沈黙 大活字 (2004/11) 遠藤周作(著)
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軽くない内容をすらすら読ませてくれたのは・・・, , 2010/1/25
遠藤はこの小説においてキリスト教のかなり根源的なところへ切り込んでいます。神の存在、転び(背教)と赦し、キリスト教の日本における受容などです。テーマは、このように軽くないのですが、筋は明快で読みやすいです。
島原の乱の後、キリシタン禁制が厳しくなっていた時代の、主として長崎とその周辺が主な舞台。澳門経由で日本に潜入したポルトガル司祭ロドリゴは、禁制の嵐をいかに潜り、いかに受けるか。殉教と背教の相克にロドリゴはどう対したか。同じ著者の「母なるもの」に続く課題でもあります。
ロドリゴの苦悶、例えば:
神の沈黙について、「主よ、あなたはなぜ黙っているのです。この時でさえ黙っているのですか。」
ユダの役割は?「ユダに向かってあなたは言った。去れ、行きて汝のなすことをなせ。」「主よ、あなたは彼を救わぬのですか。」
手に汗握るような展開の中で、必ずしも安易に読み過ごせない内容の本書を、思った以上にすらすらと読ませてくれたのは、作者の筆力によるところが大きいのだけれども、加えて、大活字本の効用があったように感じます。歳をとると大活字本はまことにありがたいのですが、読書のスピードアップにも有効なことを知ったこの本の読書でした。