母なるもの 新潮文庫、新潮社; 改版版 (1975/08) 遠藤周作(著)
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日本には母なるものの必要性とその根拠が色濃く実存してきた, , 2002/12/4
遠藤周作は、母親との独自の関係をとりわけ心に重く置いて生きた作家です。この本の八編の短編の中でそのことを違う筆致で繰り返し示しています。そのことを一つの軸として、遠藤は幾つかのことを私たちに問いかけてくれます。そのひとつ・・・
まったき正しい人などほとんどおらず、人は多かれ少なかれ罪を持つ。罪の多少を問わなければ、罪人しか存在しないのではないか。とすれば、この世に生きるにあたって、罪人を優しくゆるす母のような神、転んだらじっと立ち上がるのを待つ母親のような神こそ必要とされるのではないか。現代の日本には、そのような神を必要とする人は多い。そして、実は、日本史にはそのようなもの、つまり母なるものの必要性とその根拠が色濃く実存していたのではなかろうか。