ドヴォルジャーク―わが祖国チェコの大地よ
黒沼 ユリ子(著) リブリオ出版 (1982/01)
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いくつかの特徴をもつユニークな伝記 2009/07/24
チェコの田舎町の肉屋の息子が努力して世界的に有名な音楽家になった話といえば、あたりさわりのない伝記のようですが、この本にはもっと魅力的ないくつかの特徴がある。ひとつは、子ども時代のエピソードを詳細に紹介してくれること。つぎは、音楽または音楽家がどのように社会に影響され、社会に影響を与えるかを示してくれること。みっつめは、民族的な音楽とはどういう特徴があるかを示してくれること。これらふたつを、具体的にドボルジャークの事跡を通して示してくれるのです。つぎに、日本人により書かれたということ、とりわけ、著者黒沼さんは、チェコに留学しチェコに関する多くの人脈と情報をお持ちですから、それがふんだんに生かされていることはとても重要です。最後に、有名な「交響曲第9番『新世界より』」「チェロ協奏曲」などの曲想がどう展開され、どこに特徴があるかを、演奏家の知識をかみ砕いて示してくれることです。これは、なかなか他書では得られないところではないでしょうか。
かくして、ドボルジャークのとてもユニークな伝記として読むに値する本だと思うのです。