「消防隊がこの周辺で消火活動を実施しており、それが有効であったため、焼け止まっている。」
神戸市消防局が編集している『阪神・淡路大震災における火災状況』という立派な本の中に記載されている「御蔵通5丁目周辺の火災」という項目の中で、その文章を見つけたとき、私は背筋に悪寒が走った。
消防隊? 消火活動? あの猛火の中で彼らが消火活動をしていた?
私が駆けつけた時には、既に我が社は燃え尽きていたが、隣保の火勢は続いていた。その本の記述にあった場所に私自身がいたのだから間違いない。「消火活動」と呼べるものはそこにはなかったと断言する。
その本には御蔵の損害額が「5億1,585万7,000円」としてある。ちょっと待って欲しい、この御蔵では多くの家屋・工場が全焼し、数千万はする機械を燃やされ今でも支払いだけは続いている方々がいて仕事も頓挫している。そんな金額で済むわけがない。
御蔵5・6丁目の協議会ではこの問題を重視し、まちづくり新聞で住民にあの時の証言をしていただく様、広く呼びかけた。そして、消防局に抗議を行った(神戸新聞10月15日)。消防局は一部に間違いがあったことを認め、現在 調査中との返答をもらっている。
私たちの人生を狂わせた、あの余りにも悲惨な経験を思い出したくもない方々はたくさんおられると思う。
しかし、この度の震災の経験を、未来に生かしていかなければ、何のために私たちは悔しい思いをして震災後の今日を生き抜いてきたのであろう。“未来への財産”とするためにも、あの時の天災と人災を分けて考え正確に記録し、我々も関係所管も猛省しなければならないはずだ。2度と同じことが起きないためにも……。
消防局のこの本の問題はほんの一例で、目には見えないが、私はまだまだ多くの所で間違った記録・公文書があるのではないかと思う。それらを正し、私たちの「思い」を残すためにも、是非とも私たちの手で記録を作り、後世に伝えようではありませんか。それが、震災で無念の死を迎えた方にとっての『供養』にもなり、私たちが生きてきた『証し』にもなるのではないでしょうか。
行政に頼るのではなく、自らの手で記録することに価値があると、私は思う。
(兵庫商会:田中 保三)
冷え冷えとした霜の季節となりました。それでなくても、人は押し迫る冬に不安を抱くものですが、殊に仮設の人達の不安は深刻であります。
「今度、4次募集に入れんかったら、どないしよう、考えることはそればっかりや」
異口同音、仮設の人の言うことは一様。
「今度もし入れんかったら、取り残されたらタマリませんわ。今までに次々と近所の人は(引っ越して)消えていった。その都度、寂しい思いをしましたわ。4次募集の後は完全にゴーストタウンや」
ポーアイ内の仮設に住むAさん。
「ぜいたくな言い方かもしれんけど、もし(公営住宅に)入れても、三方ふさがれたドアだけの部屋はかなわんなぁ、恐ろしいわ、やって行けるんやろか」
同仮設のBさん。
それぞれ不安はまちまちだが、これまで不安と恐怖に慄いて死んでいった人は168人という。さらに増えることは十分に考えられます。とにかく仮設には今、不安が充満しています。
問題なのは、震災から2年10ヶ月、未だにその様な不安被災者を放置している行政の在り方ではないだろうか。恥ずべき行政の姿勢だと思います。空港建設も結構です。しかし物事には順序があります。地震2日後、行政の「空港建設宣言」よりも、「被災者の救済・復興の宣言」を先にすべきであったろう。行政は「空港建設は市民の総意」と言い続けてきたが、此の度の選挙でそうでなかったことが反証されました。
行政は市民のニーズに応じて緊急を要するものから手がけてもらいたい。空港はもとより、5600億円の六甲アイランド沖合い埋め立ては無謀です。凍結して即座に復興・救済に当てて頂きたい。街の活性資金に当てて頂きたい。そうすれば不安は殆ど解消するでしょう。
(元ポートアイランド第6仮設住宅住民:Sさん)
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※JR鷹取のあたりには、韓国/朝鮮語、英語、中国語、ベトナム語でも書かれた地域表示板がふえつつある。アジアタウンの第1歩だ。
(和田 幹司)
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▲更地が多いながらも(左) | 工事が進む鷹取地区(右) |
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