エイリアンに会ってきた
   

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お台場でエイリアンに会ってきた。

と言って、正しくは、東京お台場の「日本科学未来館」でエイリアン展を見て、その中のイベント『長沼毅トーク・ライブ――脱・「知的」生命探査のススメ! 第4回:「遺伝子――生命であり物体である細胞」福岡伸一 (分子生物学/青山学院大学教授) X 長沼毅』を聞いてきた。

今や、エイリアン(地球外生物)がSFの世界から科学の世界に移ってきているといわれている。それは、科学の世界で、生物学や天文学などが進歩して、エイリアンに関する科学的知見がぐっと増えたからである。天文学では、木星の衛星エウロパの氷の塊の下には液体の水があって、そこに生命が生息しているかも知れないとされている。最近も、火星に着陸した火星探査機フェニックスが液体の水や生命の痕跡を見つけるかも知れないと期待されている。

他方、地球上の極限環境、例えば、ほんの一例であるが、深海の高圧、暗黒な環境下であっても、高温の湧水があるところでは細菌を始め生命が生息している。南極の深い氷の層にも生物が確認されている。このように、宇宙にありそうな極限環境で生物の活動が確認できるのである。これらは、いずれも、エイリアンの存在の可能性をぐっと拡大している。

この展覧会を見ての感想は、これは、宇宙規模の生命探索であるだけでなく、時空間的な生命の起源と生物の進化の科学の進歩であって、これからますます面白くなりそうだ、ということであった。地球外生物の発見もそう遠くないうちにあるかも知れない。

エイリアンを求める試みは、さらに、近年の分子生物学や遺伝子科学の進歩とも絡み合って、生命の本質に関する認識をおおいに改革してゆくかも知れない。それは、長沼×福岡トーク・ショウを聞いての感想である。

このトークショウでは、これもほんの一例であるが、福岡さんは、生命の進化をもう一度やらすことができたとしたら、そこに人間はいるだろうか、という問いに対し、「やはりいるだろう」と答えておられた。つまり、生命の進化は、環境との密接な相互作用のもとで展開されてきたはずであるから、環境が同じであれば同じ結果になるはずだ、というわけである。逆に、宇宙の多様な環境のもとでどんな生物がいるか、が分かるとそのあたりも検証できるかも知れない。

また、地球上の生命は、電磁波のエネルギーに依存しているのだが、宇宙のどこかに重力のエネルギーを使って生きている生物がいる可能性もないわけじゃなさそう、という話もされていた。それは、光合成とは全く違ったシステムになるであろうが、本当にそんなのがいたら、光と生物(植物)の関係がもっと違った形で成立することもあるかも知れない。

もうひとつ、トークショウの終わりに出された質問から。ある主婦曰く「今朝、夫が飼っていた熱帯魚が死にそうになった。私は、動物が死ぬのを見るのはかわいそうだから、もうよしてよ、と言ったら、夫が、お前だって毎日、菜っ葉を切り刻んで茹でてみたりでいのちを死なせているだろう、と言ったのでケンカになった。このような場合、いのちをどう考えればよいのでしょうか?」二人の先生の答は基本的に同じで、「動物でも植物でもいのちは変わらない。人間は、他の生物を殺すことで生きている生物である。そのことをよく考えてみたらよい」といったところ。いのちの授業であった。

生命の定義はさておいて、地球以外に生命のいる星が見つかったとしても、知的生命体がいるかどうか、との間には可能性において距離がありそうだ。おふたりは、しかし、それがいる可能性を否定しなかった。

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