Based upon the idea by LARRY MILLER
オリオン のオープニングに、 "Based upon the idea by LARRY MILLER" とあるのをご存知でしょうか? Larry Miller 氏とは、AppleII の3Dシューティングゲーム 「EPOCH」 と 「HADRON」 の作者なのです。 よく オリオン はこの2つのゲームに酷似しているというコメントを見かけますが、 その点は作者の 竹内あきら 氏もしっかりとクレジットを入れていたのですね。 ここでは EPOCH から オリオン にいたるゲームを 『EPOCH系のゲーム』 と称し、それぞれを紹介していきたいと思います。



さて、こちらのヒゲモジャのオジサンは…?
この方が、 Larry Miller 氏なのです。 Millar氏の1982年の作品、"Spider Fighter"(ATARI 2600用ソフト)のマニュアルに写真が掲載されていました。 EPOCH系ゲームの創始者は、こんな顔だったんですね。




〜 EPOCH系のゲーム達 〜

Year Title Hard Programmer Company
1978 STAR FIRE Arcade David Rolfe Exidy
1981 EPOCH AppleII Larry Miller Sirius Software
1981 HADRON AppleII Larry Miller Sirius Software
1982 OLION PC-6001 竹内あきら アスキー出版
1983 OLION80 PC-8001 竹内あきら アスキー出版
1983 ONION PC-8001 竹内あきら アスキー出版
1984 OLION80 DEMO PC-8001 竹内あきら アスキー出版
1991 〜 2001 OLION Windows/JAVA等 AIWIL soft AIWIL soft




EPOCH

このゲームについての資料は、当初 UPU刊「テレビゲーム〜電視遊戯大全〜」に掲載されていた
写真と記事、 ならびにAppleII のロムサイトにあるマニュアルだけでしたが、 先日、ついにプログラムを入手することができたので画面写真を公開します。


EPOCH 01

EPOCH のタイトル画面。奥から手前に敵機がビュンビュン通過したのち、 ロゴが飛んできます。

EPOCH 02

ゲーム画面。操作方法はオリオンと同じ。 弾は連射が可能です。 燃料(FUEL)だけでなく制限時間(TIME)の表示があります。

EPOCH 03

お馴染み、タイファイター。 EPOCH の敵機は HADRON に比べてデザインがストイックで、オリオンに近いものがあります。

EPOCH 04

弾が当たったところ。 画面全部が黒→オレンジ→緑→青…とフラッシュします。 ヒビが入るより、視覚的衝撃度が高い演出です。


EPOCH のパッケージ写真も入手しました! AppleII のソフトのパッケージは綺麗なイラストが描かれているものが多く、 ワクワクさせるものがあります。 実際のゲーム画面がショボくても、パッケージのイラストでグラフィックを脳内補完できたものです(?)。 この写真の提供はJohn Romeo氏。 かつて AppleII で "Alien Attack" 等のゲームを発表されていた方です。(写真をクリックすると大きな画像が見れます)


EPOCH のマニュアル写真も追加。これもクリックすると大きな画像が開きます。 EPOCH は 燃料切れと時間切れの2つのゲームオーバー条件があり、 燃料切れを防ぐにはベースに、時間切れを防ぐにはタイム・ゲートに入って時間を増やす(=タイムワープ) …というゲームだったようです。




HADRON

EPOCH に続いて登場したゲーム、HADRON。 こちらの方が有名らしく、EPOCH は見たことがないけど HADRON は知っているという人も多いのではないでしょうか。 エミュレーター上で遊ぶことができましたので、画面写真を撮ってみました。

HADRON 01

HADRON のタイトル画面。 画面奥から手前に様々な敵機が迫ってきます。
タイトル画面では、"HADRON!"としゃべります。 …かろうじて、聞こえるような気がする程度ですが。


HADRON 02

ゲーム画面。 EPOCH にあった "TIME" がなくなっています。 オリオン と違って、加速すると背景の星が奥から手前に流れていきます。 弾は連射が可能です。

HADRON 03

この四角形はアステロイド(破壊可能)です。 HADRONの宇宙には、小惑星帯があるのです。 アステロイドは、なんとゼビウスのバキュラのように回転しながら浮遊しています。 HADRONの敵機は、いろいろなアニメパターンを持っているものが多くいます。

HADRON 04

アメリカのロケット!? 遠方のUFOは目玉が飛び出たり引っ込んだりします。 他にも 窓の中で2人の宇宙人が会話している敵機がいたりと、デザインがなかなかユーモラスです。 敵機の飛行パターンも オリオンの敵機のように直線的ではなく、楕円軌道だったり 上下に振幅したりと挙動不審です。

HADRON 05

弾が当たって、画面にヒビが入ったところ。 処理的に斜めの線が表示できなかったのでしょう。

HADRON_package

「I/O」誌 82年 11月号のコンピューターランド立川(現 日本ファルコム)の広告を発掘しました。 HADRON のパッケージが掲載されています。 アステロイドベルトでの戦闘シーンが描かれているようです。 この広告によると

 ● ハドロン (三次元、スターファイヤーNo.2) … \10,000
 ● エポック (三次元、スターファイヤー決定版) … \10,000

この広告には他にも ULTIMA I、Wizardry I といったゲームが掲載されていました。 AppleII はハードもソフトも非常に高価だったため、当時はコンピューターランド立川の 広告を見て、「どんなゲームなんだろう?」と想像していたものでした。

(20040425)
パッケージのカラー写真を追加しました。






STAR FIRE

上記 EPOCH/HADRON の広告にあった「スターファイヤー」という記述。 調べて見ると、これは1978年に存在したアーケードゲームの名称でした。 このゲームをMAMEでプレイしてみると、驚くことに EPOCH系ゲームのルーツというべきものでしたので紹介します。
EPOCH がこのゲームの影響を受けたのは間違いないのでは?


STAR FIRE 01

タイトル画面。 まさにSTAR WARS 。
STAR FIRE はコイン投入数によってFUELが増えるという、アーケードならではの仕様です。 筐体はコックピットタイプとアップライトの2種あったようです。


STAR FIRE 02

ゲーム画面。 敵機もモロにタイファイターです。 レバーで上下左右に旋回し、スロットルで加減速をします。 旋回には慣性がかかります。 拡大縮小ではなく、数段階の大きさのキャラクターパターンを使って疑似3Dを表現しています。 1978年にこのグラフィックは凄いと思います。

STAR FIRE 03

画面下部にはレーダーがあります。 STAR FIRE では、敵機を照準内に捕らえると、一定時間ロックオンします。 ロックオン中は敵機は中心から離れないので レーザーを発射すれば撃墜できます。 ロックオンしたときの雰囲気は STAR WARS (episodeIV) のミレニアムファルコンの照準システムにそっくりです。

STAR FIRE 04

Exidy社のロゴが入った友軍機も飛んでいます。 こちらは破壊できません。 敵機はタイファイターのみで、色によって点数が変わります。 ゲーム中でもコインを投入すれば、FUELを増やすことができます。 ゲーム終了時にスコアランキングに入っているとネームエントリーできますが、 ビデオゲーム史でネームエントリーを採用したのはこのゲームが初めてだということです。


このコーナーのトップで"EPOCH 系のゲーム"と書きましたが、"STAR FIRE 系"と改めた方が良いかもしれませんね。 しかし、STAR FIREはロックオンシステムのせいでプレイ感がかなり異なるので、"EPOCH系" という表記はあえてそのままにしました。




OLION

オリオン については当HPで紹介していますので、ここでは "olion3" について触れたいと思います。 オリオン/クエストは 本来白黒の2色しか出せない高解像度モード(mode4)で、色ずれを利用して4色のゲームを実現していました。 しかしモニターによっては色ずれが発生しないため、そのユーザーのために本来の4色モード(mode3)版のプログラムも収録されていたのです。 mode4版が"olion4"、mode3版が"olion3"です。 わざわざ2バージョンを収録するあたり、すごくユーザーを配慮しているなと感心したものです。 …とはいえ "olion3" は、あまりにもサイケデリックな配色となってしまい、宇宙とはかけ離れたイメージでした。

olion3_01
"olion3"のタイトル画面。 背景に星が流れているのですが、宇宙のシアンが飛びすぎていて見えません。

olion3_02
ゲーム中の画面。 サイケです。 今見ると逆に新鮮かも?!




OLION 80

AXシリーズの PC-8001版として登場した AYシリーズ。 第2弾の AY-2が「オリオン80」でした。 私はPC-6001ユーザーだったので、当時はオリオン80を遊ぶことができませんでした。

OLION80_title

PC-6001版に比べて解像度が荒い(160×100ドット)。 プログラマーはもちろん 竹内あきら氏。

OLION80_game

制限時間や故障といった要素を加えて、PC-6001版よりもゲーム性を高めたシステムになっています。 クリア後には敵機の形をエディットできる"スターシップデザイナー"が使えるようになります。





ONION

ONIONは当初、「ASCII」誌のジョーク版、 「Ah SKI!」に掲載されたパロディ広告だったということです。

ONIONの広告

「年刊 Ah SKI!」ISSUE#3(1983)に掲載されていた広告。 「Ah SKI!」は記事から広告にいたる全てがジョーク 記事でした。オニオンは、CP-6001用ソフト、 A×(エー・ペケ)シリーズの広告の中に登場。 画面写真はPC-6001の mode4 を使用して描かれています。

「3次元のど田舎畑に飛び交う敵の野菜軍団。 これを青虫爆弾で破壊していくのが、このゲーム"オニオン"。 高速3次元変換ルーチンにより、リアルな野菜の表現が可能となった。 敵はにんじん、ピーマン、大根、きゅうり等 28種類にもおよぶ。 燃料や爆弾が減ってきたら、タンカー・オニオンスライスやトンネル・れんこんにドッキング! 16個以上の野菜を破壊すれば次のシーンへ。 次のシーンでは敵が殺虫剤を放ってくるので、ますます攻撃が困難になるゾ。 君は高速に飛んでくる真っ赤なにんじん、回転しながら飛び交うオニオンスライスの恐怖に耐えられるか。」

Kimikazuさん、資料提供ありがとうございました。



その後、PC-8001用の オリオン80 が発売されたとき、野菜型の敵機データがONIONとしてオマケで付属しました。 オリオン80では敵機を自由にエディットできたため、ONION はそのサンプルという位置付けだったのでしょう。 ジョーク記事をそのまま実現してしまったというのが良いですね。

ONION

ONIONの画面。 ナスビが飛んでいる…。

HAL8999さん、ササさん 情報ありがとうございました。






OLION 80 DEMO

TAPE ASCII 1984年 1月号 に収録されていた、オリオン80のデモプログラム。 プログラムを起動すると、ゲームのプレイデモが再生されます。 数機撃墜後、被弾してゲームオーバーとなります。 見るだけでプレイできません。 キーデータを再生実行する リプレイ映像ですね。

OLION80_DEMO_01

デモだけに、タイトル画面では製品のPRが表示されます。

OLION80_DEMO_02

リプレイ画面では、自動姿勢制御装置をON / OFF したり、通信装置を使ったりと 短い時間の中で色々な機能を見せてくれます。

HAL8999さん、情報ありがとうございました。


一点だけ気になったこと。 デモの背景の星は瞬かないのです(製品版オリオン80の星は瞬きます)。 星の瞬きはバグだったのでしょうか…? (エミュレーター上でしか検証していないので、実機ではどちらも瞬かなかったのかもしれません)




AIWIL soft版 OLION

アスキー出版と原作者(竹内あきら氏)の承諾を得た移植版です。 製作は AIWIL soft 。 移植の元となっているのは PC-6001版ではなく OLION80 の方で、 1991年より PC-9801、FM-TOWNS、IBM-PC/PS2 J-3100、Windows、X-window、X680x0、JAVA、P/ECE といった 多数のプラットフォームに移植されたものがリリースされています。 ONIONのデータもしっかりと入っています!

AIWIL版OLION
写真はWindows版。
AIWIL soft様、ソフト提供ありがとうございました。





EPOCH、 HADRON の情報を募集中です。 ゲーム内容や操作方法、パッケージ等、どんなことでも構いませんので 情報を提供していただける方はこちら までご連絡下さい。 また、この他にも 『EPOCH系のゲーム』 と言えるものがありましたら、ぜひ教えて下さい。 よろしくお願いします。