'09総選挙結果の評価について
この夏の総選挙は、政権交代という結果によって、その後の政治・経済・生活に変化をもたらすのではないか、という期待や警戒などが渦巻いている。その変化の内容、方向がどういうものか、を見極めるには、選挙後3ヶ月という今の時点は少々早すぎるように思われる。その前に、総選挙の結果をどう読むかを、今一度、具体的なところを思い出しつつ明らかにしておくことは、今後の変化を的確に読み取ってゆくために有効ではないだろうか、と考えた。以下は、そんな作業の結果である。あまり目新しいことはないのだが、覚え書きとして記しておくこととした。 各政党の得票数を比例区につき図1に掲げた。いうまでもなく、政党の消長を比較するには、全政党が全選挙区に候補を立てられない小選挙区よりも、比例区が適しているからである。比例区得票により2005年のいわゆる郵政選挙の時と併せて比較すると、今回選挙における各政党の得票変化の特徴がよく分かる。
図1 比例区得票数の比較 まず、民主党が880万票、4割強を伸ばしたのが何より目立つ。他方、自民党が700万票ほど、3割近くを減らしている。民主党以外で読票を増やした政党は、国民新党と日本共産党であるが、増分は僅かであり、%にして前者が3%、後者は0.5%である。みんなの党は、前回は存在しなかった。(なお、諸派・無所属は、増やしたとはいえ、政党として言及するのはむずかしいので触れないでおく。) 民主党の増加分は、自民党の減少分より多い。それは、今回の得票を減らした公明党、社民党、新党日本などから集めたことになる。 図2に、今回の新議席数とその比例区および小選挙区の打ち分けを掲げた。
図2 獲得した政党別議席数 まず、この図が前図に比べ縦長になっているのは、獲得議席が少なかった党の議席数を判読できるようにするためにはこうする必要があるのである。つまり、大政党に得票率に比べより多くの議席が配分され、小政党にはより少ない議席が配分された結果である。比例区のみを見るのであれば、縦の長さは短くても良いのである。小選挙区制の特徴がこうしたところにも現れるのである。 さて、これによると、民主党、自民党は、比例区より小選挙区で多くの議席を獲得しているのに対し、公明党、日本共産党は、小選挙区で議席を得ることが出来なかった。社民党、みんなの党、国民新党が小選挙区で議席を得ているのは、民主党または自民党との選挙協力によるものであり、大政党抜きでは獲得できなかった議席ということができよう。 図には、比例区、小選挙区の得票議席数を記入した。民主党は、221議席を小選挙区で獲得し議席占有率は73.7%であるが、得票率は47.4%(小選挙区得票は3348万票)である。他方、第2党となった自民党は、64議席で議席占有率21.3%、得票率38.6%(得票数2730万票)、日本共産党は得票率4.22%(298万票)で、公明党は得票率1.11%(78万票)で、いずれも議席ゼロである。 民主党の得票率で小選挙区の定数300を比例配分すると142議席となり、獲得議席数221は79議席の「水増し」となっていることがわかる。このような「御利益」は、第1党だけのものである。 そこで、得票率を使って議席の再配分を各政党につき行った結果を表1に示した。 表1 得票率による議席の各政党などへの再配分
民主党 142 76 218
これらのことから、小選挙区制が大政党、とりわけ結果第1党に有利に働くことが明瞭である。 今回の選挙結果の特徴は、 |