春の日は
小ぬか雨からやってくる。

電車の窓から見た
雑木林の灰色のマントは
からんだクズの蔓と
枯葉やなんかの
まとわりつき

そんな雑木林の乾燥を
暖かな小ぬか雨が
夜のうちに
和らげてくれた。

ビルの中の毎日に
ささくれた僕の心を
柔らかな小ぬか雨が
そっと抱擁し
和らげてくれた。

春の日は
コブシの白からやってくる

野づらには、
麦の緑と菜の花
真っ黒な火山灰の台地には
若葉を散らしたクヌギの屏風

そんな里山の舞台で
佐保姫たちの歌舞(うたまい)の
さんざめきが
若い命を
燃え立たせる

春の日が
コブシの花からやってきた。


春の日

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