あの戦争から遠く離れて―私につながる歴史をたどる旅
城戸久枝(著) 情報センター出版局 (2007/0)
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第3世代によって語り継がれた「満州」, , 2007/11/27
連れ合いが読んでから、私も読もう読もうと思っていた間に、我が町の本屋のどこをみても、この本が平積みになっているし、Amazon.com.jp
のレビューでも若い人達に良く読まれているようにも見受け、喜んでいたのですが、ようやく読了して、平積みも、若い人の間の人気もむべなるかな、の感に打たれています。
満州に渡り、終戦直前のソ連参戦を機に悲惨な経験を余儀なくされた親の世代がつぎつぎと鬼籍に入り、その子どもたちも高齢になりつつある今、更にその次の世代=第3世代により書かれた本書。まさに「語り継がれた満州」の秀作です。
第1部は、著者の父=満州残留孤児が、いかに孤児となり、文革下で苦労して成長したか、日本国籍を選ぶことにより大学への道が閉ざされるなか、1970年という「早い」時期にいかにして自力で日本帰国を実現したか。それらを軸に、父の半生を追ったノンフィクションです。養母の心をも見事に描いています。子どもが父親の足跡を追ったことで父を慕う娘の情愛がほんのりと漂った反面、リアリズムを貫いたことで印象が強く深く残ります。
第2部は、第1部とセットになっていることも含めユニークです。つまり、第1部を書いた著者が、いかに父の跡を追うようになり、実際にどのように追ったかを跡づけます。
このような「満州本」は、今までにありませんでした。何よりも、第3世代に「満州」がしっかり受け継がれていることを示してくれます。そのことは、日本の戦後史にとってとても重要なことです。これからも、第2世代が第3世代に向けて語り継ぐことに加え、第2,第3の「城戸久枝さん」が現れて、先行世代の経験を消化・摂取して継承していただきたいと強く思います。
朝日新聞 2008年6月16日夕刊 1面 ニッポン 人・脈・記 「日中 子々孫々」J 『孤児だった父と娘の物語』は下記でご覧頂けます。横向きになって不自由掛けて済みません。
kidohisae.pdf へのリンク