すたあと長田通信0「1998-1999年冬の号」

1998夏・草刈り隊大募集!記事へ

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おもて
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うら
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ごあいさつ


 街路樹の落ち葉が冬の景色に彩りを添え目を楽しませてくれますが、早朝からほうき片手に車道のそばで、落ち葉を集める姿には頭が下がります。
 プレハブ事務所の窓から見える更地の草花も、さりげなく季節の移ろいを伝えてくれますが、時として自然の営みは冷酷なまでに見事とも思える手腕で、私達人間に恵みと痛みをもたらし続けます。

 今年、各地を襲った台風等による風水害では全国でも多くの方々が被害に遭われ、神戸に於いても浸水家屋の住民の方々が、空き仮設住宅で避難生活を過ごすというケースがありました。又、農作物への被害も大きく、価格の高騰は来年まで及ぶものと予測され、全国にその影を落としています。

 この冬から施行されるNPO法(特定非営利活動促進法)も含め、阪神・淡路大震災を一つの教訓と受け止め、全国各地で災害時のマニュアル作りが民官双方にて見直され、危機管理が少しは身近になったような気がします。が、自然災害の要は人的災害と紙一重という残念な結果をも私たちは学びました。

 震災から3年半が経ち、公営住宅への転居が進むにつれ、残される者の不安を映し出すように仮設に生い茂る夏草たち。”私たちに出来ることは?”と全国に呼びかけた今回の「草刈り隊」でしたが、本当に多くの方々よりご支援を賜りました。

 1995年1月17日。あの日、焦土と化したこのまちから多くのものが生まれ育った4年間は、全国に発信し、全国から受け入れることで成長していけると信じた4年間でもありました。

 ―地元住民による小さな集まりの私たちにどこまでやれるのか?―「すたあと長田」の課題はまだまだ山積みですが、これからもどうか見守り続けていて下さい。

すたあと長田 金田 真須美


静けさの意味
藤原 千夏(同朋大学ボランティアネットワーク・1年)


 私は草刈りのため仮設に行った時、”静かだな”と感じました 。

 ここでのその言葉には 、静かで落ち着いていて良いところだね、という言葉もあれば、静かで少し寂しい感じがするね、という意味もあります。私は、後者の方を強く感じました。

 草刈りの最中、私に住人の方が、「ごくろうさま。私もこの草を抜こうと思ってたんだけど、固くてなかなか抜けなくて…助かります。」と声をかけて下さり、そこから震災のことなどのお話を聞くことが出来ました。私は震災の話を被災者の方から聞くのは初めてでしたので、震災の本当の恐ろしさを知り、身が震えるほどでした。それと同時に、震災を乗り越えて前向きにすすんでいらっしゃる強さも感じました。

 

★(同朋大ボランティアネットワーク(名古屋)のみなさんは、13名で9月19日(土)に仮設高塚台住宅にて作業されました。


風化も刈り取ろう
大谷 成章(神戸市・フリーライター)


 場所を間違えて別の仮設住宅に行ってしまったことがあります。誰も来ないので、ゴミコンテナの脇の巨大に成長したアワダチソウやスイバを一人で引き抜いていました。
 すると、おじさんが出て来て、「そいつは邪魔で気になっとったんやけど、力がないから抜けなんだんや。ありがと」と声をかけてきました。そして「ほっといたら、人が住んどるかどうか分からんようになって、世間から忘れられそうやからな」とつぶやいていました。

 「だれも忘れへんよ」と私は口では言ったのですが、仮設住宅の暮らしは、もはや無視されている状況になっている、と言った方が正しいことに気づきました。ピーク時の4万8千戸は巨大な数ですが、それから減ってこの夏は1万戸。少なくはなったといっても無視できる数ではありません。

 草刈り隊への参加は、記憶の風化と震災慣れへの私なりのささやかな抵抗でもあったのです。(草木をバッサバッサとなぎ倒す快感を味わうのが、実は私の隠れた趣味でもあります。アブナイかな)。

 

★8月2日(日)、9月6日(日)、27日(日)と参加。
酷暑も、雨天の作業も経験した凄腕。


夏、青春、草刈り、あーしんど
横田 ゆり(すたあと長田)


 この夏は、草刈りとともに始まり、鎌の手入れとともに終わった。私の青春を返せ!と言いたい。だいたい毎週日曜日、海水浴日和の日に限って、私らは草刈りしとったわけです。

 しかし、青春を草刈りに捧げたのは私一人やない。7月25日から9月27日まで、全16回で延べにしてなんと184名もの方が参加されました。東京から、愛知から、三重から、京都から、そして近郊から。その参加者たちは、へたりながら異口同音につぶやきました。「こんなん(仮設の)年寄りがしたら寝込むわな。」

 何でそないしんどいのか。「海水浴日和」なのです。トイレなんか行かんでもええ。みな汗になって出ます。ほんでボーとしてくる。夏の作業では、脱水が最大の敵なのでした。

 草もいろいろで、これが草物、やのうて、くせ者です。仮設の草には初物と2年物、3年物があるんですわ。その育ち具合は、住宅の住民さんの数の変化を教えてもくれます。3年物になったら、背丈より高うて。木みたいになってます。これはもう機械さんの出番。ところが、この機械がまた気分屋で…。「後でビールやるから動いて」言うんやけど…。

 参加者の年齢もいろいろでした。草刈りは、若けりゃええ、いうもんやない。若うない人、自信を持ってください。要は経験です。年輩グループからは、「おまえ、稲刈りぐらいしたことあるやろ」いう声も聞こえてましたな。今どき、稲刈り「ぐらい」やないでしょう。

 しんどい目したら、ええこともあるもんです。仮設の人に「東京からわざわざありがとう」いうて感激されたこと(私も東京人!)。用意してくれたつめたーいお茶に救われたこと。私がコンタクトを落としたとき、雨の中を大探ししてくれたこと(すんませんでした)。人に必要とされとんや!いうのを感じたら、またやる気が出ます。また、なんでもやりまっせ。でも、もっと涼しいときにしましょう、隊長。

 

★では、これから落ち葉ひろいにでもいきませうか。隊長より★


すたあと長田の活動と今後
和田 幹司(すたあと長田)


 草刈り隊は、仮設の方々にも喜ばれましたが、おかげで、我々の活動の理解者も増えました。

 毎週土曜のラジオ番組「サタデーエクスプレス」も進んでゲスト出演して下さり、震災や神戸やコミュニティを熱っぽく放送で語ってくれる人も増えています。

 十月に復興住宅で催したお茶会では、女性スタッフが和服などのおめかしで、しとやかさを披露し、文化的な活動も出来るんだとビックリさせられました。

 震災後、四年を経過しようとしており、復興半ばの状況ですが、草刈りで流す“汗”も大切にしながら、“ひとの心”の面で、人々と優しく交流できる活動を続けたいものだと願っています。

★1999年も頑張ります!

 

すたあと長田はこれからも様々な被災地支援活動を展開していきます。
皆様からのご意見、ご感想が私たちのエネルギー源です。お便り心からお待ちしております。

コミュニティFM局・“FMわいわい”にて
毎週土曜日PM2:00〜2:55
『すたあと長田のサタデーエクスプレス』放送中。
インターネットでも聞けます。
(http://www.jp.real.com/fm-yy/)

〒653-0014
 神戸市長田区御蔵通5-5
 TEL&FAX: 078-521-7170


被災地の姿 〜1998年11月現在〜


●応急仮設住宅建設戸数…643ヶ所、4万8300戸
●ふれあいセンター設置数…236ヶ所
●応急仮設住宅入居世帯…8484世帯(1998年11月1日現在/兵庫県住まい復興推進課)
●旧避難所等生活者数…35世帯73人、7ヶ所(1998年11月9日現在/兵庫県災害対策本部)
(データ集『出たでたデータ えっ!? 震災DATA集 サルでもわかるよ!!』より抜粋)

 

◆県外、市外避難者数…約2万1700世帯、約6万2000人(毎日新聞1998.10.2)
◆仮設住宅での孤独死…225人(1998.10.28現在)


震災、そして不況


◆兵庫県の完全失業率…5.6%(全国平均4.2%)(神戸新聞1998.11.6)
◆兵庫県内の倒産件数…1995年/432件、1997年/609件(神戸新聞1998.10.3)
◆神戸市内の有効求人倍率…1995年0.42→1996年0.57→1997年0.45→1998年6月0.30(データこうべ)

 



☆草刈り隊・さんくすこーなー☆


(順不同)

 

★草刈り隊作業日誌
7月24日(土)西神第15仮設住宅
8月2日(日)星和台南仮設住宅
  9日(日)高取山仮設住宅
  18日(火)鳴子仮設住宅
  同日   若松仮設住宅
  19日(水)御蔵通5丁目周辺
  20日(木)御蔵通5丁目周辺
  23日(日)星和台5丁目仮設住宅
  30日(日)ひよどり台仮設住宅
9月6日(日)ひよどり台仮設住宅
  12日(土)西神第15仮設住宅
  14日(月)西神第7仮設住宅
  15日(火)西神第7仮設住宅
  19日(土)高塚台仮設住宅
  27日(日)ひよどり台第2仮設住宅
  同日   御蔵通5丁目周辺


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