PALOMA Merlot Napa Valley Spring Mountain District 2001

Palomaというワインの名前を知ったのは、今から5年前のこと。ワインスペクテーター誌 98年10月31日号のカリフォルニア・メルロー特集で「注目の新しい造り手」として紹介され、いかにも実直そうなオーナー夫婦の写真が掲載されていた。その記事で賞賛されていた96年産のメルローをさっそく入手して飲んでみたところ、濃厚でたっぷりした果実味が魅力的な、とても美味しいワインだったことを憶えている。

そして今年、2001年産のメルローがワインスペクテーター誌の2003年度Wines of the Yearに選ばれるという“事件”が起きた。1988年のランキング開始以来、アメリカ国内以外では売られていないワインがNo.1に選ばれたことは恐らく初めてのこと。いや、アメリカでもカリフォルニア州以外のショップではほとんど見かけないという話もある。選出基準のひとつである「一般消費者が入手しやすいこと」をも度外視するほどの何かがあるのか、飲む前から興味津々であった。

コルクを抜いたとたん、甘い香りが回りに広がる。バニラやカカオ、そしてプルーンのような黒い果実の香り。口に含むとふわっと柔らかく、そして軽い。メルローというよりはムルヴェードゥルのよう。まず感じるのは「甘い!」ということ。が、酸がしっかりしているせいか、その甘さが重たくは感じられない。そして、どことなく懐かしい味も。そう、あの「ミルキー」の味と香りがほのかにするのだ。ぎゅっと詰まった果実の美味しさが口いっぱいに広がって、文句なしに美味しい。思わず飲むピッチが上がるのが自分でも判る。時間とともに甘草のような漢方系の香りも漂い初め、柔らかく滑らかだったタンニンも開けて2日目には強靭でがっしりとした感触に。急に男らしく成長したかのようだ。

今までに飲んだカリフォルニアのメルローというのは、青臭ささや水っぽさだけが印象が残っているものが多い。美味しかったのはPalomaの96年とEtudeの99年ものくらいだろうか。2001年のPalomaがこれだけの完熟度が得られたのは、やはりヴィンテージに恵まれたことが大きいのだろう。だが、甘さや濃厚さだけが突出していないのは、畑がスプリング・マウンテンの頂上付近にあって日照量の割に気温が高くなり過ぎないためことも関係しているのではないだろうか。掲示板にも書いたとおり、2001年という歴史的なヴィンテージが生み出した奇跡のようなワインかもしれない。

ただ言えるのは、あくまでも45ドルという価格が評価されて1位に選ばれたワインであるということ。100ドルを超えるような現状は、市場原理からして仕方がないのかもしれないが…。また、ヴィンテージ違いのものまで便乗して売ろうという小売店の姿勢には疑問を感じる。


2003/12/28