

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まず、ヘーゲルの世界に入るための準備を  2010/4/6

ヘーゲル弁証法への本格的入門書「小論理学」の逐次的解説書です。4分冊からなるシリーズの第1分冊です。

著者の熱意、それは、科学的社会主義の哲学的源泉であるヘーゲル弁証法を深く学び社会変革のエネルギーをいや増そうとするものですが、その熱意は、やがて広島県労働者学習協議会のゼミとして働く仲間に向け公開されます。2度目のゼミが終わった時点で、本書の第1版が出され、今回、その後の発展のうえに大幅な改訂をして第2版が出されました。

第1分冊では、ヘーゲル「小論理学」全244節の内36節までが収められています。具体的には、「聴講者に対するヘーゲルの挨拶」と三つの「序文」「エンチクロペディーへの序論」、そして「論理学(エンチクロペディー第1部)」の内、「予備概念」の「A、客観に対する思想の第1の態度」までです。冒頭には、「ヘーゲル『小論理学」とは何か」という解説が配されています。

ヘーゲルの本文から、主要なパラグラフ、フレーズなどが引用され、それを分かりやすく解説しています。ある箇所までに既に述べられていたことを遡って引いては解説するなど、学習を深める助けになります。時に難解といわれる「小論理学」ですので、原書においてもヘンニングによる補遺が付されていて、そこでは具体例が取り入れられたりしているのですが、本書ではさらに身のまわりの例を引きつつ解説がされます。しかし、そもそも抽象的記述が多いわけで、その正確な理解のためにはもっと実例が多くても良いのではないか、と感じるほどです。

第1分冊は、ヘーゲルの本論に入るための準備に相当する内容が多いです。序文、序論が終わっても、ギリシャの形而上学からヴォルフの形而上学まで批判的おさらいが続きます。ですから、読み通すのに少々がまんを要するかも知れませんが、第2分冊の途中までそれら急坂を登り切った後、そこの峠からはヘーゲル哲学の下界が、見晴らしよくくっきりと見えるようになりますので、がまんして読んでみましょう。

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